■論集 古代語の研究 | |||||
蜂矢真郷編 | |||||
上代語から中古語を中心とし、近代語との接点である中世語とつながる「古代語」についての最新の研究成果。「古代語の語構成・文法・語彙」「古代漢字文献」という二つの分野から考える。 ■本書の構成 第一部 古代語の語構成・文法・語彙 動詞の活用の成立 ―木田章義氏「二段古形説」をめぐって― ………… 中部大学 蜂矢真郷 “動詞の活用の成立”についての諸説/動詞と派生形容詞との関係/修正二段古形説/考察の結果と残る問題 『日本語歴史コーパス』を利用したジャンル別特徴語の抽出とその周辺 ………… 大阪国際大学 村田菜穂子 はじめに/『日本語歴史コーパス』の「本文種別」と「ジャンル」を用いた分析/ジャンルごとの特徴語について/おわりに ミ語法における節の形成と意味 ………… 成城大学 竹内史郎 はじめに/動詞連用形節からの類推による状態性述語文の従属節化/節の意味/おわりに ナを伴う二音節化名詞 ………… 相愛大学(非) 蜂矢真弓 はじめに/ワナ〔羂〕・ハナ〔端〕・エナ〔胞衣・胎衣〕/スナ〔砂・沙〕・コナ〔粉〕/スナゴ〔砂子〕・コナカキ〔餗・糝〕の異分布/複合語の前項部の場合におけるコの同音衝突/単独の場合におけるコの同音衝突/複合語の後項部の場合におけるコの同音衝突/まとめ 上代・中古の動詞「~カフ」・「~ガフ」 ………… 中部大学(DC) 中垣徳子 はじめに/本来型のもの/動詞カフ(交・差・替)を伴うもの/動詞カフが接尾語化・濁音化したもの/その他のもに/おわりに 第二部 古代漢字文献 『日本書紀』における高句麗、百済、新羅の官職名 ………… 釜山大学校 柳玟和 はじめに/高句麗の官職名/百済の官職名/新羅の官職名/おわりに 前田本『日本書紀』の日・朝固有名詞の声点について ………… 釜山大学校 朴美賢 はじめに/前田本『日本書紀』の日・朝固有名詞の概要/中国中古音との対応関係/日本呉音・日本漢音との対応関係/日・朝固有名詞の共通の漢字の声点/結論 『日本書紀』の分注 ―〈倭義注〉とその偏在から考える― ………… 京都精華大学 是澤範三 はじめに/倭義注の定位1/倭義注の定位2/おわりに 『日本書記』古訓「ウカラ」「ヤカラ」考 ………… 京都産業大学 金紋敬 はじめに/古訓「ウカラ」の用例とその意味/古訓「ヤカラ」の用例とその意味/おわりに 御巫本『日本書紀私記』の和訓の系統 ―一峯本との関係を中心に― 神戸女子大学(非) 山口真輝 はじめに/書紀古訓との比較/御巫本と一峯本和訓の近似性/複数訓から見た御巫本と一峯本との関係/まとめ 「五国史」宣命の「之」字 ………… 長崎大学 池田幸恵 はじめに/宣命体文献における「之」字/上代文献における「之」字の用法/続日本紀宣命の「之」字/日本後紀宣命から文徳実録宣命の「之」字/三代実録宣命の「之」字 変体漢文における不読字 ―段落標示用法を中心に― ………… 東京大学 田中草大 はじめに/変体漢文における不読字二類/段落標示用法の「矣」の消長/段落標示用法の「矣/焉」「焉/矣」の消長/出自など/おわりに 『和名類聚抄』の「玉類」項について ………… 同志社女子大学 吉野政治 はじめに/「玉類」という項目立て/『和名類聚抄』と『広雅』との一致と不一致/「玉」と「珠」/「水精」と「火精」/「雲母」と「玫瑰」/おわりに ◎蜂矢真郷教授略歴・論著目録 ◎蜂矢真郷(はちや まさと)……1946年岐阜県生まれ 京都大学文学部卒業・同志社大学大学院文学研究科修士課程修了 現在、中部大学教授(人文学部)・大阪大学名誉教授 著者の関連書籍 蜂矢真郷著 古代語形容詞の研究 ◎おしらせ◎ 『日本語の研究』第13巻4号(2017年10月号)に新刊紹介が掲載されました。 |
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ISBN978-4-7924-1063-6 C3081 (2017.3) A5判 上製本 326頁 本体9,200円 | |||||
刊行に当たって |
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何年か前に日本語ブームだと言われたりしたことがあったが、その時に、古代語は、よくとり挙げられたと言えるようでは必ずしもなかった。しかし、ブームであろうがなかろうが、古代語の重要性も、その研究の重要性も変わってはいないと考えている。近年、現代語に比べて、古代語が振り返られることが少なくなってきたのではないかと恐れてもいる。ここに言う古代語は、上代語から中古語を中心とし、近代語との接点である中世語とつながるものでもある。 ここに、『論集 古代語の研究』を編むに当たり、一言記しておく。 この企画は、私が、二〇一六年の夏に七〇歳になること、そして、それに伴ってのことであるが、二〇一七年に二度目の定年を迎える予定であることが、言わば一つの契機であったものである。 幸いにも、池田幸恵(長崎大学)・是澤範三(京都精華大学)・竹内史郎(成城大学)の三氏の、委員としての強い協力があり、大阪大学・奈良女子大学などで私が教えた人を中心とする何人かに呼びかけてくれて、このような形になることになった。私の他の執筆者の中には、教えた人ではない人もいるし、教えたことはあるけれども中心的に指導したのではない人も何人かいる。「古代語」とした関係で、声をかけなかった人も複数いる。必ずしも多い人数ではないけれども、徒らに人を多くすることは避けた。これはこれで一つの形であると思っている。また、記念論集と銘打つこともしなかったが、ただ、末尾に付した私の略歴・論著目録がその痕跡である。 編集に当たって、掲載論文の配列をどうするかについては、それぞれの幅が広いのでまとめ方が難しかったが、委員がいろいろ考えてくれて、「古代語の語構成・文法・語彙」「古代漢字文献」という二つの分野に分ける形になった。そうなってから考えてみれば、これまで私が最も中心的に研究してきた語構成は文法と語彙との境界領域に当たる分野であり、日本書紀などは授業でよくとり挙げてきた文献であるので(私自身は、興味を持ちつつも、直接日本書紀に関する論文を書いたことがないけれども)、これは、私にとっても、また、「古代語の研究」にとっても、一つのあり方であると言えよう。 ここに収めた「古代語の語構成・文法・語彙」五篇、「古代漢字文献」八篇のそれぞれの論文は、いずれも、現段階で最新の内容であり、そして、これからの古代語の研究にとって不可欠の存在になるものであると確信している。御一読、御高評賜れば幸いである。 先のことは無論不明であるが、いつかまた何らかの形でこのようなことができればとも思う。それまで、元気でいたいとも思っている。 そして、この論集に集(つど)った人達のそれぞれの研究がますます発展し、古代語がどのようであるかがさらに明らかになって行くことを祈りたい。 |
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蜂矢真郷 | |||||
※所属・肩書き等は、本書刊行時のものです。 |