駿河相模の武家社会
福田以久生著


駿河・伊豆・相模三国に跨る富士山麓の東辺と箱根山塊周辺・伊豆半島の北部の地帯は、日本中世史の揺籃の地。華々しい史実に富み数多の武家勢力が盛衰を繰り返してきた。これらの地域の中世の歴史事象について考察する。


■本書の構成

  T部 中世史概観
・駿遠豆三国の中世
・鎌倉幕府の滅亡
・南北朝・室町期の鎌倉

  U部 駿河国に関する諸問題
・岡野馬牧と大岡圧
・大沼鮎沢御厨に関する研究とその問題点
・鎌倉幕府の成立と沼津地方
・室町時代の駿河
・中世における東駿地方の交通
・戦国動乱と三枚橋城
・戦国期御殿場地方の領主について

  V部 相模国に関する諸問題
・相模国早河庄
・治承四年の反乱と柳下郷
・相模国成田庄
・相模国糟屋庄の寄進者
・中世の飯田郷と御家人飯田氏
・禅秀の乱前後の西相模

  W部 史料と文学作品
・文学作品にあらわれた沼津
・相模守大江公資とその妻
・駿河国蒲原庄の寄進史料
・「深沢城矢文」をめぐって




 編者の関連書籍
 福田以久生・村井章介編 改訂 松浦党有浦文書



ISBN978-4-7924-0627-1 C3021 (2007.4) A5 判 上製本 540頁 本体9400円
厳密な史料の読み込みと解釈
静岡大学教授  小和田哲男
 駿河国の東部から相模国の西部にかけて、現在の静岡県東部から神奈川県西部にかけての地域は、日本中世史にとって特筆される場所であった。源頼朝の挙兵とそれに引き続く一連の軍事行動がくりひろげられ、また、戦国時代の幕あけを告げる北条早雲の旗上げの舞台となったのもこの地域であった。
 本書の著者福田以久生氏は、小田原市に居住し、長らく沼津市で教鞭をとり、『沼津市誌』『御殿場市史』の編纂ではその中心となって調査・研究を行ない、また、小田原市では小田原地方史研究会のリーダー的存在として活躍してこられた。まさに、地の利を生かし、本書の表題にぴったりな研究環境で、福田氏ならでは、この表題の研究書は書けなかったのではないかと思われる。
 特に、箱根・足柄の東西の歴史的地域差に注目したのはさすがで、それはやはり、福田氏が両地域に生活の足場をもっていたからである。
 私事にわたって恐縮であるが、福田さんと私は、現在の戦国史研究会の前身、後北条氏研究会が一九六九年に発足したときのメンバー十六人の中に含まれており、毎月一度開かれる例会では特に懇意にさせていただいた。
 そのころ大学院の博士課程に在学中だった私は、杉山博・萩原龍夫両先生のお勧めで、たびたび例会報告をしたが、報告の都度、鋭い質問をし、辛口の批評をしてくれたのが福田さんだった。「この史料からそう読めるかね」という言葉はいまでも耳に残っている。
 実は、この点が重要で、厳密な史料の読み込みと解釈が福田さんの研究スタイルであり、本書もその研究スタイルで貫ぬかれているのである。本書の一つの特徴といってよい。どの史料が使え、どの史料が後世の偽作なのかをみきわめることの必要性が随所に展開されており、日本中世史の研究方法のノウハウを本書から学びとることも可能である。
 今川氏・後北条氏を研究対象としてきた私は、本書の恩恵を蒙ってきたわけであるが、今回、再版され再び世に出ることになった。よろこばしい限りである。