西宮神社文書 第一巻
清文堂史料叢書 第134刊
西宮神社文化研究所編


天文から承応にかけての三度の火災、昭和二十年(一九四五)八月の西宮空襲等によって、当社の社殿等の建造物は灰燼に帰したが、元禄期以降の社用日記(享保期の第三巻まで刊行済み)は難を逃れたほか、戦前にペン書き筆耕という形で調査、翻刻を実施していたがゆえに命脈を保つことを得た文書群があった。これを今回二巻に分けて上梓し、それに加えて、神社・神主家所蔵文書を、後代への継承という先人の強い使命感を世に問うべく、五巻を目途として刊行するものである。


■本書の構成

序(吉井良昭)
はじめに(松本和明)
凡例


吉井文書一

  年頭書状四通/勘定覚書四通/石津戎宮出入裁許請書壱通/吉田配下願添文案壱通/吉井宮内口上覚壱通(追放・所追払の者共所へ帰り候旨御赦免奉願候儀につき)(以下略)

吉井文書二

  西宮太神宮仮殿遷宮役附行列壱通/南宮八幡宮正遷宮役付目録壱通/南宮八幡宮正遷宮役付行列壱通/南宮八幡宮仮殿遷宮次第壱通/西宮太神宮正遷宮役附壱通(以下略)

吉井文書三

  社家連印証札写壱冊(拝殿番につき元禄・享保年中証書写)/吉井式部返答書覚壱冊(願人中西太郎兵衛と出入につき)/社家神人証札留書壱冊/祝部証札留書壱冊(跡目相続につき)/伯家申渡之条々壱冊(神事祭礼奉仕などにつき)/広田・西宮幷末社境内惣間数之覚壱通(以下略)

吉井文書四

  神子共之一巻(神子の共神主・社家の下知を不承につき)/広田社権殿遷宮役列/西宮神社営繕始末壱冊/西宮造営入用壱通/近衛御教書壱通/近衛家神馬奉納添文弐通(以下略)

解題(松本和明)



監修者
【総監修】
松本和明  西宮神社文化研究所主任研究員
〈監修〉 
井上智勝  埼玉大学教養学部教授
     
岩城卓二  京都大学人文科学研究所准教授
     
梅田千尋  京都女子大学文学部准教授
     
志村 洋  関西学院大学文学部教授
     
中川すがね 愛知学院大学文学部教授
     
西田かほる 静岡文化芸術大学文化政策学部教授
     
幡鎌一弘  天理大学おやさと研究所教授
     
東谷 智  甲南大学文学部教授
     
引野亨輔  千葉大学文学部准教授
     
山﨑善弘  東京未来大学モチベーション行動科学部専任講師



  本書の関連書籍
  西宮神社御社用日記


 



ISBN978-4-7924-1074-2 C3321 (2017.6) A5判 上製本 368頁 本体9,600円

  
必ず私に秘す事なかれ ―「西宮神社文書」刊行の意義―

西宮神社宮司 吉井良昭

 「亀玉櫝中に私秘するも空しく」「公然たらしめよ 必ず私に秘する事なかれ哉」、元文五年(一七四〇)奥州社人からの神道行事の問への回答の一節は、西宮神社に一貫してきた姿勢である。

 天文から承応にかけての三度の火災、昭和二十年(一九四五)八月の西宮空襲等によって、当社の社殿等の建造物は灰燼に帰したが、元禄期以降の社用日記(享保期の第三巻まで刊行済み)は難を逃れたほか、戦前にペン書き筆耕という形で調査、翻刻を実施していたがゆえに命脈を保つことを得た文書群があった。これを今回二巻に分けて上梓し、それに加えて、神社・神主家所蔵文書を、後代への継承という先人の強い使命感を世に問うべく、五巻を目途として刊行するものである。

 本文書の内容は、きわめて多岐にわたる。時代的には明治十年代まで収録されているが、たとえば、「官位勅許次第」では、神主が官位を戴くまでの京都における行動や次第が記され、これは日記には見出せない。社用日記から読みとれない事実は本書、本書から読みとれない事実は社用日記からといった車の両輪ともいうべき活用によって、和音の共鳴にも比すべき効果が生じ、理解がいっそう深化するに違いない。

 本書には 神事、社領、社頭定書といった神社運営に直接関係する例のみならず、東海道と中山道の旅日記、幕末期の攘夷祈願(以上、第一巻)やこれまで不詳であった名古屋配下の文書、修覆田に係る神文議定、江戸における当社崇敬を示す江戸大々神楽講員名の列挙(以上、第二巻)等、多様多彩な記事がちりばめられている。それぞれの文書の行間から当時の人々の息吹や喜怒哀楽が読みとれ、宗教史、民俗学、社会史といった枠内に拘泥することなく、読者各位の幅広いご活用を期待したい。
※所属・肩書き等は、本書刊行時のものです。