■近世初期刊行連歌寄合書三種集成 全二冊
深沢眞二編著


近世初期に刊行された『随葉集』『拾花集』『竹馬集』を翻刻し、引用された和歌の出典を注記する本文篇と周到にして総合的な索引篇と「連歌寄合書の展開」とする解説篇からなる。適切なテキストの提供と語彙・和歌・漢詩句を簡便に検索できる環境を整えた本書は、連歌研究はもとより近世初期俳諧研究や蕉風の把握に欠かすことのできない必備の書といえる。



■本書の構成

翻刻・解説篇

『随葉集』古活字版 翻刻(内閣文庫蔵本)
『拾花集』整版本 翻刻(国会図書館蔵本)
『竹馬集』整版本 翻刻(国文学研究資料館蔵本)
解説 連歌寄合書の展開
 一 辞書的寄合書と秘伝書的寄合書
 二 『連歌寄合』の諸本
 三 いろは順の寄合書
 四 『随葉集』の成立と流布
 五 連歌寄合書の近世

索引篇

『随葉集』『拾花集』『竹馬集』寄合語および解説語彙索引
『随葉集』『竹馬集』引用和歌各句索引
『随葉集』引用漢句単漢字索引




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ISBN4-7924-1394-X (2005.12) A5 判 上製本 解説篇512頁 索引篇410頁 全二冊本体20,000円
連歌・俳諧研究者に朗報
大阪大学名誉教授 島津忠夫
 連歌・俳諧研究者で、山田孝雄・星加宗一両氏編『連歌法式綱要』(昭和十一年、岩波書店刊)の恩恵に浴さなかったものはないであろう。その便利さは『連歌新式』と『産衣』を五十音順に並べ替えたことによる。しかし、『産衣』より前に、ぜひ参照すべき重要な連歌書がいくつもあった。寄合書に限っていえば、木藤才蔵・重松裕巳両氏編『連歌論集』(昭和四十七年、三弥井書店刊)が出て、『連珠合璧集』の利用が非常に便利になった。ここに集められている『随葉集』『拾花集』『竹馬集』の近世初期に成る三種の寄合書は、その存在はよく知られており、それぞれ翻刻もされていたにもかかわらず、利用されることが少なかったのは、『随葉集』が『古典文庫』432(昭和五十七年刊)、『拾花集』が『日本歌学大系』別巻八(平成元年、風間書房刊)、『竹馬集』が『古典文庫』561(平成五年刊)と、その翻刻が別々に試みられていたからでもあった。
 深沢眞二氏は、早くからこうした近世初期の連歌寄合書に注目され、翻刻とともに索引を手掛けられて来た。それが、ここに一書となって纏められ、翻刻・解説篇五一二頁、索引篇四一〇頁の大著として刊行される。とくに、「『随葉集』『拾花集』『竹馬集』寄合語および解説語彙索引」「『随葉集』『竹馬集』引用和歌各句索引」「『随葉集』引用漢句単漢字索引」の周到にして総合的な索引を付されていて便利至極この上もない。その索引のもとになる本文についても諸本をひろく求めて信頼すべき本文を作られている。また、「連歌寄合書の展開」の詳しい解説は、こうした寄合書の総合的な研究がなかっただけに、今後の大きな指針となることであろう。
 連歌ばかりでなく、『毛吹草』『俳諧初学抄』『増山井』などの初期俳諧の学書との比較を試みることによって、連歌と俳諧の違いを明確にすることも容易になるし、初期俳諧の解釈の上にもたらす効果も大きいであろう。
 私も『拾花集』については大阪天満宮本が、『竹馬集』については祐徳稲荷神社中川文庫本が、それぞれの整理に当った四、五十年も前から気にはなっていたが、そのままに過ごして来た。故三輪憲三氏が『連歌法式綱要』の便利さに鑑みて、『無名抄』の五十音順に並び変えた索引を試みられたことがあったが、その本文について私見を申し上げたことなどもあってついに成就を見ず、氏が亡くなられて刊行に至らなかったことを、今もって残念に思っている。また、かつて大谷篤蔵氏が『守武千句草案』の校訂に当って、寄合索引の必要を説かれたことを、私はいましきりに思い出しているのである。それは、私も「守武千句をめぐっての二、三の問題」(中村幸彦博士古稀記念論文集『近世文学―作家と作品―』昭和四十八年、中央公論社刊)の論考で、『守武千句草案』を扱った折、痛切に感じたからでもあった。深沢氏が、「(翻刻)連歌寄合書『竹馬集』」(国文学研究資料館文献資料部「調査研究報告」14、平成五年三月)、「連歌寄合書のゆくえ」(「国文学研究資料館紀要」17、平成三年三月)以来、発表を積み重ねられて来たことが、ここに見事に成就したことを何よりも喜びとしたい。
 今後は、連歌や初期俳諧の解釈には、この書を座右におくことがぜひ必要となろうと思われる。
※上記のデータはいずれも本書刊行時のものです。