玉塵抄の語法(ぎょくじんしょうのごほう)
山田 潔著
本書の特色は、永禄年間に成立し、抄者惟高妙安の抄物群の中でもっとも豊富な言語量を有する『玉塵抄』全五十五巻について、注目すべき語法を「用言類の考察」「副詞類の考察」「助動詞類の考察」「助詞類の考察」「待遇表現の考察」といった内容で徹底的に考察・追究している点にある。著者は完璧に用例を蒐集し、先行研究を丁寧に引用しながら精緻に分析し、広い視野から文法史的にあるいは待遇表現史的に論考をまとめる。本書は抄物研究はもとより、古代語から現代語への橋渡しとなる室町時代語の研究に新たな指針を提供する。


■本書の構成

第1章 用言類の考察
第1節 玉塵抄の中性動詞 ―「読ムル」の用法―
第2節 玉塵抄のサ変動詞 ―未然形の用法―
第3節 玉塵抄の形容動詞 ―連用形について―
第4節 玉塵抄の述定・装定表現 ―「デアル」と「ニアル」―

第2章 副詞類の考察
第1節 抄物における副詞「一向(に)」の諸相
第2節 玉塵抄の程度副詞 ―「スグレテ」「ツヲウ」「イカウ」―

第3章 助動詞類の考察
第1節 助動詞「うず」の表現性
第2節 助動詞「らう」とその複合辞

第4章 助詞類の考察
第1節 玉塵抄の主格表現 ―「ノ」「ガ」の用法―
[付] 「さたがころもをぬぎかくるかな」考
第2節 玉塵抄の確定順接表現
第3節 玉塵抄仮定順接表現
第4節 天草本平家物語の誤植に関わる一問題 ―「moxitaua:」について―

第5章 待遇表現の考察
第1節 玉塵抄の尊敬表現 ―「シム」「サシム」の用法―
第2節 玉塵抄の「まらする」の用法 ―「丁寧語化の過程」―
第3節 玉塵抄の丁寧表現 ―「サウラウ」の用法―



山田 潔(やまだ きよし)……1943年東京都に生まれる 東京学芸大学大学院修了 昭和女子大学文学部教授(書籍刊行時に掲載のものです)




 著者の関連書籍
 山田 潔著 中世文法史論考

 山田 潔著 抄物語彙語法論考

 山田 潔著 抄物の語彙と語法

 

 

ISBN4-7924-1370-2  (2001.9) A5 判 上製本 401 本体11,500
※所属・肩書き等は、本書刊行時のものです。