交代寄合高木家の研究
―近世領主権力と支配の特質―
伊藤孝幸著


旗本で交代寄合「美濃衆」の一家であった高木家から近世個別武家領主としての権力と支配の特質を考察する


■本書の構成
序  章
  第一部 高木家にみる権力の特質と創出
第一章 交代寄合高木家にみる幕藩個別領主権力の特質
第二章 近世後期における交代寄合高木家の婚姻
  第二部 高木家による個別支配と地域支配
第三章 交代寄合高木家による年貢徴収
第四章 交代寄合高木三家による興行統制
  第三部 高木家による狩猟権の特質
第五章 交代寄合高木家による鷹狩と伊勢鷹場
第六章 交代寄合高木家による川漁と川支配
  第四部 近世後期以降での朝廷勢力と高木三家・地域民衆―美濃国多良・時両郷地域での場合―
第七章 一九世紀前半の地域における朝廷勢力と高木三家・民衆
第八章 一八世紀後半の地域での朝廷勢力と高木三家・民衆
第九章 幕末の地域での朝廷勢力と高木三家・民衆
  第五部 明治維新による高木家の変容
第一〇章 維新期における旧交代寄合高木家と領地村方
第一一章 明治維新による江戸拝領屋敷と江戸詰役人の変容


伊藤孝幸(いとう・たかゆき)
1959年愛知県豊橋市に生まれる
1991年名古屋大学大学院文学研究科博士課程単位取得満期退学
名古屋大学助手を経て、現在、愛知学院大学文学部助教授



ISBN4-7924-0559-9 (2004.11) A5判 上製本 430頁 本体8800円
近世領主制研究への新たな布石
元東邦学園短期大学教授 原 昭午
 近世領主制のうちに大名・旗本にならび交代寄合をみる事実は、周知のところであるが、その実態に関しては、なお共通の理解が得られていない。本書は、そうした交代寄合を主題に掲げた意欲的な研究成果である。対象とされた高木氏は、西美濃における在地領主の一人として、はじめ織田氏に従っていたが、織田信雄失脚後は徳川氏に属し、関ケ原役を機に、美濃の時・多良郷(現岐阜県養老郡上石津町)に四千三百石程の領知を与えられ、西家を中心に東・北三家によって幕末まで支配する。本家筋の西家等に伝えられた厖大な文書は、交代寄合に関する資料としては、現状では他に匹敵するものをみない。
 同家に関しては、木曾三川下流域における治水・河川管理に当たった事実などはすでに紹介されているが、その在地領主としての実態についてはなお十分明らかにされていない。伊藤氏の綿密な同資料の調査と分析に基づく研究は、その側面に関し、新たな事実を提示している。とくに注目されるのは、婚姻関係を通じて示される同家の幕藩領主間に占める位置、また京都の朝廷勢力との間に維持した関係などであるが、さらに同家が伊勢の桑名藩領内に鷹場を保持した事実の解明は、尾・濃・勢三国にわたる幕藩制支配の成立過程に関して新たな理解を求めるものであり、交代寄合制研究への一つの問題提起ともいえよう。