真宗教団の地域と歴史
草野顕之著


本山史と地域教団史の立体的統合



■本書の構成

第T部 畿内とその周辺における真宗の諸相
  第一章 大坂・北摂の真宗教団
  第二章 『永禄六年顕如堺御成記』
  第三章 鷺森別院蔵「親鸞・蓮如連坐像」について

第U部 中部北陸地域の真宗
  第四章 高山照蓮寺と飛騨門徒
  第五章 北陸における本願寺一家衆の動向
  第六章 医王山麓の真宗寺院
  第七章 善徳寺と一向一揆

第V部 遠国への真宗の展開
  第八章 上越地域の真宗の展開
  第九章 真宗と北海道
  第一〇章 筑後真宗教団の展開
  第一一章 東本願寺の朝鮮進出史料

第W部 地域真宗史寸描
  第一二章 光闡坊宛蓮如書状について
  第一三章 清沢本泉寺から清沢願得寺へ
 
  あとがき




  



ISBN978-4-7924-0700-1 C3021  (2010.3) A5判 上製本 298頁 本体7400円
本山史と地域教団史の立体的統合
本願寺史料研究所客員研究員 金龍 静
 真宗の八百年の歴史の中で、戦国期は教団が誕生した時代であり、最も輝きを放った時代でもある。草野顕之氏の前著『戦国期本願寺教団史の研究』(法蔵館、二〇〇四年)は、その時期の本願寺と教団の組織や構造を究明したものであった。今回刊行される『真宗教団の地域と歴史』は、前著と対をなすもので、主に戦国期教団の地域的な展開の諸様相を論述したものである。全一三章におよぶその対象は、北海道(第九章)から九州(第一〇・一一章)にまで及んでいる。
 草野氏は大谷大学で真宗史を指導する立場にあり、その関係から、各地における真宗史にかかわる諸企画に参画し続けた(第四章等)。宗門校の教授として一人孤高を守るということなく、また上からの一方的発信に安住することなく、乞われて各地での調査に当たり(第六章等)、さまざまな声を聞き取り続けた。巻末のあとがきを見ると、三〇年に及ぶその足跡が復元できる。
 たびたび次のような批判の声を聞く。すなわち、本山史は実情を踏まえない上滑りの研究、地域教団史は研究史を踏まえない的はずれの研究、といった声である。草野氏はその点に鑑み、課題対象にかかわる先行の研究史をおさえ、現地に足をはこび、その時々の最新の真宗史料論・歴史地理学・民俗学・社会史的な成果も積極的に援用し、各章の中でみごとな成果を披瀝している。特に一点の法物でも、それから発せられるメッセージを、虚心に受けとめ続ける態度は、思わずうなずかされる(第三章)。
 本書の記述は、読者を意識して、平易な書きぶりである。おそらく自治体史への記述(第八章等)と関連しているものと思われるが、抑揚を押さえた淡々とした筆の運びは、氏の人柄がにじみでたものでもある。今年度から、氏は学長の任に当たられる。本書はその門出を祝うものでもある。今後とも指導的な役割を担っていただけるよう、切に希望している。