日本戦時農地政策の研究
坂根嘉弘著



農地統制は守られたか? 戦前と戦後の空白をうめる、戦時期日本の農地政策研究



■本書の構成

  序 章 本書の課題

第1部 農地調整法の分析
  第1章 戦時期農地委員会の構成
  第2章 戦時期農地委員会の機能

第2部 小作料統制令の分析
  第3章 小作料統制令の概要
  第4章 小作料適正化事業の歴史的意義
  補 論 1945年度以降の小作料適正化事業について
  第5章 小作料統制令第6条の機能と特質

第3部 臨時農地等管理令の分析
  第6章 臨時農地等管理令・臨時農地価格統制令の概要
  第7章 臨時農地等管理令の運用と機能
  第8章 農地作付統制の運用と機能
  第9章 長野県における農地作付統制の運用実態と耕作勧告

  終 章 戦時農地統制と市場経済
  人名索引


  ◎坂根嘉弘(さかね・よしひろ)……1956年、京都府舞鶴市生まれ 京都大学大学院農学研究科農林経済学専攻博士課程修了 現在、広島大学大学院社会科学研究科教授・農学博士(京都大学)




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ISBN978-4-7924-0966-1 C3021 (2012.3) A5判 上製本 306頁 本体6,500円

    刊行にあたって

 本書の課題は、日本における戦時農地政策の運用実態を出来うるかぎり実証的に解明し、戦時農地政策の運用実績とそれにともなう問題点や課題、その政策効果を明らかにすることである。本書で分析対象とする戦時農地政策は、農地調整法(一九三八年〜一九四五年)、小作料統制令(一九三九年〜一九四六年)、臨時農地等管理令(一九四一年〜一九四六年)である。本書では、戦時期を幾つかの時期に区切り同時代的に分析を深めていく方法ではなく、農地政策ごとに、その運用実績や運用上の問題点、その政策効果などを分析していく方法をとっている。

 本書ではまず第1に、戦時農地政策の運用実態や実績を出来うるかぎり把握することを課題とした。第2に「連続と断絶」の議論を念頭に、戦後との異同を視野に入れつつ検討を進めた。現在要請されているのは、戦前と戦時を区別し、戦時の固有性を踏まえた上で戦後との異同を実証的に問題にするということであろう。

 第3は、戦時農業分析に闇取引(統制違反)の視点を入れた点である。従来の研究では、闇取引を政策評価に組み込むことはなく(闇経済の視点がなく)、かつその闇がどの程度の広がりをもっていたのかについては、意識的に検討がなされてこなかった。本書では、闇経済(統制違反)を分析視点に取り入れ、その広がりを出来うるかぎり解明し、それを踏まえた政策評価をおこなった。

 戦時農地政策の運用については、法令ごとにその運用や実績に大きな地域的差異がみられ、総じて統制違反(闇取引)が多くみられた。また、戦時期の経済統制(農地統制)は効力規定ではなく、統制違反を契約無効とはしなかった。これらのことは、戦後改革で大きく改められることになったのであるが、その意味で戦後改革は大きな意義をもったということになる。このことは、外形的には連続的にみえても、内実としては断絶的な面が少なからずあった、ということを示している。

 本書は、戦時農地政策研究についての第1冊目にあたる。今後は資料集の刊行などを予定している。引き続き、皆様のご支援・ご鞭撻を賜れば幸甚である。
(坂根嘉弘)
※所属・肩書き等は、本書刊行時のものです。