■新修泉佐野市史 9・10巻 考古編・民俗編
泉佐野市史編さん委員会編
監修 石部正志・八木 透


 口絵
 序

第九巻 考古編
 凡例
総論 遺跡の概要
第一章 旧石器・縄文
第二章 弥生・古墳
第三章 古代
第四章 中世・近世
第五章 その他資料
 参考文献・引用文献一覧
 図版一覧
 写真一覧
 あとがき

第一〇巻 民俗編
 凡例
序章 民俗編の読者のために
T 山間部の民俗的特質
U 平野部の民俗的特質
V 町場の民俗的特質
W 宮座
X 暮らしと祭り
Y 盆踊りと民謡・民俗芸能
Z タオルをめぐる人々と社会
[ 漁業と漁民の暮らし
 あとがき
 参考文献一覧


全体構成はこちらから


ISBN4-7924-0612-9 C3021 (2006.3) A4 判 上製本 526頁 本体13,000円
地方史叙述に不可欠な埋蔵文化財
市立五條文化博物館館長 石部正志
 全国の市町村史の多くは、古代編・中世編・近世編・近現代編を本編とし、考古編・民俗編などは別巻として刊行している。『新修泉佐野市史』も同様の構成をとっているのだが、私自身はこうした編集方針は古典的であり、改めた方が良いと思っている。古代編から本編が始まるのでは、文字がなかった時代、それぞれの地方に人々が暮らしだした原初の時代、原始時代は欠落しないまでも、本格的な歴史が開始される以前の、さしたる評価もいらない、あまり重きを置く必要がない時代であるかのごとく扱われがちになる。だが、実際には、この泉佐野市にも、後期旧石器時代や縄文時代に遡って、かなりの人々が活動していた証拠が数多く残されている。
 遺跡・遺物、つまり埋蔵文化財を素材として歴史を研究する学問が考古学であり、文字がなかった時代や、文字資料(史料)が乏しい時代は、考古学の独壇場だが、遺跡そのものは、時代が下るほど、人口の増加に見合って増える。泉佐野市とその周辺は、中世以降に飛躍的発展期に入ったのだから、原始・古代に対比して、中世・近世の遺跡数はずっと多いし、情報量も豊富である。
 泉佐野市は、『政基公旅引付』を筆頭として中世荘園関係史料に恵まれたまちであり、中世・近世に強い関心を抱かれている市民も少なくないが、埋蔵文化財の分布は、古文書・古記録とは必ずしも整合しない。というより、文字資料では欠落している村や町の跡、寺院跡その他の存在が、遺跡調査の累積によって大きく浮かび上がってきており、文献史料だけからは解明不可能な、活気にあふれた泉佐野の情景がよみがえってきている。
 この「考古編」は、市の財政事情悪化のあおりで、当初予定した頁数を半分に圧縮せざるを得なかったので、「考古資料編」に徹して作成したが、考古学から見た旧石器・縄文、弥生・古墳、古代、中世、近世、それぞれの時代の様子がよく理解できる配慮は怠らなかった。
自治体史「民俗編」の新たな試み
佛教大学教授 八木 透
 『新修泉佐野市史・民俗編』は十三年間に及ぶフィールドワークの成果であり、またこれまでにあまり例のない、自治体史「民俗編」の新たな試みでもある。
 泉佐野市域の民俗的特質は、山間地域や一部の平野部では長い歴史に支えられた伝統的な民俗を残しながら、一方でJ R 阪和線や南海本線に近い地域では、古くからの民俗が著しい変化を遂げつつある状況だと考えられる。また山間地域、平野地域、町場、海岸地域で、地理的にも生業的にもまったく異質であることが大きな特色である。このような地域的特質をふまえ、民俗編のあり方として次のような基本方針を掲げた。第一に、他の多くの市町村史の「資料編」としての民俗編のように、民俗学が扱うすべての項目を記述し、また全市域を形式的に網羅するような単純な事例報告に終始しないこと。第二に、人々の暮らしを総体として記述するような「民俗誌」的記述を織り込むこと。第三に、本市域の民俗的特質を十分に考慮し、特徴的な民俗事象を取り上げてできるだけ詳しく解説することである。
 内容構成としては、まず基礎編である「民俗誌」において、本市域を山間地域・平野部・町場という三地域に分けて記述した。次に応用編として「宮座」・「暮らしと祭り」・「盆踊りと民謡・民俗芸能」・「タオルをめぐる人々と社会」・「漁業と漁民のくらし」という五章を設け、泉佐野市域を代表する民俗事象として可能な限り詳細な解説を試みた。このような構成をとることによって、本書の読者には、まず泉佐野市域の地域的特質を知ってもらい、続いて本市域の民俗的特質について理解を深めてもらえるように配慮したつもりである。
本書は、泉佐野市史民俗部会が総力で取り組んできた成果である。一人でも多くの方々が本書を手にされることによって、泉佐野市域の民俗について理解を深めていただければ誠に幸いである。
※所属・肩書き等は、本書刊行時のものです。