今川氏とその時代
地域研究と歴史教育
小和田哲男編





本書の構成

  第T部 今川氏とその時代

戦国大名今川氏の軍役…………小和田哲男
今川氏の「不入制度」…………原田千尋
  ―戦国大名権力による地域秩序の再編成の展開―
今川領国の農地とその開発…………大塚  勲
「大福寺古案」と法印快雅…………久保田昌希
花蔵の乱の研究史と争点について…………前田利久
新発見の今川氏家臣発給文書…………大石泰史
 ―為広・為和歌合集紙背文書の検討から―
瀬名氏三代の考察…………長谷川清一
 ―今川氏一門としての功と罪―
今川外交における公家の役割…………松下哲也
今川範国国宣の意義…………森田香司
 ―守護領国形成過程における一考察―
信濃における戦国大名と国人との関係…………望月  厚
 ―滋野一族望月氏の事例から―
四分一役の再検討…………鈴木正人

 第U部 歴史研究の最前線

近世後期の菓子…………大澄奈緒美
  ―『関口日記』から考察する豪農の生活の変化―
徳川幕府海軍創設過程に見る近代国家意識…………大西  洋
民衆思想と近代天皇制国家の支配秩序…………鈴木正行
 ―丸山教の世直し・世直りに着目して―

 第V部 歴史教育と社会科教育

社会科的思考・判断力の向上を子供たちに保証する…………佐々木和也
社会科学習指導案の一事例…………日吉高幸
  ―総合的な学習と社会科歴史学習との関わり―
オーラル・ヒストリーとシベリア抑留授業実践…………中山敬司
歴史教育における新たなティーチングメソッド…………青島範明
 ―Blended- Learningの提案―
社会科からみた静岡県の教育の現状と課題………佐野光彦
 ―今、学校現場に何が求められているか―

  ◎小和田哲男先生著作目録




 編者の関連書籍
 小和田哲男著作集 全7巻

 小和田哲男著 近江浅井氏の研究



ISBN978-4-7924-0677-6 C3021 (2009.3) A5判 上製本 558頁 本体11500円
 私の定年退職を一年半後くらいあとに控えたある日のこと、教え子たちから「退職記念論文集を出しましょう」との話があった。ありがたいと思いつつ、若干の躊躇があり、即答はしなかった。静岡大学という一地方国立大学で、しかも教育学部の教員だった者にそのような論文集は無縁のものと思っていたからである。
 一ヵ月ほど熟慮した末、結局、お願いすることにした。その理由は、教え子たちが論文を書くことで、研究の励みになるのではないかと思ったからである。しかし、そのことは別な意味で大変なことでもあった。私自身の三十六年間にわたる教員生活の成果がいやおうなく世間の目にさらされるわけで、責任の重大さを感じないわけにはいかなかった。
 この退職記念論文集では、一つの大きな柱を今川氏にすることは、当初の企画段階から私の心には決めていた。そして、実際、今川氏にかかわる研究成果が多数寄せられ、書名も『今川氏とその時代』として出版される方向に動きだした。
 ところが、いざそのように書名をつけたとき、正直にいってしまえば、少し欲がでてきたのである。教え子だけでなく、「同士」にも加わってもらおうと考え、原稿をお願いすることにした。大塚勲、前田利久、久保田昌希、大石泰史の四氏には無理をきいてもらい、感謝の気持ちでいっぱいである。
 ところで、この論文集は三部構成をとっている。第T部が書名ともなってなっている「今川氏とその時代」で、第U部が「歴史研究の最前線」、そして第V部が「歴史教育と社会科教育」である。第U部・第V部の内容を踏まえてサブタイトルの「地域研究と歴史教育」を付した。
 卒業生・修了生は、それぞれ、卒論・修論を発展させ、研究を継続し、教育現場でも中堅としてまた若手として期待されている。教育学部および大学院も教育学研究科ということで、私も地域研究と歴史教育には力を入れてきたところで、第U部、第V部があってはじめて、私の三十六年間の全体像がつかめるのではないかと考えている。                (あとがきより抜粋)