身分的周縁の比較史
法と社会の視点から
塚田 孝編


身分的周縁の視角から近世都市社会を読み解く


■本書の構成

近世大坂における芝居地の《法と社会》  
―身分的周縁の比較類型論にむけて― ……大阪市立大学教授 塚田 孝

第一部 流通と社会集団

萩藩大坂蔵屋敷の成立……
山口大学教授 森下 徹
近世大坂の川魚市場……
大阪歴史博物館学芸員 八木 滋
近世前期の祖谷山請負商人と大坂……
鳴門教育大学准教授 町田 哲
近世柳井津の油屋仲間の構造と流通……
大阪市立大学院博士課程 久角健二

第二部 乞食・勧進層と社会集団

泉州南王子村と地域社会 
―文政十一年信太明神御室御所祈願所一件を通して― ……日本学術振興会特別研究員 三田智子
城下町世界の勧進者 
―和歌山の場合― ……和歌山大学教授 藤本清二郎 
身分社会の貧民救済 
―天明飢饉中の越前大野藩を例に― ……プリンストン大学院博士課程 マーレン・エーラス
信州下伊那地域における身分的周縁 
―飯田藩牢守・猿牽と諸集団との関係― ……東京外国語大学教授 吉田ゆり子

第三部 芸能と社会集団

淡路人形座と大坂……
大阪市立大学准教授 久堀裕朗
大坂の芸能と都市民衆 
―素人浄瑠璃を中心に― ……お茶の水女子大学准教授 神田由築




 編者の関連書籍
  塚田 孝著 都市社会史の視点と構想

 塚田 孝編 近世大坂の法と社会

 井上徹・塚田孝編 東アジア近世都市における社会的結合

 塚田 孝・佐賀 朝・八木 滋編 近世身分社会の比較史


ISBN978-4-7924-0920-3 C3021 (2010.6) A5判 上製本 470頁 本体9400円
身分的周縁論の新たなステージへ
東京大学教授 吉田伸之
 身分的周縁論は、すでに一つの大きな研究潮流へと成長している。歴史社会を、表層ではなく深部の実態から、しかも民衆に視座を置いて微細まで描き尽くそうというこの方法と数多くの成果を、今では誰も無視することはできない。本書は、このような身分的周縁論を一貫して主導してきた塚田孝氏が、「法と社会」という視点から、その比較類型的把握というねらいも込めて実施してきた共同研究の成果物として、企画・編集されたものであり、身分的周縁論があらたなステージに入ったことを画すものとなろう。
 内容は、「流通と社会集団」、「乞食・勧進層と社会集団」、「芸能と社会集団」の三部から構成され、編者自身による「近世大坂における芝居地の《法と社会》」を巻頭論文として、計11本の論考を収録している。それらは単なる寄せ集めとは異なり、共質の方法と視点を持つとともに、それぞれ個性的にのびのびと論じきる長大な大作ばかりである。
 事例とされる地域対象は大坂が半分近くを占めているが、その他にも、和泉南王子村・紀伊和歌山・越前大野・阿波祖谷山・周防柳井・信濃飯田なども取り上げられる。また扱われる身分集団や状態としては、芸能者(役者・人形座の太夫と三味線弾き・素人浄瑠璃・猿牽)、商人(蔵元・川魚商人・山請負商人・油屋仲間)、乞食=勧進層(非人・かわた・牢守・貧民)など、これまでほとんど知られていない事例が新たな史料素材とともに紹介される。かくして、地域社会を構成する不可分な要素として、周縁的な存在や社会集団がクローズアップされ、そうした視点から地域社会の構造自体が再把握されることで、比較類型把握への途が拓かれている。
 細部の精緻な分析と、全体への眼差しを併せもつ力作が揃った本書が、日本近世史のみならず、歴史社会に関心を寄せる多くの読者に迎えられることを期待したい。

 
※所属・肩書き等は、本書刊行時のものです。