藩政改革と地域社会
秋田藩の「寛政」と「天保」
金森正也著


北東北において20万石を有した外様大藩である秋田藩を対象とし、いわゆる「中期藩政改革」と呼称される政治改革の実態について従来の説を批判的に検討しながら明らかにし、その歴史的意義づけを行う。


■本書の構成

本書の課題
序 章 宝暦―天明期の秋田藩

T 改革政治の展開と地域社会
第一章 農民支配体制の再編
第二章 地方知行制と郡方支配
第三章 殖産論の展開と地域社会
第四章 農民的殖産論の展開と藩政

U 改革派官僚の形成と天保期の政治改革
第五章 学館制度と改革派官僚の形成
第六章 学問受容の制度的環境と改革派官僚
第七章 天保期の民衆闘争と藩権力
第八章 飢饉状況の克服と藩政

終 章 藩政改革と地域社会

索 引


  ◎金森正也(かなもり・まさや)……1953年、秋田県生まれ 弘前大学人文学部卒、早稲田大学大学院文学研究科博士課程単位取得修了 現在、秋田市立秋田商業高等学校教頭



ISBN978-4-7924-0951-7 C3021  (2011.11) A5判 上製本 454頁 本体9,500円
地域史研究に新たな地平を切り開く
弘前大学附属図書館長・人文学部教授  長谷川成一
 戦後の秋田藩研究は、秋田県出身の佐々木潤之介先生(一橋大学)や鎌田永吉氏(旧国立史料館)に加えて地元の先学たちによってその基礎が築かれ、豊かな研究成果を蓄積してきた。そのなかにあって、本書の著者金森正也氏は、県内の博物館・公文書館・高校の各現場において日々の勤務に精励し、地域民衆の歴史的課題とは何かという問題関心を絶えずもちながら、秋田藩の研究を地道に積み重ねてきた篤学の研究者である。
 このたび、『藩政改革と地域社会―秋田藩の「寛政」と「天保」―』を上梓し、長年の研究を世に問うことになった。本書での最終課題は、「地域史の視点を中心に据えながら、中期藩政改革とよばれる一連の改革政治に連接する時期を含めて考察対象とし、後期藩社会の全体的歴史像を明らかにしようとするところにある」と述べており、このことが少しもぶれることなく全体を貫くテーマとなっている。
 右の点を踏まえて、金森氏は、中期藩政改革の本質は何か、地方知行制、権力論、天保期の位置づけ、藩政改革と民間知識の関連など、五つの課題を設定して論述を展開する。いずれも、今後の秋田藩研究を進展させるための重要な事柄であり、秋田藩に限らず中後期藩政史の研究を志す若い研究者にとっても、多様な視点を提供するものである。
 加えて、金森氏は藩政史研究の中でややもすれば埋没しがちな個人、あるいは人々の運動への目配りを怠らず、従来ステレオタイプで把握されてきた歴史的概念の再吟味を行っている。この点は、本書の中で取り分け光彩を放っており、地域に生きた人々に対する、金森氏の温かな眼差しを感じるのは、私だけではあるまい。
 戦後の藩政史研究は、ケーススタディないし「個別分散」という言葉で批判にさらされることがあった。しかし、著者によって明らかにされた個々の成果を相互に関連させて地域史の観点に立った新たな歴史像が、本書によって焦点を結ぶことになった。秋田藩の研究のみならず我が国における地域史研究に、本書は新たな地平を切り開いたと言ってもよかろう。


※所属・肩書き等は、本書刊行時のものです。