弘前城築城四百年
城・町・人の歴史万華鏡
長谷川成一監修


北の大地に台頭した新興近世大名の居城から、軍都、学都への歩みをたどる。


本書の構成

壱…城の章 「北狄の押さえ」から師団施設、公園への有為転変

弘前城と津軽領/慶長十六年の築城/国絵図にみる弘前城/南溜池/弘前城の石垣/元禄の石垣普請/津軽信政の天守再建計画/城跡から出土の陶磁器/城跡に現存する建物/城跡の失われた建物/規模と曲輪配置/文化の高直りと天守の再建/幕末・明治維新と城地/弘前公園の成立/観桜会とさくらまつり/陸軍と弘前城/戦後の弘前公園

弐…町の章 城下町から軍都、学都への歩み

長勝寺構と新寺構/長勝寺と諸宗寺院/青森町の町立て/絵図にみる町割りと岩木川/弘前城下・津軽領のねぷた/領国貨幣「津軽銀」/元禄飢饉と武家の郭外移転/弘前藩と敦賀・大津・大坂蔵屋敷/弘前藩の京都屋敷と津軽町/弘前藩の江戸屋敷/比良野貞彦が見た弘前城下/白神山地と弘前城下/城下町の伝承と習俗/城下町の災害/人々の食事/蓑虫山人が見た弘前・津軽/リンゴ生産を支えた弘前の地場産業

参…人の章 貴賤、聖俗、老若男女、貧富の別問わぬ悲喜こもごも

西洞院時慶と津軽信建/信枚・満天姫・天海/城下の家臣団/津軽家本家と黒石津軽家/弘前藩と盛岡藩/夷島からみた弘前、津軽領/殿様の印鑑/岩木山信仰の風説/弘前・津軽を訪れた人々/蝦夷地警備と津軽領/藩校稽古館の設立と展開/平田国学と鶴舎(鶴屋)有節・平尾魯僊/百沢寺と松前阿吽寺・高野山清浄心院/『忍ぶ草』と弘前城/お殿様の墓・庶民の墓/術から道への武芸改革/明治の外国人が見た津軽




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ISBN978-4-7924-0934-0 C0021 (2011.1) 四六判 上製本 286頁 本体2700円
刊行の辞
 二〇一一(平成二十三)年、弘前城は築城四百年を迎えます。本書は、東奥日報社が築城四百年に向けて企画した、シリーズ「弘前城 二〇一一年築城四〇〇年へ向けて 城・町・人の歴史万華鏡」(長谷川成一監修)をベースとしています。このシリーズは、二〇〇九年五月十六日から二〇一〇年五月二十九日まで、「東奥日報」紙上に、五一回にわたって連載されました。
 ところで、弘前市では昨年から、築城四百年に関わる行事などが種々企画され、市民の間でもそれを祝う機運が次第に高まってきています。私も、一昨年以来、弘前市から弘前城築城四百年祭実行委員会のアドバイザーをはじめとして、弘前市歴史的風致維持向上計画委員会や史跡津軽氏城跡弘前城整備計画委員会の委員長を委嘱され、弘前市の史跡整備や歴史的な景観保存計画の立案に関与してきました。この間、委員だけでなく市民の方々と意見を交換する機会を持ちましたが、若い市民との懇談のなかで感じたのは、弘前城の成り立ちや弘前城下の変遷、弘前藩の歩みについて、正確な知識がやや不足しているのではないかということでした。
 本書は、右のような状況を多少なりとも改善し、弘前城を城郭の視角からだけでなく、その歴史的背景も含めて総体的にとらえてほしいと願って編集したものです。執筆者は、現在、弘前藩政史、歴史考古学、民俗学、近現代史などの研究者に加え、文化財保護を実践している行政マンなど、いずれも各分野の第一線で活躍している方々です。各章のテーマをご覧いただければお分かりのように、十七世紀初頭の築城から現代に至る弘前の城と町の歴史をはじめ、近世から近・現代に向かう時代の潮流のなかで活躍した人々の姿を、ビジュアルに描き出したつもりです。
 読者の皆様には本書を手にして、弘前城や弘前市に訪れることをお勧めします。司馬遼太郎さんは本州の北端の藩に、このようなすばらしい城郭が存在するのは奇跡に近いと述べていますが、司馬さんの右の言葉と四百年という時間を、実感をこめて受け止めていただけると思います。(長谷川成一)


 
※所属・肩書き等は、本書刊行時のものです。