■戦国期の権力と婚姻 | |||||
西尾和美著 |
|||||
◆本書の構成 序 章 本書の視座と構成 第一部 戦国末期における芸予関係の展開と婚姻 第一章 厳島合戦前夜における芸予の婚姻と小早川隆景 第二章 戦国末期における河野氏権力と来島通康 第三章 戦国末期における芸予関係の展開と婚姻 補 論 中世伊予河野氏の婚姻関係と権力の変遷 第二部 戦国末期における芸予関係の展開と家臣団 第四章 戦国末期における道後湯築城と芸州使者の往来 第五章 戦国末期における芸予関係と河野氏大方の権力 第三部 織豊政権と芸予諸勢力 第六章 織田政権の西国侵攻と瀬戸内海賊衆 第七章 小早川隆景の伊予支配と河野氏 ―「したし」書状の年代比定をめぐって― 第八章 河野通直の死と豊臣政権 終 章 戦国末期における芸予の婚姻と地域諸勢力 あとがき |
|||||
ISBN4-7924-0599-8 C3021 (2005.11) A5 判 上製本 340頁 本体7600円 | |||||
女性史研究は権力者の研究であることを明確に示した論文集 | |||||
新潟大学人文学部教授 矢田俊文 | |||||
すこし前、岐阜市で開かれた研究会で西尾和美さんの報告を聞いたことがあった。その報告は、伊予河野氏に嫁いだ安芸毛利一族の女性と河野氏を継いだその女性の子河野通直についての丁寧で実証的な報告であったが、その結論は、天正十五年(一五七八)七月、九州攻め帰陣の途中の秀吉が、安芸竹原で河野通直を殺害したというものだった。はじめは女性史の研究なのかなと思っていたが、結論は権力論そのもので驚いた記憶がある。 本書『戦国期の権力と婚姻』は、十六世紀後半の天文末年から天正十五年の戦国織豊期における、芸州毛利氏・小早川氏と伊予河野氏および瀬戸内海賊衆来島村上氏との間に結ばれた婚姻関係を究明し、そのことを通じて当該地域の権力論の展開を論じたものである。 婚姻関係、母子関係、姻戚関係をさまざまな史料を駆使して丁寧に解き明かした研究で、優れた女性史研究となっている。しかし、本書の著者西尾氏の主眼は、女性史研究ではなく、戦国織豊期の権力論である。本書は、婚姻研究は女性史研究である以前に権力論であるという西尾氏の主張がみごとに示された論文集となっている。 権力者の研究にとって、婚姻関係、人と人の結びつきの解明こそがいちばん重要ではないか。そのようなことを考えさせられる本である。 本書は、中近世の権力者、女性史に関心をもつ人々、研究者にとって必読の書物である。 |
|||||
※所属・肩書き等は、本書刊行時のものです。 |