幕藩制国家と明治維新
藤野 保著


世界資本主義のインパクト=開国に、日本という国家がどのように対応し、維新変革を必然化したか?
幕藩制国家の特質を究明し、総合的解明を試みた斬新・画期的大著


本書の構成

  はしがき 課題設定と分析視角

序説 幕藩制国家の成立と外交体制
  第一節 大航海時代とアジアの変動
  第二節 統一権力の成立と外交政策
  第三節 幕藩制成立の諸段階と外交政策
  第四節 幕府の九州戦略と外交政策
  第五節 総括と展望―幕藩制国家の成立と外交体制

第一章 関東領国体制の特質と明治維新
  第一節 関東領国体制の成立・形成 
  第二節 関東領国体制の展開・変質  1 享保改革と関東領国体制/2 藩領国の推移と関東領国体制/3 藩政改革と関東領国体制
  第三節 関東領国体制と明治維新   1 明治維新と維新政権/2 戊辰戦争と関東領国体制
  第四節 維新政権と関東府県藩体制 

第二章 徳川御三家と明治維新
  第一節 御三家の成立と意義  1 水戸藩の成立と構造的特質/2 名古屋藩の成立と支配構造/3 和歌山藩の成立と存在形態
  第二節 幕府と御三家の相関分析  1 幕政改革と御三家の対応/2 藩政改革の諸段階と異同/3 養子藩主の迎立と財政問題
  第三節 幕末の政治動向と明治維新  1 幕末政治と水戸藩の政治動向/2 名古屋藩の政治動向と討幕派への旋回/3 和歌山藩の体制矛盾と維新への対応
  むすび  御三家と明治維新 

第三章 畿内・近国支配の構造と明治維新
  はじめに―いわゆる「畿内非領国」論との関連分析 
  第一節 畿内支配の構造  1 摂津 河内 和泉/2 山城 大和
  第二節 近国支配の構造   1 近江/2 丹波 播磨
  第三節 周辺諸国の支配構造  1 伊勢・伊賀 志摩/2 紀伊/3 丹後 但馬
  第四節 幕末の畿内・近国と明治維新  1 幕末の政治動向と畿内・近国/2 幕府の崩壊と維新政権の成立/3 戊辰戦争と畿内・近国

第四章 西南雄藩の比較研究と明治維新  ――「薩長土肥」を中心として――
  第一節 西南雄藩成立の歴史的背景と存在形態 
    1 鹿児島藩の成立と構造的特質/2 萩藩の成立と支配構造/3 高知藩の成立と支配体制/4 佐賀藩の成立と存在形態
  第二節 藩政の推移と藩政改革  1 鹿児島藩 藩政改革の特色と対幕戦略/2 萩藩 藩政改革の諸段階と権力闘争/3 高知藩 藩政改革の諸段階と推移/4 佐賀藩 財政構造のメカニズムと藩政改革
  第三節 幕末雄藩の政治動向と明治維新  1 インパクトと西南雄藩の登場/2 幕末の政治動向と雄藩の対応・戦略/3 幕府の崩壊と維新政権の成立
  第四節 帰結=天皇絶対主義国家の成立  1 戊辰戦争と雄藩の戦略・戦術/2 維新政府の対藩政策と領国体制/3 維新政権の権力構造と廃藩置県への道程―天皇絶対主義国家の成立




ISBN978-4-7924-0687-5 C3021 (2009.8) A5判 上製本 606頁 本体14,500円
刊行によせて
藤野 保
 本書は一六―一七世紀の国際環境のなかで、幕藩制国家を成立・維持せしめた外交体制(鎖国制)の考察(序説)を前提に、(一)関東領国体制、(二)徳川御三家、(三)畿内・近国、(四)西南雄藩の分析を通じて、幕藩制国家の特質を解明すると同時に、一九世紀後半、世界資本主義の東アジア進出に代表されるインパクト(→開国要求)に、この国家がどのように対応して、維新変革(明治維新)を必然化し、天皇絶対主義国家を成立せしめたかについて総合的解明を試みたものである。
 まず、「序説」において、古代以来、東アジアの国際関係・通交貿易構造のなかに位置していた日本が、一六世紀、ヨーロッパを機軸とする新しい国際関係・通交貿易構造に、みずからを位置づけるなかで、近世日本の統一権力が、どのように対応し、新しい国際関係のなかで、どのような国家をつくりあげたかについて、幕藩制国家成立の諸段階における政治・外交史の分析を通じて解明した。
 (一)は、江戸幕府の直接基盤をなす関東が、藩領・天領・旗本領が相関関係をたもちながら、一つのかつ統一的な領国体制(=関東領国体制)を形成したところに、他の地域と異なる領国体制の特質を求めると同時に、その領国体制がどのように展開・変質したか、幕政史の推移と連動させながら究明し、さらに幕府の崩壊→戊辰戦争の過程で、関東の諸藩がどのように対応し、新しく成立した維新政権が、関東領国体制をどのように変容し、関東府県藩体制を構築したか究明した。
 (二)は、江戸幕府の強力な藩屏として創設された徳川御三家について、付家老の機能分析と連動させながら、藩政改革の諸段階と異同について考察し、とくに藩祖の血統が断絶した名古屋・和歌山両藩と、藩祖の血統を維持した水戸藩の比較研究を通じて、それが御三家の財政問題と政治動向に、どのような影響を与えたか、さらに御三家が明治維新(→戊辰戦争)に、どのように対応したか検討し、幕府の崩壊から明治維新への途筋を御三家の立場から解明した。
 (三)は、従来の「畿内非領国」論の検討・批判のうえに、「畿内・近国」における非領国地帯形成の原理(藩領・国外大名の飛地・天領・旗本領形成のメカニズム)を解明するとともに、それが幕藩制国家の維持→変容・解体に、どのような機能・役割を果たしたか、またインパクトを契機に、天皇が急浮上し、政局の中心が関東(江戸)から「畿内」(京都)に移行するなか、「畿内」が果たした歴史的位置付と同時に、戊辰戦争における「畿内・近国」の政治動向を、幕府の崩壊と連動させながら究明した。さらに「周辺諸国」における領国体制および機能分析を通じて、逆に「畿内・近国」における領国体制の在り方を逆照射した。
 (四)は、「薩長土肥」四藩における藩政の成立・展開および明治維新への対応を比較研究しながら、各藩に内在する特質の究明をはじめ、藩政改革の諸段階、雄藩台頭の歴史的条件、インパクトへの対応、幕末の政治動向、対幕戦略の異同を究明することによって、総体としての明治維新の本質を解明した。さらに戊辰戦争におけるこれら雄藩の戦略・戦術、鎮撫方式の分析を通じて、新政府軍による全国支配の実態と矛盾を指摘し、これら雄藩の士族(「朝臣」としての政府高官)によって支配された維新政権下の権力構造および対藩政策の分析を通じて、新たに構築された領国体制を幕藩体制下の領国体制と比較検討し、さらに版籍奉還から廃藩置県に至るプロセスが、どのような権力闘争・政治過程を通じて実現したか、全国諸藩の政治動向との関連において考察し、その結果、天皇絶対主義国家がどのようにして成立したか解明した。
 以上、本書は五つの論考よりなる論文集の形をとっているが、本書の設定課題である「幕藩制国家と明治維新」の解明を目標に、幕藩制国家分析の最重要テーマである五つの分析視角から考察しているため、それは単なる「論文集」ではなく総合研究を意図したものである。そのため各論考は、比較研究の視座から相互に関連をもち、いわば幕府を「倒す側」と「倒される側」(章節編成は逆)からアプローチしたものである。それは明治維新解明の不可欠な研究課題である。