近代東アジア社会における外来と在来
勝部眞人編


日本・琉球・中国・朝鮮といった東アジア社会において、「外来」とされる要素の導入・流入に対して、「在来」の社会がどう対応していったのかを探り、それぞれの対応のあり方から地域的特質を比較検討する。


■本書の構成


序言 勝部眞人

第1編 近代日本における外来と在来

第1章 中山富広……在来産業たたら製鉄の衰退とその歴史的意義 
―出雲・田部家「鉄業創始以来営業状態概略」を手がかりとして―
第2章 コ永光俊……日本における農法の改良と持続 
―在地・外来・在来―
第3章 布川 弘……近代日本社会における「外来」と「在来」の構造的な連関
第4章 河西英通……瀬戸内海漁業者と朝鮮認識 
―明治期漁業調査報告書の記述から―
第5章 真栄平房昭……近代の台湾航路と沖縄 
―外来・在来をめぐる東アジア海運史の一視点―
第6章 坂根嘉弘……近代日本における徴税制度の特質
第7章 木村健二……近代瀬戸内農村における外来としての朝鮮牛の受容

第2編 近代中国・朝鮮における外来と在来

第8章 勝部眞人……東アジアにおける農民組織化と在地社会 
―産業組合・合作社・金融組合―
第9章 弁納才一……20 世紀前半中国における在来綿業の近代的展開と農村経済構造
第10章 張 楓……在来織物業の展開と制度的基盤 
―華北地域を中心に―
第11章 戴 鞍鋼 (張 楓・訳)……近代上海地域の「外来」と「在来」
第12章 朴ソプ……韓国近代の農村開発と村落の共同性
第13章 蘇淳烈……植民地朝鮮における外来農業技術の受容と地域の変容




ISBN978-4-7924-0944-9 C3021  (2011.3)
A5判 上製本 286頁 本体6,800円
東アジアにおける近代化を
「在来」の視座からとらえ返す!!
 本書は、近代グローバル化のなかで小農社会を解体させずに対応していった東アジア社会(とくに日本・琉球・中国・朝鮮)において、在地社会から見れば「外来」とされる要素の導入・流入に対して、「在来」の社会がどう対応していったのかを探り、それぞれの対応のあり方から逆に地域的特質を比較検討していこうとする論文集である。
 一見いち早く近代化に踏み出したように見える日本においても、その過程で在来的要素を色濃く残しながら対応していった。あるいは中国社会においても半植民地化のなかで近代化へと動いていくが、これも子細に見ていくと中国在来の要素と結びつきながら対応しているし、同時に朝鮮半島においても日本の植民地政策により近代化を余儀なくされるものの、やはり在来的要素を根強く残している。そうした歴史的局面を村落社会、とくに自然村レベルの在地社会と関わらせて見ていくことにより、日中朝それぞれの社会の伝統的なあり方とともにそれらを包含した変容の様が見えてくるのではないか…というのが、本書の意図するところである。
 この問題意識は、近年の日本経済史研究の成果に負うところが大きい。すなわち、1980年代の中村隆英氏らによる江戸時代以来の長期的な経済発展トレンドを重視する在来産業論から始まり、近年の谷本雅之・在来的経済発展論にいたる研究が、近代日本の経済発展のとらえ方を大きく変えてきたことは周知のとおりである。それを受けて、社会のありようという要素も含めて、もう少し広い観点から検討してみようというのが、研究の出発点であった。
 近代化といえば大きな工場が建ち、蒸気機関車が走るようになり、法律や制度が西洋風に整備され…といったイメージが先行しがちであるが、それらを実際に運用し利用していく過程では、それぞれの社会が持つ伝統的文化性が色濃く反映するのではないか…。その局面を、「外来」と「在来」という切り口によって分析してきた成果が本書に結実した。

 
※所属・肩書き等は、本書刊行時のものです。