近世仏教治国論の史料と研究
松平開運録/東照宮御遺訓
平野寿則・大桑 斉 編著



■本書の構成


史料篇
 史料目録および奥書集
 一、松平開運録
  松氏開運記 松平崇宗開運録 大樹帰敬録
 二、関連史料
  浄宗護国篇
 三、東照宮御遺訓
  井上主計頭覚書 東照大権現様御遺訓 井上主計頭覚書(内閣文庫本) 松永道斎聞書(上田本)との対校 東照宮御遺訓附録

研究篇
 序 章 ―研究と課題―……平野寿則
 第一章 再論『松平崇宗開運録』……大桑 斉
 第二章 『松平開運録』と仏教治国論……平野寿則
 第三章 『井上主計頭覚書』と近世初期の政治的イデオロギー……平野寿則
 第四章 『東照宮御遺訓』の形成 ―『御遺訓』の思想史的研究序説―……若尾政希
 第五章 浄土宗における生身仏の系譜……曽根原理



ISBN978-4-7924-0628-8 C3021  (2007.2) A5判 上製本 752頁 本体15,000円
刊行の辞
大谷大学文学部准教授 平野寿則
 本書は、近世仏教治国論に関する史料である『松平開運録』と『東照宮御遺訓』を素材として、徳川日本の国家権力と宗教の関係を政治史・思想史・仏教史など多角的な視座から言及し、その歴史的意義を明らかにしようとするものである。
 全体は史料篇と研究篇から構成され、近世の国家・社会と宗教の関係性について、大桑斉、若尾政希、曽根原理の各氏と共に論じていく。史料篇には、幕藩制国家の宗教性を意味づけるテキストである『松平開運録』と『東照宮御遺訓』の諸本を翻刻し収録した。研究篇は全五章で、『松平開運録』をめぐっては、その成立過程と歴史的な位置づけ、仏教治国論の政治思想史的な意味づけ、また浄土系仏教の仏身観の系譜と受容基盤などについて言及される。また『東照宮御遺訓』に関しては、その形成過程と受容のあり方、宗教性を媒介とする社会的合意論と民衆支配のイデオロギーなどについてが論究される。
 統一政権期、日本国土の統合は軍事的制圧によってもたらされるとともに、君臣忠義や覇国の盟約が在地の神仏に媒介されたように、そうした伝統的宗教的諸観念を如何に総括していくかと言う過程でもあった。ここに権力者の神格化をめぐる問題があり、「弥陀天下授与説」「家康阿弥陀説」と言った仏教治国論の歴史的意義が課題とされるのである。本書が、近世幕藩制国家論をはじめ、政治史・思想史・仏教史など近世史研究全体に一石を投じることができれば幸いである。

 
※所属・肩書き等は、本書刊行時のものです。