■近世の公用交通路をめぐる情報 | |||||
瀬戸内海を中心に | |||||
鴨頭俊宏著 | |||||
瀬戸内海路はもちろん、対岸近くを並行する山陽道や西海道などの陸路とのネットワークから、情報の多様性・重層性と地域社会との関係性について追究する。 ■本書の構成 序章 本書の目的と構成 本書の趣旨/問題の所在と本書の目的/本書の構成 第一章 近世公用通行をめぐる情報の研究と本書の位置づけ ―基本用語・フィールド・史料の概要― はじめに/幕府政策史の整理と分析対象の限定/対象フィールドの概要/主な利用史料の概要/瀬戸内海路に限定した研究史の整理/おわりに 第二章 漂着異国人の長崎移送と瀬戸内海域のネットワーク ―幕府海事のネットワークをとおし伝達される場合として― はじめに/課題の限定と分析方法/漂着第一報の伝達とその変容/松山藩の対応/第一報の受信から津和地通過までの情報伝達とその変化/おわりに 第三章 長崎上使の下向と瀬戸内海域のネットワーク ―幕府支配の中央から地方へ伝達される場合として― はじめに/課題の限定と分析方法/情報伝達における各パターンとその概要/大坂留守居およびその組合と播磨室津名村氏の役割と位置づけ/山陽道先触ルートとの関係/おわりに 第四章 長崎上使の帰府と瀬戸内海域のネットワーク ―幕府支配の地方から中央へ伝達される場合として― はじめに/分析の概要/情報伝達における各パターンとその概要/先触に先行する通行情報と長崎聞役について/おわりに 第五章 藩の経済的負担をとおして見る瀬戸内海域のネットワーク ―漂着異国人長崎移送と伊予国松山藩領海の地域社会=\ はじめに/課題の限定と分析方法/移送における松山藩の迎接とその負担の構成/津和地・岩城をめぐる負担経費と松山藩によるその支給/比較検討/おわりに 第六章 分析結果の考察 はじめに/長崎上使の上下通行と漂着異国人の長崎移送/外国使節の場合における分析との対比/移動軸(ヨコ軸)に対する位置づけ/時間軸(タテ軸)に対する位置づけ/おわりに 終章 本書の結論と研究の展望 はじめに/本論各章の整理/本書の結論/今後の課題と研究の展望 ◎鴨頭俊宏(かもがしら としひろ)……1978年愛媛県生まれ 広島大学特別研究員 博士(文学 広島大学) ◎おしらせ◎ 『日本歴史』805号(2015年6月号)に書評が掲載されました。 評者 土井作治氏 『ヒストリア』第253号(2015年12月号)に書評が掲載されました。 評者 玉井建也氏 |
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ISBN978-4-7924-0993-7 C3021 (2014.5) A5判 上製本 386頁 本体9,800円 | |||||
近世情報史研究の新水準をきづく | |||||
九州大学名誉教授・交通史学会会長 丸山雍成 |
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これまで交通史研究は、直面する時代的趨勢のなかで、常に新たな展開を示してきた。そのなかでも、情報史研究は近年目ざましい進歩を遂げ、斬新かつ実証的な論著をうみ出している。 著者は、歴史学の各分野における個別具体化・細分化の傾向の反省に立って、各時代の歴史的特質を究明することを目ざし、従来の研究史の徹底的な検証により、広い視野から超克すべく方法的模索を重ね、情報史研究として近来出色の著作を完成させた。 近世の公用交通路としては、本書が検討の主対象とする瀬戸内海路はもちろん、対岸近くを併行的にはしる山陽道や西海道、また東海道以下の五街道などの陸路がある。著者は、そこでのネットワークから、幕藩制国家の支配構造と変質過程のなかで、情報の多様性・重層性と地域社会との関係性について、多角的かつ深層部まで追究しようとする。それは具体的には、幕府(中央権力)―藩(地方権力)―地域社会(郡・町・村・浦などの行政区域)の三者の在り様と、その国内普遍的な関係変化を描き出すことを目ざすものであり、おおむね成功している。 本書は、各章ごとに課題を限定したうえで、制度史・研究史を詳述し、分析方法や着眼点を提示するなど一貫して問題意識を鮮明に打ち出し、そして史料の分析に入る方法をとっている。ここで若干の事項を摘記すると、近世の情報・通信制度の叙述にはじまり、幕府の浦触制度や廻達方式などによる全国的な伝達ネットワークの設定、瀬戸内海とその交通拠点、異国船漂着や長崎移送、長崎上使(長崎奉行)以下の任地下向・帰府時および朝鮮通信使・琉球使節の来朝時の情報ルートや迎接、大坂留守居、伝達にみる先触・外聞・風聞などの各パターン、藩と地域社会の馳走負担とその特質、その他きわめて多岐にわたる事象の検討・分析からなる。 こうした本書の内容は、瀬戸内海路が主対象でありながら、広範な分野にまたがる高度な専門性を基礎としており、その平明な文章が、明快な論理と追究方式と相まって、読者を深い興趣へ導く原動力ともなっている。 |
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※所属・肩書き等は、本書刊行時のものです。 |