中世後期畿内近国守護の研究
弓倉弘年著


足利一門守護であり管領家として室町幕府の中枢に位置していた畠山氏の家系や分国支配についての研究書。畠山氏の紀伊支配、抗争と紀伊、守護家と奉公衆家、義就流と政長流の家系と権力、戦国期の河内支配の5つから論考する。


本書の構成


序 章
第一部 畠山氏の紀伊支配
第一章 紀伊守護家畠山氏の家督変遷
第二章 紀伊守護家畠山氏の支配体制
第三章 某姓宣顕に関する一考察
第四章 応永二十五年・熊野本宮と守護の抗争
付論T 畠山修理大夫満慶に関して
付論U 畠山式部太輔と貞政

第二部 畠山氏の抗争と紀伊
第一章 畠山氏分裂の原因に関して
第二章 畠山氏の内訌と紀伊
第三章 紀伊の野辺氏

第三部 守護家と奉公衆家
第一章 奉公衆家山本氏に関する一考察
第二章 戦国期紀州湯河氏の動向
第三章 戦国期紀州湯河氏の立場

第四部 義就流と政長流の家系と権力
第一章 天文期の政長流畠山氏
第二章 天文年間畠山播磨守小考
第三章 戦国期義就流畠山氏の動向
第四章 畠山義就の子孫達
第五章 天文年間河内半国体制考

第五部 戦国期の河内支配
第一章 戦国期河内国守護家と守護代家の確執
第二章 教興寺合戦をめぐって
第三章 織田信長と畠山氏家臣
終 章



ISBN4-7924-0616-1 C3021 (2006.12) A5 判 上製本 428頁 本体8600円
確かな信頼のおける室町・戦国期の畠山氏と畿内近国の研究
新潟大学人文学部教授  矢田俊文
 上杉謙信の近臣河田長親・直江政綱に宛てた永禄八年(一五六五)六月二十四日付け宗房書状という将軍足利義輝暗殺に関わる畿内の情勢を報告した文書がある。この書状を発給した宗房は、長い間、近江の六角義賢の家臣と考えられていた。しかし、本書『中世後期畿内近国守護の研究』の著者弓倉弘年氏は花押の形状から、この宗房は安見宗房のことであるとし、さらに宗房は河内国守護代遊佐氏の内衆で、のち遊佐氏同名となり奉公衆となった人物であることを明らかにした。弓倉氏は一人の武将の名前を明確にし、一通の重要な文書を正確な理解に導いた。歴史学はこのような基礎的な研究の上に成り立つ。
 本書『中世後期畿内近国守護の研究』は、室町・戦国期において河内・紀伊・越中等の守護であるとともに、管領家として室町幕府の中枢に位置していた足利一門守護である畠山氏の研究をまとめた論文集である。
 収載された論文は、畠山家譜などの信頼のおけない史料によりながら人物が比定されてきたこれまでの研究を否定し、文書・花押等を精査し人物名を確定する作業によって組み立てられていて、その結果は揺るぎないものである。この論文集により、室町・戦国期の畿内近国の政治動向を左右してきた畠山氏の動向が明確になり、確固とした政治史が描けるようになった。
 本書は、室町・戦国期の畿内とその周辺、それに畠山氏に関心をもつ人々、研究者にとって必読の書物である。