■陸軍と海軍 増補版 | |||||
−陸海軍将校史の研究− | |||||
山口宗之著 | |||||
軍事史を専門とする研究者が、当然のこととして余り関心を払わずに等閑視してきた陸 海軍の人事上の問題点、すなわち大将などの陸海軍将官への昇進問題や陸士・海兵出身以外の将校の人事的処遇の問題などについて、数量的分析をおこない再検討したところに本書の特色がある。特攻作戦において、陸軍では陸士出身少尉が初期段階から、相当数参加し戦死しているが、海軍では海兵出身少尉は温存され、学徒出身者がまず投入され戦死者のほとんどを占めている点を指摘し、海軍善玉論を批判する。このたび元版に3篇を加え増補版を送る。 ■本書の構成 序章 陸軍と海軍 第1章 大将考 「陸軍大将」誕生の条件/「海軍大将」考 第2章 将官考 「無天」将官考/「非海大卒」将官考 第3章 非正統派士官考 輜重兵科士官考/学徒出身見習士官の思想/海軍予備学生の思想/海軍特務士官の思想 第4章 「カデ」と「デー」 陸軍将官における「カデ」と「デー」の数的比較/幼年学校一校時代における「カデ」と「デー」の数的比較 終章 特攻隊史研究の一視点 海軍善玉論批判/海軍特攻戦死現役将校の分析/陸軍士官学校出身戦死者の分析/「朝鮮・台湾出身特攻戦死者」小考 |
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ISBN4-7924-0489-4 (2005.9) A5判 上製本 278頁 本体6500円 | |||||
陸海軍人事に関する先入観の再検討 陸海軍将官への昇進と非正統派将校の処遇の分析 |
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防衛研究所戦史部調査員 原 剛 |
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一般に、大将など陸海軍将官へ昇任した者は、陸軍では陸士・陸大の成績優秀者、海軍では海兵・海大の成績優秀者であったと考えられがちである。また、陸大では、幼年学校出身者がエリートであったと考えられがちであり、一方海軍はスマートで合理的な体質をもっていたので、海兵出身者以外のいわゆる非正統派将校の処遇も公正に行なわれたと考えられがちである。 しかし、実際には必ずしもそうではなかったのであり、その実態を分析し再検討したのが本書である。 著者は、幕末維新政治思想史の研究家としての第一人者であるが、陸海軍人事にも関心を持ち、折りに触れこの方面の資料を収集・研究してきたが、本書はその成果をまとめたものである。 軍事史を専門とする研究者が、当然のこととして余り関心を払わずに、等閑視していた陸海軍の人事上の問題点、即ち大将などの陸海軍将官への昇進問題や陸士・海兵出身以外の将校の人事的処遇の問題などについて、数量分析を行い、再検討をしたところに本書の特色がある。 例えば、陸士・陸大や海兵・海大の成績が優秀であるということは、大将に昇進するための必要条件でも十分条件でもなかったということ、陸軍において幼年学校出身であるということが格別のエリートを約束するものではなかったということ、陸士・海兵出身以外の部内登用将校を陸軍では、少尉候補者、海軍では特務士官と称したが、陸軍の少尉候補者に比べ、海軍の特務士官は、指揮権の問題などで極端な差別待遇をされていたこと、さらには、特攻作戦において、陸軍では陸士出身少尉が初期段階から、相当数参加し戦死しているが、海軍では、海兵出身少尉は温存され、学徒出身者がまず投入され戦死者のほとんどを占めていることなどが、数量的分析に基づいて指摘されている。 またこの他、陸軍で軽視されたという輜重兵科将校についての数的な考察、陸海軍の学徒出身者が陸士・海兵出身者に対して抱いていた意識や、海軍の特務士官が海兵出身者に対して抱いていた意識に関する考察など、陸海軍将校に関する研究上、貴重な解明がなされている。 |
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※所属・肩書き等は、本書刊行時のものです。 |