中世の地域権力と西国社会
川岡 勉著

◆本書の構成

序 中世の西国社会と伊予
第一部 領主制の成立と展開
第一章 中世伊予の開発領主と国衙
第二章 武家権門の成立と西国領主
第三章 南北朝期の在地領主・氏寺と地域社会
第二部 地域区分と支配秩序
第四章 中世の道前・道後と地域支配
第五章 中世の伊予府中と在地諸勢力
第六章 河野氏の府中支配と海賊衆
第七章 中世後期における分郡知行制の展開
第三部 室町幕府―守護体制と地域権力
第八章 中世伊予の山方領主と河野氏権力
第九章 天文期の西瀬戸地域と河野氏権力
第十章 戦国・織豊期の東伊予と河野氏権力
人名索引 地名・事項名索引




 著者の関連書籍
 川岡 勉・古賀信幸編 日本中世の西国社会 全三巻



ISBN4-7924-0603-X C3021 (2006.3) A5 判 上製本 382頁 本体8400円
『中世の地域権力と西国社会』によせて
三重大学教授 藤田達生
 本書は、著者川岡勉氏が愛媛大学に赴任してから二十年目の節目に刊行される中世伊予史研究の集大成である。私が学生として愛媛大学で過ごした二十五年前には、中世史を専門とする教員はおらず、中世全般を対象とするこのような精度の高い研究が蓄積されるとは、想像することさえできなかった。
 本書の特徴をあげるならば、西国を構成する伊予という地域に徹頭徹尾こだわったことであろう。川岡氏は、近年の中世史研究の到達点をふまえ、この地域の特徴として次の諸点に着目した。すなわち京都への強い指向性、京・畿内の国家と諸権門を支える重要な基盤、水運・水上交通の重要性、国衙の強い影響力、畿内と比較して村落の未成熟、東アジア世界との関わりの強さである。
 本書は、これらの追究をモチーフとしているが、同時に伊予守護河野氏の体系的な研究書というべき内容を備えている。四国においては、伊予を除いて管領細川氏とその一族が守護職を独占していた。外様・弱小守護というイメージの強い河野氏が、中世を生き延びえた権力的な柔構造について、一貫して検討されている。
 川岡氏の研究の強みは、なんといっても市民運動とともに深化したことにある。川岡氏は、一九八九年以来「道後湯築城跡を守る県民の会」の代表として、愛媛県に対して河野氏の居城・湯築城跡の史跡公園化を求め、二〇〇二年にはついに国史跡化を勝ち取った。
 私は、地域の人々と一丸となって、これだけの成果を上げた研究者を知らない。近年、全国的に注目される四国中世史研究のめざましい前進も、川岡氏の営為がその一端を支えてきたといってよい。実践が裏打ちする骨太の研究書として、特に若い研究者にご一読をおすすめしたい。
※上記のデータはいずれも本書刊行時のものです。