■古代の都城と東アジア | |||||
大極殿と難波京 | |||||
積山 洋著 | |||||
近年、めざましい進展をとげる中国の発掘調査の成果を盛り込み、日本の古代都城が当時の国際関係の中で、中国古代都城の形成をどのように摂取してきたのかという問題を解明する。 ■本書の構成 序 本書の課題 第T部 大極殿の研究 第一章 中国古代都城の軸線プランと正殿 軸線プランの成立/軸線プランの衰退/軸線プランの再生と展開/中軸線プランの確立と変容 第二章 大極殿の成立と前期難波宮内裏前殿 大極殿の成立をめぐる研究史抄/難波長柄豊碕宮(前期難波宮)の内裏/難波宮の逆凸字形内裏と隋唐の宮城プラン/内裏の方形化と正殿/中軸線のプランと大極殿/大極殿の成立をめぐって 第三章 大極殿の展開と後期難波宮 後期難波宮の大極殿/宮室正殿の分類とその変遷/大極殿の成立と展開 第U部 難波京の研究 第一章 中国古代都城の外郭城と里坊の制 外郭城における里坊の成立と展開/里坊制の起源と特徴 第二章 難波京研究史 難波京研究史/研究史の整理 第三章 難波京条坊研究の課題と方法 条坊地割研究の課題/条坊地割研究の方法 第四章 初期難波京の造営 〈孝徳朝の難波宮と造都構想〉 難波長柄豊碕宮の規模/孝徳朝の造都構想 第五章 前期難波京の造営 難波京U期の地割に関わる調査/難波京U期の地割/天武朝の複都制と難波京 第六章 後期難波京の造営 副都建設の再開/副都再建の背景/奈良時代の副都建設/京域東部の様相/京内寺院の展開/八世紀の東アジアと日本の複都制 結び 総括と課題 ◎積山 洋(せきやま ひろし)……1953年大阪府生まれ 大阪市立大学文学部卒業 現在、大阪歴史博物館学芸課長代理 ◎おしらせ◎ 『古代文化』第67巻第2号(通巻第601号・平成27年9月)に書評が掲載されました。 評者 國下多美樹氏 |
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ISBN978-4-7924-0984-5 C3021 (2013.10) A5判 上製本 398頁 本体8.900円 | |||||
熱 い 魂 | |||||
大阪市立大学名誉教授 栄原永遠男 |
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いきなり仁侠映画のようで恐縮だが、本書の著者積山洋氏をひとことで表す言葉はこれだと思う。本人は黙して語らないが、いくつかの職業を経て大学に入り、そして考古学に出会った。学部時代は、大学より発掘調査の現場にいることが多かったようだ。 彼の卒業論文は和歌山の古墳時代に関するものであったから、ごく初期には紀伊に関心があったのであろう。そして、大阪市文化財協会に就職して、大阪をフィールドとするようになった。これは、紀伊には申しわけないが、難波にとっては幸いなことであった。 彼は、勤務先の業務の関係で、古代の難波に限らず、各時代の大坂の調査研究にかかわってきた。その中で次第に積山氏の心をとらえていったのが、難波京・難波宮であった。 第T部「大極殿の研究」では、前期難波宮の中心部の構造に焦点を絞り、軸線プランに着目している。それは、中国都城の流れの中にどのように位置付けられ、そこからどのように出て来たのか、また後期難波宮にどのように展開したのか、検討を重ねている。第U部「難波京の研究」では、主題を「京」に定めている。中国都城における里坊制の実態や、難波京の研究史と研究方法をおさえた上で、孝徳朝(難波京T期)、天武朝(難波京U期)、聖武朝(難波京V期)の難波京の構造を追い、その造営の意義を国際関係の中で考えている。 本書の特徴は、中国を中心とする東アジアの都城の展開の中で難波京・難波宮を考えていくという意志と、前期と後期の難波京・難波宮を切りはなさないで捉えようとする姿勢にある。本書の主題「古代の都城と東アジア」、副題「大極殿と難波京」は、その思いを端的に示している。 積山氏の出身した大阪市立大学は、難波研究の長い伝統を持っている。意識するとしないにかかわらず、積山氏は、その伝統のなかで研究を開花させたと言えよう。本書は、山根徳太郎先生以来の難波京・難波宮研究の流れを受けつぐ最良の到達点である。また、積山氏の約二〇年間にわたる挌闘の結晶でもある。ここには、著者の熱い魂が静かに込められている。 |
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※所属・肩書き等は、本書刊行時のものです。 |