文献方言史研究
迫野虔徳著


第17回新村出賞受賞

文献上に残された過去の方言記録である地方語文献には古くは万葉集の「東歌」「防人歌」があり、近世初期には一群の東国系抄物、近世後期には方言文学としての洒落本、滑稽本などがある。そして言語の有効な資料として実証済みのキリシタン資料をはじめ、ロシア・朝鮮・中国などの外国資料も含まれる。これら地方語文献の資料的価値を吟味しながら、方言から中央語史を見直し、日本語の歴史を新しい視点から問い直す斬新な著作である。

■本書の構成

はじめに

第1章 方言史と日本語史
第1節 防人歌と上代特殊仮名遣い
第2節 外国資料と方言 ―新スラブ・日本語辞典のオとヲ―
第3節 「コワス」(毀)の成立 ―語中ヲ(wo)音の残存―

第2章 新音韻の成立と方言的差異
第1節 促音と撥音の表記の動揺
第2節 撥音の史的推移
第3節 促音と撥音の相関 ―撥音の後のパ行―
第4節 北野社目代の撥音表記

第3章 オ段長音の開合
第1節 オ段(合音)・ウ段長音表記の動揺
第2節 開合の混乱と地方的差異

第4章 方言特徴の成立 ―「中濁」考―

第5章 方言差の形成 ―日本語の東西方言差と「テイル」―

第6章 文献資料と方言
第1節 方言と文献批判 ―交隣須知の言語―
第2節 文献と言語指標 ―『天正狂言本』の言語―

第7章 方言語彙史
第1節 方言語彙史
第2節 九州方言の語彙 ―日葡辞書の「下」注記―
第3節 東国系抄物語彙覚書
第4節 『梅津政景日記』 ―江戸時代初期の東国武士のことば―

第8章 方言史資料 ―「日本語俗言解」考―



迫野虔徳(さこの ふみのり)……1942年大分県宇佐郡院内町に生まれる 九州大学大学院博士課程(国語学国文学専攻)修了 現在、九州大学教授 文学博士(書籍刊行時に掲載のものです)




 著者の関連書籍
 迫野虔徳著 方言史と日本語史



ISBN4-7924-1338-9 (1998.2) A5 判 上製本 404頁 本体9000円
※所属・肩書き等は、本書刊行時のものです。