古代女王制と天皇の起源
前田晴人著


歴史的に実在した初代天皇=始祖帝王は一体誰だったのか。「女王制」という新たな歴史概念を導入することにより、「謎の4世紀」におけるヤマト王権の政治形態を具体的に描き出し、天皇系譜の起源と日本古代史の謎に迫る。


本書の構成

はじめに

第一章 女王・卑弥呼論
  史料批判の問題/卑弥呼の死と争乱/「ヒメ・ヒコ」制/「鬼道」とは何か/「男子一人」の正体/箸墓伝承の解釈/箸墓伝承の原型/三輪山の神霊・オホアナムチ/女王制の存在根拠

第二章 三輪王朝論批判
  始祖帝王の系譜/『古事記』の巻別編成の由来/「三輪王朝」論の論拠/「三輪王朝論」批判

第三章 失われた女王の群像
  女王の条件/竹野媛と日葉酢媛/苅幡刀弁と迦具夜比売/播磨稲日大郎姫/女王の群像

第四章 最後の卑弥呼・神功皇后
  卑弥呼としての神功皇后/息長帯日売と大帯日売/大帯日売神話とは何か/日の御子「品陀和気命」/神功皇后紀の性格/倭女王の伝承/神功皇后伝承の形成

第五章 ホムツワケとホムタワケ
  実在の始祖帝王は誰か/継体天皇の祖先/ホムツワケの伝承/女王サホヒメ

第六章 河内政権論批判
  「河内政権論」の学問的性格/応神天皇非実在論/ホムツワケの王都/クロヒメをめぐる問題/住吉の「埴使」

おわりに
参考文献





 著者の関連書籍
 前田晴人著 飛鳥時代の政治と王権

 前田晴人著 古代王権と難波・河内の豪族

 前田晴人著 女王卑弥呼の国家と伝承

 大阪経済法科大学 河内学研究会 編 「河内学」の世界



ISBN978-4-7924-0662-2 C0021 (2008.12) 四六 判 上製本 250頁 本体2700円
『古代女王制と天皇の起源』刊行のお知らせと趣意
著者 前田 晴人  
 このたび如上の書籍を刊行いたしました。目次は別掲「本書の構成」をご覧下さい。本書では古代史上最も謎と不明の点が多い枢要な二つの課題に挑戦しておりますので、皆様方にはぜひともご一読のうえ、ご教示ご批判を賜りますよう衷心よりお願い申し上げます。
 本書は戦後に提唱され長らく通説化して参りました諸学説(王朝交替説・騎馬民族征服王朝説・三輪王朝論・河内政権論など)を厳しく批判しつつ独自の対案(「女王制論」と「始祖帝王論」)を出しておりまして、私見の多くの部分が今後学界や関係学問分野において論争の的になるだろうと予測しています。本書で展開しております論議は基本的には私の長い研究生活の一応の総括という位置づけにあり、また近世以来の幾多の研究者がこれまで全く気づかなかった問題の解を得ることができたという点で、歴史学界のみならず日本の知識層全体にそれなりの強い影響力を及ぼし得る学問的成果であると自負しています。
 ご承知のとおり、日本古代史上の最重要問題としまして「邪馬台国」と「天皇の起源」という二つの大きな難問が存在します。このたびの研究で私はこれら双方の課題の核心部分に初めて触れることに成功できたと考えています。研究の過程ではまことにさまざまな未知の史実を発見することができましたが、とりわけ卑弥呼というものの実体が何なのか、また始祖帝王=初代天皇がいつの時期の誰なのかを具体的に究明できたことは最大の成果であると考えておりまして、『古事記』『日本書紀』が隠蔽しています女王制の実相と、天皇系譜の真実の原点とを研究史上はじめて具体的に解明することができ、中国・朝鮮半島の古代史とも関連して、四世紀後半の時期こそが日本王権史上の一つの大きな画期になっていることが判明し、皇国史観の基底をなす万世一系の天皇系譜の虚構性を理論的にも実証的にも明らかにすることができました。
 学生時代に古代史研究の世界に身を投じましてから、大和・河内の巨大古墳の被葬者を文献史料から明らかにしたいと考えて参りました。今回の研究では奈良盆地の三、四世紀の巨大古墳がすべて計画的に隠蔽された女王たちの陵墓であると推定できること、初代卑弥呼を含む七代にわたる「女王の時代」を剔出できたことはこの上ない喜びであります。

 
※所属・肩書き等は、本書刊行時のものです。