尾張藩社会の総合研究 《第三篇》
岸野俊彦編


豊かな社会と文化の交流を復元するシリーズ第三弾


■本書の構成

第一部 尾張藩社会の文化展開
第一章 尾張藩国学の在村展開……名古屋芸術大学教授 岸野俊彦
第二章 近世後期尾西庄屋のネットワークと教養形成……名古屋大学大学院生 松尾由希子
第三章 東照宮祭礼と城下町名古屋……愛知県史編さん室 清水禎子

第二部 尾張藩社会の都市と農村
第四章 「御触流留帳」にみる名古屋商人と尾張藩……名古屋学芸大学、愛知学院大学講師 早川秋子
第五章 近世尾張の結城縞……東邦学園大学研究員 杉本精宏
第六章 伊勢湾岸地域における新田村落の諸相……愛西市教育委員会 石田泰弘
第七章 東濃地域における争論からみた尾張藩の位置……可児市史編纂室 大海崇代

第三部 尾張藩社会の山村と漁村
第八章 尾張藩社会と猛禽類(巣山と鷹)……多治見市共栄小学校長 杉村啓治
第九章 御三家筆頭の鷹場支配……美浜町文化財保護委員 木原克之
第十章 伊勢湾における漁業権と尾張藩社会……名古屋芸術大学教授 松田憲治

第四部 幕藩社会と尾張藩社会
第十一章 尾張家における「御出入之衆」と江戸屋敷……徳川林政史研究所研究員 白根孝胤
第十二章 尾張藩と中西家……名古屋市専門調査員 後藤真一
第十三章 尾張藩領下近江八幡町の株仲間について……鈴鹿国際大学客員教授 山中雅子
第十四章 宇治茶師と尾張藩……愛知大学研究員 坪内淳仁
第十五章 山村甚兵衛・千村平右衛門両家と久々利九士……正眼短期大学教授 鈴木重喜



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ISBN978-4-7924-0620-2 C3021 (2007.3) A5 判 上製本 402頁 本体8500円
「尾張藩社会」の研究は無尽蔵
東北大学教授  平川 新
 「藩社会」論と称するか、「藩世界」論なのか、あるいは「藩地域論」というべきか。このところ、藩という存在をめぐって近世史研究がにぎやかになってきた。ひとくちに藩とはいっても尾張六二万石のような大藩もあれば、一万石ぎりぎりの小藩もある。藩という存在を研究対象にしようとすれば、二百数十もの藩の社会や世界や地域があるということになる。その先鞭をつけてきたのが、尾張藩社会研究会である。
 共同研究は、大学の教員や大学院生、OB等を中心にした研究者コミュニティで実施されることが多い。だが尾張藩社会研究会の特徴は、教育委員会や自治体史編纂室等に所属する研究者をも幅広く糾合したことにある。私が魅力を感じるのは、こうした組織のあり方と、個人の関心を尊重しながら尾張藩研究を積み上げていく姿勢である。
 本書を拝見すると、この研究会は史料だけではなく人材をも発掘し、尾張藩研究の水準と蓄積を飛躍的に高めていることを実感させられる。『尾張藩社会の総合研究』は、今回の第三篇をふくめて、わずか数年のあいだに五〇本ほどの論文を生み出している。この体制が維持される限り、続刊もとどまるところを知らないということになるのではないか。
 
「成立期を畿内で、解体期を関東で」を超えて
共立女子大学助教授  堀  新
 近年、「藩」研究が盛んである。ざっと思いつくだけでも、岡山藩研究会、大坂諸藩研究会をはじめ、松代藩や彦根藩の研究グループがある。さらには、個人での研究が無数にある。これら「藩」研究に携わっているメンバーは、もともと藩政史を専攻していた者ばかりではない。むしろ、様々な専門分野の者が集まって、新しい視点から研究が進められている。「藩」には、それだけの魅力と可能性がある。そして、岸野俊彦氏を代表とする尾張藩社会研究会が、そのなかでも最も活発な研究活動を展開していることは、衆目の一致するところであろう。
 「三百諸侯」と称されるように、近世には多くの「藩」が存在したが、尾張藩など、いわゆる親藩の研究は遅れていた。尾張藩社会研究会の活躍によって、その遅れを急激に取り戻しつつあるが、それは決して「研究の空白を埋めた」という次元にとどまるものではない。従来の近世史研究が、ややもすれば「成立期を畿内で、解体期を関東(の事例)で」説明する傾向にあったことに対する、強烈な異議申し立てを行っているのである。そして、この第三篇では、これまでの蓄積をふまえて、尾張藩社会を起点として近世社会全体を見通す地平に至っているのである。近世史研究に多大なインパクトをあたえる一書であろう。尾張藩・東海地方を専攻する研究者だけでなく、幅広い近世史研究者に一読をお薦めしたい。

※所属・肩書き等は、本書刊行時のものです。