徳川将軍家と紀伊徳川家
小山譽城著


紀伊徳川家の政治史を解明するための基礎となるべき研究を集成。紀伊徳川家と幕府との関係、領地支配の実態、高野山領との関係、家臣団の特徴などを明らかにし、紀伊徳川家の政治的意義についても考察する。


■本書の構成


序 章
     研究史/本書の構成と分析視角

第一章 徳川将軍と紀伊徳川家
  第一節 紀伊徳川家の参勤交代
  第二節 徳川頼宣の母 養珠院
  第三節 徳川頼宣の晩年
  第四節 徳川吉宗の母 浄円院
  第五節 紀伊徳川家付家老水野忠央と将軍継嗣問題

第二章 紀伊徳川家の支配
  第一節 紀州藩の宗門改め
  第二節 徳川吉宗の藩政改革と将軍就任
  第三節 徳川宗直の藩政――松平頼雄廃嫡事件と関連して
  第四節 近世高野山の成立と寺領支配
  第五節 幕末・維新期における紀州藩の政争――田中善蔵暗殺事件を中心として

第三章 紀伊徳川家の家臣団
  第一節 紀伊徳川家の家臣団の形成過程
  第二節 紀伊徳川家家老 牧野長虎の幕府提訴事件
  第三節 徳川頼宣と慶安の変――紀伊徳川家の牢人召抱えに関連して
  第四節 大名に昇格した紀州藩士――有馬・加納・田沼家を事例として
  第五節 紀州藩の地士制度――地士の創設とその変質を中心として
  第六節 幕末・維新期紀州藩地士の動向

終 章
    徳川将軍家と紀伊徳川家/紀伊徳川家の支配/紀伊徳川家の家臣団

  ◎事項索引/人名索引


  ◎小山譽城(こやま・よしき)……1950年和歌山県生まれ 國學院大學大学院修士課程修了 現在、和歌山県立陵雲高等学校教諭・和歌山大学非常勤講師




 著者の関連書籍
 小山譽城著  徳川御三家付家老の研究



ISBN978-4-7924-0939-5 C3021  (2011.6) A5判 上製本 338頁 本体7,500円
江戸幕府・紀州藩双方のアプローチ
國學院大學文学部教授 根岸茂夫
 先年『徳川御三家付家老の研究』を上梓された小山譽城氏が、長年取り組んでこられた紀伊徳川家および紀州藩の研究とともに、それを幕政の展開とも関連づけた論考をまとめられた。近年、尾張徳川家および尾張藩の研究は多くの成果が出されているが、紀州藩は、尾張に比べ史料が圧倒的に少ないこともあって研究も少ない。そのなかで、氏が丹念に史料を検討しながら本書をまとめられたことは、大変な努力の賜物と感服する。
 周知のように紀伊徳川家は御三家のうちただ一家、八代吉宗、十四代家茂と将軍を出した家(水戸家の出身で一橋家からの十五代慶喜を除けば)であり、江戸幕府・紀州藩双方の研究にとっても、互いのアプローチが必要であり、その間を結んだ研究として本書は貴重である。内容は、幕府と紀州藩の歴代藩主や家老との関係、紀州藩の家臣団の形成、藩政改革をはじめ農村の展開にも及び、とりわけ紀州において宗教的権威を維持し特別な支配形態をもつ高野山の動向、在地土豪が取り立てられて半農半士となった地士が、幕末に海防や動乱の出兵に動員され翻弄されていく様相など、多様な問題を取り上げている。徳川頼宣・光貞・吉宗など歴代藩主だけではなく、由比正雪、田沼意次、安政期の幕政の黒幕ともいわれる水野忠央なども登場し、吉宗の生母の出自を考証するなど、人物に関する描写も興味深い。
 著者が高校教員を勤めながら、安藤精一先生に師事して近世紀州に関する研究会に長年参加し、この分野の研究をリードする一人となり、大学でも教鞭をとってこられたという地道な経歴と誠実な人柄がにじみ出た論考であり、本書の上梓に改めて敬意を表する次第である。
 研究論文とはいえ、逸話もふんだんに取り入れて読みやすく、高校教員の研究誌に掲載された論文もあり、専門家でなくてもわかりやすいように配慮された叙述となっている。研究者だけでなく、歴史に興味を持つ多くの方々、教育に携わる方々にもぜひ推薦したい一冊である。


※所属・肩書き等は、本書刊行時のものです。