夏目漱石ロンドン紀行
稲垣瑞穂著


漱石文学発祥の地ロンドン―その足跡と周辺を探る―
 明治三十三年(一九〇〇年)九月の出発から二年余ロンドンに留学した夏目漱石。二年間の英国留学は、漱石にとって「狼群に伍する一匹のむく犬の如く、あはれなる生活」(「文学論」)であった。
 帰国を前にして強度の神経衰弱が再発したとき、一親日英人に招かれてスコットランドに一ヵ月ほどの旅をした。漱石にとってこれは唯一の例外であり救いでもあった。
 足跡の総べてを訪ねた著者は、豊富な資料と写真を掲げ、居ながらにして当時の漱石と周辺を甦らせる。



■本書の構成

はじめに

留学への旅立ち

第一の宿 ガワー・ストリート
ロンドン市内見学/タワー・ブリッジ/大英博物館/ウエストミンスター寺院/ビッグ・ベン ほか

第二の宿 ウエスト・ハムステッドセント・ポール大聖堂/ホーボン ほか

第三の宿 フロッドン・ロードと周辺
トッテナム・コート・ロード/ロンドンの環境・地下鉄/英国紳士・淑女の服装など ほか

第四の宿 ツーチング・ステラ・ロード
池田菊苗との出逢い/ランベス墓地 ほか

第五の宿 ザ・チェース
カーライル博物館/日英同盟/神経衰弱の兆候/自転車日記 ほか

スコットランドの旅
漱石を招待した一親日英人/J・H・ディクソンの生涯/ケンジントン博物館 ほか

帰国の途 ロイヤル・アルバート・ドック

漱石文庫(東北大学付属図書館)/倫敦漱石記念館/あとがき/主要参考文献
写真集/地図/索引




稲垣瑞穂(いながき・みずほ)
一九二五年鳥取県生。一九五一年京都大学文学部国語学・国文学専攻卒業、同大学院修了。静岡県立大学名誉教授。
一九七六年から一九八七年まで文部省および県立大学在外研究員等でたびたび渡英、大英図書館東洋書籍写本部(O.M.P.B)で、中世以降の和漢書を調査する一方、一九八〇年以後さらに渡英を重ね、角野喜六氏の跡を承けて二〇〇〇年ごろまで留学時代の夏目漱石の足跡を探求。


ISBN4-7924-1386-9 (2004.10) A5 判 上製本 288頁 本体3800円
※上記のデータはいずれも本書刊行時のものです。