熊野の民俗と歴史
杉中浩一郎著
熊野古道に沿う中辺路町近露うまれの著者が、熊野の民俗と歴史を愛情こめて研究してきた成果である。「T熊野古道」ではその歴史と文化や紀行文を紹介し、「U熊野と海と人」では海とは切れないこの地の民俗を取り上げる。「V熊野の生活と地名」には特に方言や地名の、「W近世の熊野」には近世史料にみえる興味深い話題を取り上げる。「X近代の熊野での人物」では熊楠や土屋文明と熊野の関わりを考察した。熊野人による熊野文化論である。


■本書の構成

1熊野古道
熊野古道〈その歴史と文化〉
中右記にみる古道中辺路の地名
熊野古道 中辺路の変遷
熊野路の紀行文

2熊野の海と人
紀南で見られた丸木舟
古泊の女たち
勝浦沖サンマ漁遭難漁師の体験
田辺江川浦漁民の伊勢奈屋浦進出

3熊野の生活と地名
熊野山村のたべもの
熊野路(中辺路)の民俗点描
備中炭とカタゲマタ
熊野方言覚書
熊野山間部の地名の呼称
紀南の垣内に関して

4近世の熊野
紀藩文人たちの見た熊野の民俗
近世田辺の民俗
紀州田辺での関東ベエ
朝来の義民三兵衛
大塩事件の紀州への余波

5近代の熊野での人物
南方熊楠と大逆事件
加藤一夫の中学時代
新宮における文筆家西尾秀
土屋文明の熊野八たび


◎杉中浩一郎(すぎなか こういちろう)……1922年和歌山県中辺路町近露に生まれる。慶応義塾大学経済学部を「学徒出陣」で中退 1984年〜田辺市立図書館長、4年間勤務 現在 紀南文化財研究会長 田辺市史編さん委員長




 著者の関連書籍
 杉中浩一郎著 南紀熊野の諸相〈古道・民俗・文化〉



ISBN4-7924-0443-6 (1998.11) A5 判 上製本 370頁 本体5600円
※所属・肩書き等は、本書刊行時のものです。