■近江日野商人の経営史 | |||||
近江から関東へ | |||||
上村雅洋著 | |||||
酒造業に従事した近江商人たちの足跡 ■本書の構成 序 論 一 研 究 史 二 本書の構成と目的 第一章 正野玄三家の事業と奉公人 一 正野家の概略 二 「家来年季録」 三 別家 第二章 正野玄三家の奉公人と給金 一 奉公人数 二 給金額 三 給金の支給 四 仕着 五 下女給金 六 褒美金 七 不祥事と処遇 第三章 近代における正野玄三家の雇用形態 一 明治二〇年「雇人名簿」 二 大正二年「店員名簿」 三 昭和六年「店員調」 四 店務役割 第四章 明治期における正野玄三家の家則と店則 一 明治一四年七月「大坂支店規則書」 二 明治二一年九月「家則創定ノ主意」 三 明治二四年七月「支店規則」 四 明治三五年一月「家則」 第五章 吉村儀兵衛家と酒造業 一 吉村一族と儀兵衛家 二 五郎左衛門家と酒造業 三 関東酒造業への進出 四 関東での酒造経営の拡大 五 関東酒造業と小谷村 第六章 吉村儀兵衛家の本店経営 一 創業期の経営 二 酒造経営の本格的展開 三 安政四年以降の経営動向 第七章 吉村儀兵衛家の出店経営 一 下妻店 二 上ノ店 三 鷲巣店 四 恩名店・境店 五 柿岡店 六 横堀店 七 下館店 第八章 吉村儀兵衛家の雇用形態 一 出店の「御宗旨人別書」と儀右衛門家 二 小谷村の「宗門御改帳」と儀兵衛家 三 奉公人請状 四 店則と雇用 五 日野商人組合と吉村儀兵衛家 六 在所登り制度 七 給金 八 個別奉公人の動向――退職理由を中心に 第九章 高井作右衛門家の経営 T 江戸時代の経営 一 酒造業 二 質屋業 三 貸付業 四 雇用形態 五 事業内容と利益構成 六 災害と施行 U 明治・大正期の経営 一 酒造 二 雇用形態 三 事業内容と利益構成 四 資産動向 第一〇章 日野商人の特性 一 日野椀と合薬 二 大当番仲間 三 千両店と多店舗展開 四 製造部門の包摂 結 論 ◎あとがき/索引 ◎上村雅洋(うえむら まさひろ)……1951年大阪市生まれ 大阪大学大学院経済学研究科博士課程単位修得 現在、和歌山大学経済学部教授 博士(経済学) 著者の関連書籍 上村雅洋著 近江商人の経営史 和歌山大学 紀州経済史文化史研究所編 和歌の浦〈その原像を求めて〉 |
|||||
ISBN978-4-7924-1019-3 C3021 (2014.8) A5判 上製本 358頁 本体8,500円 | |||||
酒造業に従事した近江商人たちの足跡 |
|||||
近江商人は、近江国の中でも、湖東三郡に本拠地を置く者が多く、八幡商人・日野商人・五個荘商人によって代表される。これ以外にも高島商人や愛知川商人、あるいは湖東商人などとして把握される商人もおり、その活躍が知られている。しかし、なかでも八幡・日野・五個荘の三地域の商人は、その集中度および関連性が高く、これらの三地域の商人は、業種・支店網・活動年代などを少しずつ異にし、それぞれ特徴的な近江商人像を描いている
。 その中でも、日野商人は、日野椀・漆器類・合薬などを持ち下り商品として、八幡商人より少し活動の時期が遅れるものの、活動範囲は広く、人数・出店が多く、大当番仲間などの商人仲間の結束が見られたこと、活動舞台の中心が関東を中心として東北・東海道・中山道・京都・大坂にかけてであること、業種は単なる商品販売だけでなく酒・醤油の醸造・販売が見られたことが、その特徴としてあげられてきた。 本書の目的は、日野商人である売薬業を営んだ正野玄三家、酒造業を営んだ吉村儀兵衛家・高井作右衛門家を事例に、その経営実態を把握し、日野商人としての経営特性を明らかにすることである。 日野商人の多くが酒造業に進出するにいたった理由、どうして北関東を中心として全国に活動の舞台を広げ、事業を展開したのかにはじまり、多店舗展開・大当番仲間・雇用形態の特徴・近代化の中での近江の本家との関係を軸に分析していく。 日野商人において見られた諸特性は、決して近江商人の定義である「近江国に本拠地をおく、他国稼ぎ商人」から派生する近江商人の特性という枠組みを大きく逸脱するものではなく、特性も、酒造業・合薬などの商品特性(製造部門の包摂)・業種に起因するものであったことを明らかにする。 本書は、前書『近江商人の経営史』と同じ清文堂出版から姉妹編のような形で刊行する。今後の近江商人研究に寄与できればと願っている。ご一読、ご批評いただければ幸いである。 |
|||||
(上村雅洋) |
|||||
※所属・肩書き等は、本書刊行時のものです。 |