■御家騒動の研究 | |||||
吉永 昭著 | |||||
本書の構成 はじめに ―本書の構成と利用史料について― 第一章 藩政の確立をめぐる対立・抗争と御家騒動 伯耆国米子藩「横田騒動」について 石見国津和野藩「津和野騒動」について 讃岐国高松藩「生駒騒動」について 肥後国人吉藩「相良清兵衛騒動」について 越後国高田藩「越後騒動」について 第二章 本藩・支藩の対立と御家騒動 大和国郡山藩「九六騒動」について 周防国徳山藩「改易騒動」について 第三章 農民闘争の激化と御家騒動 美濃国郡上八幡藩「遠藤騒動」について 第四章 藩主押し込めと御家騒動 越前国丸岡藩「本多騒動」について 越後国沢海藩「沢海騒動」について 第五章 家中の対立・抗争と「脱藩騒動」 羽後国亀田藩「家中脱藩騒動」について 豊前国小倉藩「白黒騒動」について 第六章 家督相続をめぐる争いと御家騒動 出雲国母里藩「母里騒動」について 信濃国諏訪藩「二の丸騒動」について 第七章 政治経済路線をめぐる対立・抗争と御家騒動 大和国松山藩「宇陀崩れ」について 美濃国岩村藩「岩村騒動」について 磐城国平藩「松賀騒動」について 羽後国秋田藩「佐竹騒動」について 日向国佐土原藩「天明騒動」について 第八章 転封をめぐる対立・抗争と御家騒動 播磨国姫路藩「姫路騒動」について 第九章 埋もれていた御家騒動 播磨国龍野藩「龍野騒動」について 第十章 家中騒動史年表 はじめに―「家中騒動史年表」凡例及び文献紹介― 東北地方/関東地方/中部地方/近畿地方/ 中国地方/四国地方/九州地方 本書の関連書籍 吉永 昭著 御家騒動の展開 |
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ISBN978-4-7924-0654-7 C3021 | (2008.9) | A5 判 | 上製本 | 926頁 | 本体18,500円 |
御家騒動の「史実」と「虚構」を読み解く | |||||
愛知学院大学教授 黒田安雄 |
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今回清文堂より刊行された『御家騒動の研究』は、御家騒動についての広範な知識と緻密な検証によって知られる吉永昭氏が、江戸時代二一藩で起こった騒動についての論考を一書にまとめられたものである。全国各地の騒動の実態、その実像、その経緯と内容などが主題ごとに考察されており、御家騒動の全体像を見渡せる論理的・体系的な構成となっている。 御家騒動の研究は、一九六五年に北島正元氏が幕藩体制の研究水準を踏まえて騒動の実態と歴史的本質を追究することを提唱されて以来、本格的に深められてきた。吉永昭氏は東海地方の地方史編纂の傍ら、各地方の県史や市町村史、研究発表論文等を丹念に調査・検討され、その一連の研究報告により全国の御家騒動を概観することが可能となった。最近では、笠谷和比古氏が御家騒動の一類型としての主君「押込」の慣行を歴史的に明らかにし、福田千鶴氏は個別家中騒動の展開を幕藩政治史のなかに位置づけている。 本書の成果は数多いが、関連する諸史料を全国的に博捜し、史料の緻密な分析を通じて「御家騒動とは何か」を問う姿勢を貫いている。騒動関係史料と実録類を広く調査・発掘し、それらを慎重かつ丹念に読み込んだ実証性豊かな論証には目を見張るものがある。全国にはまだまだ発掘・解明されていなかった御家騒動にも考察を試み、新たな課題や従来知られていなかった多くの事実を明らかにされたことは、現在の研究水準を問い直し、新たな意味づけを行うことに連なるものであろう。 御家騒動の内容・形態・性格・特質はさまざまであるが、終章には各地方の県史や市町村史、発表論文等をもとに、幕府創業期から廃藩置県の間に起こった主な騒動及び事例を取り上げ、地域毎に分類して年代順に並べてある。本書は、これまでの御家騒動研究の総括であるとともに、広く研究者全体の必読書になるであろう。 |
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前人未到の待望書刊行の喜び | |||||
九州産業大学教授 福田千鶴 |
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吉永昭先生の「御家騒動の研究」は、同じく御家騒動の研究を志してきた後進の私にとっては常に先導の道標でした。とくに本書の第十章に掲げられた「家中騒動史年表」の基礎作業として公表された論文から受けた恩恵は、はかりしれないものがあります。 最初に先生が「四国諸藩御家騒動の研究」を公表されたのは一九八四年で、個別騒動の内容を簡潔に紹介し、自治体史を中心に出典を併記して御家騒動研究の導きとなるよう便宜がはかられていました。以来、中国・近畿・北陸甲信越・東海・九州と精力的にデータの収集・公開を進められ、一九九〇年の「東北諸藩御家騒動の研究」をもって一応の完結をみましたが、今回の「家中騒動史年表」は九〇年以後の研究動向も増補されています。さらに先生は騒動の個別研究に着手され、本書所収の二十件の騒動を分析されました。内容は近世初期から後期まで幅広い時代にわたり、地域も東北から九州に及んでいます。これほどたくさんの御家騒動を全国的に網羅した研究はまさに前人未到のご労作であり、これを個人研究で成し遂げられたことに対しては畏敬の念を抱かざるをえません。本書所収の初出論文はいずれも入手が難しいため、一日も早い本書の出版が望まれておりました。今後、本書から個々の読者が多大な恩恵を得られるのみならず、全国の図書館においてもレファレンス必携の書として活用されることになるでしょう。 実は私は先生とはまだ直接の面識がないのですが、大学院生時代に福岡県立図書館郷土課に嘱託勤めをしていたおりに、先生のお名前がレファランスの記名欄にあることに気づいて、急いでお探ししたけどお帰りになったあとだったことがあります。失礼ながらご覧になったものを拝見すると、ちょうど本書第五章第二節の豊前小倉藩「白黒騒動」をお調べでした。その時のことを思い出しますと、御家騒動を求めて寸暇を惜しんで全国を行脚なさった先生のお姿が脳裏に浮かびます。その長い道のりを乗り越えて、待ちに待った本書刊行の運びとなりました。御家騒動の研究を志す者のみならず、全国の御家騒動ファンにとっても待望の大著の刊行を心より喜びたいと思います。 |
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※所属・肩書き等は、本書刊行時のものです。 |