■日本古代の家族と社会 |
中田興吉著 |
本書の構成
第一編 正倉院の戸籍・計帳からみた家族
第一章 寄口編付の契機について
第二章 大宝二年戸籍にみる命名と家族
第三章 大宝二年戸籍にみえる妻と妾
第四章 婚姻にともなう移動と計帳註記
第五章 嫡子と嫡兄 ――大宝二年御野国戸籍を中心として
第六章 戸主の交代 ――大宝二年御野国戸籍を中心として
第七章 戸のあり方と個別経営の展開 ――正倉院戸籍・計帳の分析から
第二編 社会のあり方と家族
第一章 八世紀の家族と個別経営
第二章 古代家族の展開と律令政府
第三章 窃盗の赦からの除外とその背景
第四章 日本古代庶人における嫡子制 ――その導入と解消
第五章 女性の労働と対偶婚の持続
第六章 律令制と婚姻 ――律令制のもたらしたもの
付 編
第一章 編戸制と地域の人々
第二章 養老五年籍式と下総国戸籍
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ISBN978-4-7924-0641-7 C3021 (2007.12) A5 判 上製本 428頁 本体8,600円 |
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本書は正倉院に残された戸籍・計帳の分析を通して、律令制と八世紀の家族・社会のあり方の関係を解明しようとしたものである。
第一編は、戸籍・計帳の分析を主とし、それの分析から描かれる家族像を論じたもので構成した。戸主と戸口、寄口(寄人)の関係、さらに夫婦関係、親子関係、兄弟のあり方などの具体像に迫る。
戸籍・計帳がどこまで現実を反映しているのか、と言う疑問から、このような分析を軽視する傾向もないではないが、しかし戸籍・計帳には政府の関わることのできない情報も含まれており、そのことを考慮して論を展開している。
また第二編では、八世紀の社会と律令制の関係がいかなるものであったのかを主として扱い、そのことと戸籍・計帳の分析から描かれる家族の関係を扱ったものである。
付編には、第一編、第二編とは直接関係しないものの、戸籍・計帳の分析に関係するものを収めた。
八世紀の家族と社会と言った分野については、すでに幾多の先学により解明が試みられている。しかし戸籍・計帳から描く当時の家族像、またその位置づけについてはいささか違和感を禁じ得ない。それでまず戸籍・計帳から描かれる家族のあり方がいかなるものであったのかを明らかにすることに力を注ぎ、その上で、背後の社会に言及することとしている。
いささか微に入り細をうがって家族の実像に迫った感があるが、ご一読いただけるならば、幸甚である。
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中田興吉
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※所属・肩書き等は、本書刊行時のものです。
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