たたら吹製鉄の成立と展開
角田徳幸著



第6回日本考古学協会賞(奨励賞)受賞
俵國一博士の『古来の砂鉄製錬法』への考古学的検討にはじまり、「山のたたら・海のたたら」という概念から水運の重要性に着目する。最後に、韓国の古来の製鉄についてのありようをあきらかにし、鉄の歴史を解明する。



■本書の構成

序 …………古瀬清秀

序 章 問題の所在 
     
研究の目的/ たたら吹製鉄の成立過程をめぐって /たたら吹製鉄の施設と生産内容をめぐって/東アジアにおける砂鉄製錬をめぐって

第1章 箱形製鉄炉による砂鉄製錬の始まり
    
箱形製鉄炉による砂鉄製錬の開始をめぐって/砂鉄製錬の始まり/箱形製鉄炉の成立/箱形製鉄炉による砂鉄製錬の始まり

第2章 中世の鉄生産と近世たたら吹製鉄の成立
    
中世の鉄生産と近世たたら吹製鉄の成立をめぐって/中世の鉄生産地域/中世製鉄炉の形態 /中世製鉄炉の地下構造/中世製鉄炉の生産内容/中世精錬鍛冶炉の出現と展開/中世の鉄生産と近世たたら吹製鉄の成立

第3章 たたら吹製鉄の施設・生産内容と地域性
    
たたら吹製鉄の施設・生産内容をめぐって/原料の生産/製鉄場(山内)/高殿鈩/大鍛冶場/たたら吹製鉄の生産施設と地域性

第4章 たたら吹製鉄の地域的展開
    
たたら吹製鉄の多様性をめぐって/石見安濃郡・邇摩郡・那賀郡東部/出雲神門郡/出雲飯石郡/出雲仁多郡/伯耆日野郡/たたら吹製鉄の地域的展開

第5章 幕末・明治期のたたら吹製鉄
    
幕末・明治期のたたら吹製鉄をめぐって/幕末期におけるたたら吹製鉄技術の伝播/明治期におけるたたら吹製鉄の動向/『古来の砂鉄製錬法』に見るたたら吹製鉄/幕末・明治期のたたら吹製鉄

第6章 韓国における鉄生産
    
韓国における鉄生産をめぐって/三国時代の製鉄関連遺跡/三国時代の鉄生産/高麗・朝鮮時代の製鉄遺跡/朝鮮時代の鉄生産/韓国の鉄生産と箱形製鉄炉の系譜

終 章 たたら吹製鉄研究の成果と課題
    
たたら吹製鉄研究の成果/たたら吹製鉄研究の課題



  ◎角田徳幸(かくだ のりゆき)……1962年広島県生まれ 島根大学文学専攻科修了 現在、島根県教育庁文化財課勤務 博士(文学)




  たたら吹製鉄についての書籍
  相良英輔先生退職記念論集刊行会編 たたら製鉄・石見銀山と地域社会



 
◎おしらせ◎
 
『考古学研究』第62巻第1号(通巻245号・2015年6月号)に書評が掲載されました。 評者 上栫 武氏



ISBN978-4-7924-1021-6 C3021  (2014.12) B5判 上製本 318頁 本体9,500円

  たたら吹製鉄の歴史を解明する


広島大学文学研究科教授・たたら研究会会長 古瀬清秀 
 久方ぶりのたたら吹製鉄の考古学的分析に基づく著作である。これまでに多くの先学がこの分野に関する研究を推進されてきて、もはや研究し尽くされた感も否めなかったが、まだまだ課題の存在することが、本書から読み取れる。
 広島県に生まれ、島根県で学び、専門を活かす職を得た著者が、鉄の考古学研究にはこれ以上ないフィールドで活躍する中、いつ、どんなきっかけで鉄に強い関心をもたれたのか、私には定かではない。しかし、常に大きな知的好奇心をもち、新たな課題を見いだし、独自の視点で鉄の考古学的諸問題を解明していった。それは大きな3つの柱となって、本書を形作っている。
 まず一つ目が、わが国独特のたたら吹製鉄研究のバイブルといえる俵國一博士の『古来の砂鉄製錬法』への考古学的検討だ。指摘されて初めて気づくことであるのだが、俵博士による明治31年の調査活動からわずか100年少し後の今、調査されたたたら場の位置すら特定できなくなっていたのだ。これについて、著者は丹念なたたら場の現地踏査や発掘調査、さらに史料解読などによって、全貌を明らかにしていった。これは本当に大きな学問的意義といえる。
 次に二つ目であるが、中国地方におけるたたら吹製鉄の発展過程を探る時、水運の重要性に着目して、山のたたら、海(川)のたたらという概念で大きく分類したことであった。そしてさらに、丹念な史料調査で導き出したたたら場の継続年数や、大鍛冶場の設置の在り方などをもとにした分析で、鉄山師たちの鉄山経営の思惑まで見事に描き出したのである。
 そして、三つ目は、韓国の古来の製鉄について、その有り様を明らかにしていったことである。わが国では中国古代の鉄研究は盛んで、わが国の鉄研究にその成果を取り入れようとした。しかし、その間の技術的格差の大きさは想像以上で、朝鮮半島の検討が進展しない限り、研究の深化は容易ならざるものといえた。著者は独学で韓国語を学び、現地での精力的な調査活動も含め、果敢にそれに取り組んだ。そのおかげで次第に、東アジア世界における鉄の歴史解明の見通しが立ってきたことは喜ばしい限りだ。
 本書の上梓が今後の新たなたたら吹製鉄の研究につながることを大いに期待している。同時に多くの方々に目を通していただき、わが国独特の鉄生産技術の萌芽、展開の歴史がわが国の文化形成に大いに関わっていることを感じ取っていただきたい。ともに鉄を研究する同志として、衷心より本書の刊行を喜びたい。

※所属・肩書き等は、本書刊行時のものです。