ことば・ロジック・デザイン
デザイナー・クリエイターを目指す方々へ
妻木宣嗣著




■本書の構成

はじめに〈答えはない,あるのは解釈のみ〉

T 感じ,問い,考え,解釈する

1  感じ,問い,考え,解釈する〈対象に対して自ら分析解釈する〉
1 すべては自分自身から/ 2 自由と個性という幻想/ 3 説得させられる造形〈造形から透けて見えてくる思索と言語〉

2  文章を自分なりに理解する方法その1 〈テクストを理解する〉
1 思考が広がる瞬間/ 2 本を読むということ/ 3 まとめながら読む/ 4 まとめ方のコツ

3  文章を自分なりに理解する方法その2 〈話を理解する〉
1 聴いているのに……/ 2 話を書く/ 3 メモのコツ/ 4 心のなかでしゃべっている

4  思考のかたち1 〈知っていることの多層性,思考・視点の多様性 エビチリを手がかりに〉
1 知っていることの多層性/2 映像としてイメージしたとき/ 3 ひとつの料理/ 4 写真というイメージ/ 5 思考・視点の多様性

5  思考のかたち2 〈思考・視点の多様性 その2〉
1 クリエイトと思考・視点/ 2 「今」と思考・視点

6  思考のかたち3 〈対象に対して問いかける,あるいは疑う〉
1 答えだけを求める教育/ 2 自ら問いかける/ 3 「問いかける」の色々/4 「当たり前」を「問いかける」/ 5 「問いかけ」と「今」イメージ/ 6 問いかける〈その多様性〉


U 思考の具体的なカタチT〈まねる,視点をずらす,アンチ〉

7  まねる
1 攻殻機動隊,マトリックス,ニューロマンサー/ 2 つながる知 対象を自ら分析する態度〈ブライアン・イーノを素材に〉/ 3 つながる知 対象を自ら分析する態度〈新海誠「秒速5センチメートル」〉/ 4 いろいろなところにクリエイトのヒントがある〈ミリタリーを素材に〉

8  対象に対して視点をずらす,変換する〈デニム,サブカル〉
1 デニムのダメージ/ 2 サブカルチャーとは?/ 3 未来と都市に対するイメージの変換/ 4 時代の雰囲気を表象するサブカル/ 5 「今」をクールに掬い取る視点としてのサブカル/ 6 PUNK〈創られるムーブメント〉

9  対象に対し視点をずらす,変換する〈坐すを手がかりに〉
1 どこにでも,クリエイトのヒントはころがっている

10 Apple, Diesel, Virgin〈カウンターカルチャーとして〉
1 Apple〈コンピューター界の異端児〉/ 2 音楽とアップル/ 3 Virgin〈冒険家が経営する会社〉/ 4 Diesel 〈パンクス,労働者,ミリタリー〉/ 5 それぞれの共通点〈カウンターカルチャー〉/ 6 Countor Culture から何を学べるのか?/ 7 ディスタンクシオン

V 思考の具体的なカタチU〈相対化する〉

11 フーコー〈近代としての主体の喪失〉
1 フーコーの視点

12 表面的には,みえないものをみる〈知のアルケオロジー(知の考古学)として日本の近世を読み解く〉
1 情報の読みとり/ 2 テクストの読み込み/ 3 江戸時代の建築業界に関して〈表面的な読み込みと深層レベルでの読み込みについて〉

13 コンセプチュアル・アートを手がかりに
1 レディ・メイド/ 2 相対化するアート/ 3 ポップ・アート/ 4 コンセプチュアル・アート/ 5 コスース 「1 つと3つのシャベル」/ 6 伝統になったデュシャン/ 7 行き過ぎた相対化/ 8 さらに視点をずらす

14 虚構造としての柱と壁〈軸組構造と組積構造〉

W 思考の具体的なカタチV〈デザイン・倫理・「パクリ」〉

15 先入観が現実を隠蔽する〈E.W.サイードのオリエンタリズム〉
1 基礎知識と前提/ 2 サイードの視点

16 作家性と非作家性1 〈「建築」の作家主義――その有効性と限界性〉
1 議論の前提〈創造者としての建築家〉/ 2 犠牲にされる,おびやかされる「生活」/ 3 クライアントと建築家〈受容者と作家〉/ 4 モダニズム〈20世紀建築の功罪〉

17 作家性と非作家性2 〈作家が作家を評価する――閉じた系としての建築界〉
1 作家が作家を評価する〈専門家のみによる評価の危うさと,不在化する普通の視点〉/2 1960年代という時代〈コンペの変化にみるコンセプト至上主義〉

18 作家性と非作家性3 〈柳宗悦と柳宗理〉
1 Super Normal / 2 柳宗理とアノニマス・デザイン/ 3 柳宗悦の民藝運動/ 4 ジョン・ラスキン&ウィリアム・モリスのアーツ&クラフツ運動/ 5 バウハウス〈2つの大戦の狭間で〉/ 6 作家性と匿名性,工藝と美術〈その両側で揺れ動く振り子としてのデザイン〉/ 7 世界を「イメージ」でしか知り得ない私たち/ 8 デザインという概念解釈〈イメージという「監獄」,「風船」を無限に広げていく姿勢〉

19 想像される「当り前」
1 近代日本と「日本的なるもの」探し〈建築における「日本的なもの」を問う〉/ 2 日本らしさとは?

20 デザイン・倫理・「パクリ」
1 近代建築のデスマスク〈オリジナル原理主義の終焉〉/ 2 デザイン・倫理・「パクリ」〈佐野研二郎氏のオリンピック・デザインを事例に〉/ 3 デザイン・倫理・「パクリ」〈自覚すべき最低限の倫理とは?〉/ 4 超一流とはなにか?〈三流しか知らない日本現代社会に蔓延する「とりあえず,これにしとこっかな!」の功罪〉


X 思考の具体的なカタチW〈近代を( )に入れた時代観〉

21 時間の流れ〈トレンド,モードの捉え方〉
1 時間論〈人が過去を語るとき,メタストーリーとしての過去叙述=ヒストリー〉/2 物語の限界性/ 3 限界性の自覚と歴史学的アプローチ

22 時間・時代を扱いつつ,固定された概念を疑う
1 終わり→始まり→終わり→始まり……/ 2 知らないうちに前提化するモデル/ 3 時間のモデル化/ 4 補論〈技術的制約からの解放とジレンマ――自由なのにブレるデザイン〉

23 前近代―(近代)―現代〈近代を( )に入れた時代観〉その1
1 問題意識/ 2 仮設店舗が構成する参道空間/ 3 「人のふるまい」から考える/ 4 近代以前の環境を「人のふるまい」から捉えられるのか?/ 5 ここでいう「近代」/ 6 前近代を現代から見直す/ 7 祭礼時に仮設される屋台〈その連続がつくる歩行空間とにぎわいについて〉/ 8 見直すべき文化,思想としての前近代

24 前近代―(近代)―現代〈近代を( )にいれた歴史観〉その2 川
1 「近代化」以前の人々の生活と水/ 2 人々の娯楽と川/ 3 人々の日常生活と川/ 4 モノと人の往来と川/ 5 人の往来/ 6 まとめ

Y 思考の具体的なカタチX〈現代社会と消費構造〉

25 レイヤー論〈現代社会の階層性〉
1 現代社会の階層性/ 2 実力の優劣が作り出す階層性/ 3 実力の優劣が作り出す階層性と格差社会/ 4 自己選択(意識)が作り出す階層性/ 5 アイデンティティーの自己完結性と上下意識/ 6 意識が創り出す階層性/ 7 文化レイヤー,ダブルレイヤーとして

26 いなくなった「オトクイサマ」と,なくなった「ヒイキノミセ」〈社会構造とビジネス構造変化の必要性〉
1 消費者とよばれてしまう「お客様」/ 2 お得意様の再認識/ 3 「上を目指さない,若者」と購買行動

27 最 後 に






◎妻木宣嗣(つまき・のりつぐ)……1969年大阪市生まれ 大阪工業大学工学部空間デザイン学科准教授




  著者の関連書籍
  妻木宣嗣著 近世の建築・法令・社会

  妻木宣嗣・曽我友良・橋本孝成著 近世の法令と社会―萩藩の建築規制と武家屋敷―



ISBN978-4-7924-1023-0 C0070 (2015.12) A5判 並製本 254頁 本体2,300円


 『ことば・ロジック・デザイン』と題した本書の出版を決意した理由は、近年、私が勤務する教育現場で、言葉を使って論理的に説明できない学生が実に多いことを痛感したからです。言語を表面的な伝達手段としてしか用いていません。今の日本の教育手法、「初めから問いがあり、それに対してどう答えるのか」、といった方法では、自ら問いかける、問題点をみつける、などといった行為が弱いのは仕方ありません。読み書きができれば、クリエイトができるというよりも、読み書きができない人がクリエイトをするのは難しいということ、さらに言語による思考はクリエイトだけでなく、全ての知的行為に必要である、ということを言いたいために書いたつもりです。良いアイデアやデザインは「何となく」ではなく、かなりの部分、言語による論理的説明と、思考の説明が可能です。そして言語を手がかりに、さまざまな「考え方」について述べたのが本書です。

 そこで本書の前半は、本の読みかた、人の話の聞き方、考え方のまとめ方(書き方)などについて、大学で行っている講義をもとにまとめました。後半は、モノ・コトを考える多様性(広さ・深さ・強さなど)、思考レベルにおける視点の多様性について述べています。なお登場してくる考え方や、それを説明する上で提示した事例は、デザインを志すものであれば当然である基礎的知識なものもあれば、私が興味を持っているものなども含まれています。

 また、本書が強調しているのは、「対象に対し、広く、強く、深く考え、そこにひそむ仕掛け(構造)を見つけ出し、クリエイトするための思考のストックを日頃から貯めておくべきである」、という立場であることを一言付け加えておきます。「自ら問い、考え、解釈し、研究する」という、デザインに限らないクリエイティブな思考行為の一助になれば幸いです。


※所属・肩書き等は、本書刊行時のものです。