新視点による西鶴への誘い
西鶴を楽しむ別巻A
谷脇理史・広嶋 進 編著


出自と俳諧、遊廓、武家批判、苦境、文体、引用、享受の7つの視座から、新しい井原西鶴の相貌を浮かび上がらせる異色の西鶴案内。はじめて西鶴作品を読む人のための参考文献案内も掲載。


■本書の構成

第一章 西鶴 出自と俳諧……谷脇理史
      大阪人西鶴/俳諧への関心/『生玉万句』と西鶴/妻の死と西鶴/俳諧師西鶴/「天下にさはり申し候ふ」ことども

第二章 五感の開放区としての遊廓 ―西鶴の好色物を理解するために― ……染谷智幸
      はじめに/遊廓は、極楽か地獄か/遊廓と多様な芸道・芸能世界/遊廓と花/香と茶/その他の芸能/調度と五感の慰撫/共通感覚/遊廓と六根清浄/結びに
 
第三章 西鶴〈武家〉批判の視座……杉本好伸
       西鶴〈政治批判〉と研究史/野間光辰氏以降の〈批判〉見解/『好色盛衰記』再読/『好色盛衰記』の〈武士批判〉/〈分類〉をまたがる〈視座〉

第四章 町人物の展開と晩年の達成 ―「失敗」と「苦境」を描く作品の誕生― ……広嶋 進
      近世説話集としての『日本永代蔵』/『西鶴織留』における転換/『万の文反古』の実験/『世間胸算用』の達成/『西鶴置土産』―虚栄の喜劇―

第五章 文体と作品の構造 ―テキストに内在する「はなし」― ……中嶋 
      森銑三氏説の誤謬/テキストに内在する「はなし」/俳諧と浮世草子/作者と「はなし手」/虚構としての会話文体

第六章 引用の修辞学 ―切り裂きジャック・西鶴― ……篠原 進
      「山家の者」とは誰か/切り裂かれたテクスト/引用とミステリー/荒屋敷伝説/引用の修辞学

第七章 後続浮世草子から照らし出される西鶴……井上和人
      はじめに/「長刀はむかしの鞘」の後家―『風流?平家』を手がかりに―/その後の世之介―『寛濶平家物語』に見る―/結びに

はじめての西鶴……石塚 修





西鶴作品のおかしさ、面白さを追求する好評シリーズ
@谷脇理史著・『好色一代女』の面白さ・可笑しさ

A谷脇理史著・経済小説の原点『日本永代蔵』

B谷脇理史著・創作した手紙『万の文反古』

C広嶋進著・大晦日を笑う『世間胸算用』

別巻@谷脇理史著・『日本永代蔵』成立論談義

DE杉本好伸著・日本推理小説の源流『本朝桜陰比事』




ISBN978-4-7924-1418-4 C0395  (2011.8) 四六判 上製本 304頁 本体3,400円
七つの視点による西鶴の新しい姿
 平成二十一(二〇〇九)年八月二十八日、谷脇理史氏は六十九歳で急逝された。
 氏は清文堂出版から「西鶴を楽しむ」シリーズ別巻Aとして『西鶴文学の世界―生涯と作品』を出版する予定で、冒頭部分をすでに執筆されていた。その原稿は二百字詰め原稿用紙百七十九枚に及び、自宅書斎の机の上に置かれていたという。
 清文堂出版は、右の遺稿を含む西鶴入門書を立案し、その企画編集を広嶋に依頼した。種々検討した結果、私は「生涯と作品」という編年体による作品紹介は、西鶴没後三百年の平成五年にすでに多数出版されているので(それが新しく谷脇氏によって書き下ろされるのであれば大いに意義を持つことになったのであるが)残念ながら取りやめることとし、いくつかの角度から横断的に西鶴作品を論じるスタイルの入門書を編集することにした。
 本書の第一章には谷脇理史氏の絶筆「出自と俳諧」を置き、これを生かし、以下六つのモチーフを巡って各章が続く。すなわち「五感の解放区としての遊廓」(染谷智幸氏)「西鶴の武家批判」(杉本好伸氏)「失敗と苦境」(広嶋)「文体と作品の構造」(中嶋骼=j「引用の修辞学」(篠原進氏)「後続浮世草子の西鶴享受」(井上和人氏)という視点による七つの西鶴論である。そして最後に「はじめての西鶴」(石塚修氏)として参考文献と年表を掲載している。
 執筆者の協力によって、これまでにない異色の西鶴案内書が出来上がった。読者には興味を持たれた章から自由に読み進んでいただき、西鶴の豊饒な作品世界を実感していただければ幸いである。
(広嶋 進)
※所属・肩書き等は、本書刊行時のものです。