銀山社会の解明
近世石見銀山の経営と社会
仲野義文著


産銀量の減少は資源枯渇によるだけでなく、政治や経済が複雑に絡み合っていた?。石見銀山は江戸時代、どのような技術・経営・政策・住民によって営まれていたのか。世界遺産登録を支えた研究の一端を紹介する。


本書の構成

第一章 間歩とは何か
  間歩/横相主/物権化する間歩/間歩改帳/稼山と請山/直入と運上入札制

第二章 鉱山の経営と労働
  山が光る/採掘法/新口の開発と間歩定法/労働組織と賃銀/自分山の経営規模/山役銀の推移/山師の収支/産銀量の推移/気絶とは/労働者への扶助制度

第三章 御直山と資本
  大久保長安と御直山/御直山の成果/公儀入目の廃止/拝借銀による鉱山開発/拝借貸付の成立/御直山の稼行形態/切地の種類/切羽の経営

第四章 吹屋の経営と生産
  銀吹師/銀吹師数の推移と経営規模/吹屋の収支/鉱石の売買価格/灰吹銀の品位と産銀価格/元文の貨幣改鋳と産銀価格の引き下げ/鉱石の粗鉱化と灰吹銀の位劣り/銀の製錬方法/小鉉物から大鉉物へ/粗銅の生産/銅の製錬法と吹入用/銅生産の拡大と御直吹所

第五章 自分山の破綻と鉱山経営の変容
  元文の貨幣改鋳とその影響/御救拝借と貸付銀の展開/銀山稼方御主法/貸付銀の運用/永久稼所の誕生/進む鉱山経営の下請化/外部資本の導入/疫病の流行と稼人の不足/無宿労働/子供養育米の創設

第六章 銀山を支えた資材調達システム
  鉱山経営と森林資源/御立山の分布と利用/御立山の請負と吉舎炭の供給/御囲村とその仕組み/炭方六ヶ村の成立とその仕組み/栗苗の植林

第七章 銀山町の社会構造
  銀山町の範囲/戸口の推移/鉱山労働者の移動/銀山町の人別と身分/銀山町の住民構成と職業

補論 石見銀山附地役人と身分
  天野助次郎の身分改革/地役人の身分格式/地役人の経済活動/地役人の通婚/明治五年「旧地役人人別改帳」の分析

  参考文献
  索引



 
 ◎仲野義文(なかの・よしふみ)……1965年広島市生まれ 別府大学文学部卒 現在、石見銀山資料館館長





 本書の関連書籍
 相良英輔先生退職記念論集刊行会編 たたら製鉄・石見銀山と地域社会



ISBN978-4-7924-0658-5 C3021 (2009.3) A5判 並製本 226頁 本体1900円
世界遺産に歴史研究の光をあてる好著
島根大学名誉教授 相良英輔  
 この度仲野義文氏の著書『銀山社会の解明―近世石見銀山の経営と社会―』が発刊されることになった。まことに喜ばしい限りである。石見銀山は世界遺産に登録され、世間に注目されるようになった。しかし、これまで歴史的には戦国時代の毛利氏や尼子氏などの石見銀山争奪戦がよく書かれてはきたが、石見銀山地域の歴史や石見銀山の経営の実態についてそれほどわかっていたわけではない。石見銀山の実態を詳細に明らかにしていくには、まず史料の豊富な近世期の研究が重要である。その研究の中心的な牽引車となってきたのが仲野義文氏である。世界遺産の華々しい報道に彼はそれほど登場していないが、石見銀山の歴史について、確かな史料に基づいて具体的に最も詳しく話せるのは仲野氏である。石見銀山について地道にこつこつ研究してきた彼の研究成果が発刊されることを素直に喜びたい。
 私はここ7〜8年以来たたら製鉄の研究をしているが、仲野氏は銀山史の研究家である。しかし平成14年以来、絲原家や櫻井家のたたら製鉄関係史料の調査では仲野氏にも手伝っていただいた。そのとき以来、彼の古文書を読む確かな力、優れた歴史的センスにずいぶんたすけられた。石見銀山が世界遺産になって彼はずいぶん忙しくなり、むりなお願いをするわけにもいかなくなったが、日本最大のたたら製鉄史料を所蔵する田部家の史料調査が始まって、やはり彼の力を借りたいと思っている。
 仲野氏は石見銀山の地元でじっくり史料を見ながら研究している。そして時々島根大学の小林准士氏や廣嶋清志氏の代表となっている科学研究補助金による研究会のグループにも参加して、研究に磨きをかけている。
 ところで、石見銀山の地元には60人以上の観光ガイドがおられる。ガイドの皆さんは、仲野氏が講師を勤める講座で、仲野氏から石見銀山について学び、観光客に石見銀山の歴史を説明しておられる。このように地域に根ざし、しかも優れた研究成果を出している仲野氏には敬服するほかない。
 石見銀山の歴史はまだまだ不明な点が多い。特に戦国時代から近世初期についての具体的な歴史実像が浮かび上がっていない。仲野氏の研究成果を基点にして今後ますます研究が進んでいくことを願ってやまない。

 
※所属・肩書き等は、本書刊行時のものです。