徳川御三家付家老の研究
小山譽城著


徳川政権の維持、安定化に大きく貢献した御三家。その御三家の当主を補佐・監督し、各家の中で藩体制の確立に努め、家臣団を指揮する立場に位置し、幕府との摩擦を防ぐ存在であった付家老の実態に迫る。


本書の構成


序 章

第一章 御三家付家老の設置と紀伊徳川家の成立
第一節 徳川秀忠政権の「御三家」構想
第二節 付家老設置の意義
第三節 紀伊徳川家成立の政治的背景

第二章 紀州藩付家老の領地支配
第一節 安藤・水野両家の拝領屋敷と家臣団
第二節 田辺領の地士
第三節 安藤家の経済政策

第三章 御三家付家老の大名化志向
第一節 付家老の大名化志向
第二節 紀州藩付家老安藤家譜編纂の意義

第四章 紀州藩付家老の権力抗争
第一節 幕末期紀州藩の権力抗争―付家老専権体制への道―
第二節 幕末期紀州藩家臣団の動向―田辺与力騒動を中心として―

第五章 幕末・維新期における紀州藩付家老の動向
第一節 水野忠央の独立志向
第二節 幕末期紀州藩付家老の政治的動向―田辺領主安藤直裕を中心として―

第六章 水戸藩・尾張藩の付家老
第一節 水戸藩における付家老中山家の独立志向
第二節 尾張藩付家老成瀬・竹腰両家と養子藩主の迎立

終 章




 著者の関連書籍
 小山譽城著  徳川将軍家と紀伊徳川家



ISBN4-7924-0617-X C3021 (2006.12) 品 切
藩政史研究の新視点
和歌山大学名誉教授  安藤精一
 徳川時代は長期間にわたって大々的な戦争がなく、平和が続いた。その要因の一つは諸藩の巧みな配置と家臣団の統制等による。御三家や付家老の設置等も、それらの一つである。
 小山譽城氏の『徳川御三家付家老の研究』は、近世藩政史研究を、新しい視点から一歩前進させたものといえる。小山氏は昭和五十年に國學院大学大学院修士課程を修了され、和歌山県の公立高等学校教諭となり、極めて多忙な教育と研究の両面に力をそそぎ、大著を刊行されたことに対し、心からなる敬意を表する。これは生徒と共に学ぶという精神と、どんなに多忙でも、必ず一字ずつでも原稿を書くという、困難な方針を実行した成果といえる。
 本書の特色は紀州藩を中心としながら、常に御三家全体を視野においた確実な史科に基づいた実証研究である。
 特に幕藩体制下における御三家付家老の存在意義と、独自の領地支配や、藩内の権力支配、幕府との関係、御三家のそれぞれの大名独立化の共通点と相違点等を明らかにした諸点は学界に貢献するところが大であると確信し、御推薦する。
 今後も、教育と研究を両立させ、さらなる前進をされることを期待する。
近世の政治史に新たな課題を提起する
國學院大学文学部教授  根岸茂夫
 徳川御三家は幕府によって創設され、成立当初には幕府が付属した武士が家臣団の中核となった。付属された中でも特徴的な家臣が付家老である。藩主を補佐する一方、幕府から江戸に屋敷を与えられ、大名に匹敵する所領と城を持ち、藩内に藩が存在するような特別な地位にあった。付家老は特殊な性格を持ちながらも、重層的な近世の支配体制や政治の特質をさまざまな面からよく示す存在なのである。
 付家老は各藩の藩政史のなかで考察され、最近では幕政史・近世政治史の中で検討されるようになったが、近世を通観して論じた研究は、従来少なかった。小山譽城氏は、紀州藩の藩政史・近世和歌山地域史の研究を地道に続けられるとともに、付家老に注目され、御三家の中で最も「大物」が付属された紀伊を中心に、尾張・水戸も含めて近世初期から幕末の政治史のなかで位置づけられた。初期の親藩創設にみる幕府の構想、とりわけ二代将軍秀忠による徳川忠長の駿府藩創設と御三家との関係などは、小山氏が初めて指摘された問題である。さらに領内の経済政策と本藩との関係、与力や地士といった武家身分のあり方や付家老を含めた家格上昇運動など、興味深い論文が収められている。近世後期から幕末における御三家の付家老五家の独立志向については、幕府・御三家・付家老がそれぞれ思惑を持って入り乱れる精緻を極めた論考である。
※上記のデータはいずれも本書刊行時のものです。