■新版 国訴と百姓一揆の研究
藪田 貫 著


合法か非合法かで分類されがちだった国訴と百姓一揆に関し、「頼み証文」における委任の論理から近代代議制の萌芽を双方に見出す一方、一揆の典型的なイメージとして語られがちな「竹槍蓆旗」像は自由民権運動期の虚像で、幕末期を除いて一揆は殺傷のための道具は携行していなかったとする。初版刊行当時の熱気溢れる書評を掲載しつつ、1990年代に一世を風靡した名著が甦る。



■本書の構成

 新版 まえがき
 序章 本書の課題と方法

前篇 国訴の研究

 第一章 国訴の再検討 ―支配国と地域経済―
 第二章 国訴の構造
 第三章 国訴の負担と村
 第四章 国訴と郡中議定

後篇 百姓一揆の研究

 第一章 得物・鳴物・打物
 第二章 百姓一揆と得物
 第三章 百姓一揆の構造 ―国訴とかかわって―
 第四章 「竹槍蓆旗」論 ―自由民権期の百姓一揆観―

 終章 近代化と国訴・百姓一揆 ―近代成立期の民衆運動と地域社会・国家―

 付論 地域史研究の立場
 〔補遺―本書への批判・コメント―〕
 あとがき/新版 あとがき/索引




  ◎藪田 貫(やぶた ゆたか)……1948年生まれ 兵庫県立歴史博物館長・関西大学名誉教授




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ISBN978-4-7924-1047-6 C3021  (2016.4) A5判 上製本 428頁 本体9,600円

  『国訴と百姓一揆の研究』新版にあたって


藪田 貫  

 いまごろ、二〇年前の著書の新版をだすのはなぜか? そう問われると答えに窮するが、再版を思い立った大きな理由は、旧版が古本市場で一万円を超えていると聞いてショックを受けたことにある。実際、ネットで探して入手してみたが、価格は一万三千円であった。これでは誰も、買って読みはしないではないか? 出版から二〇年経っているが、再版できないものだろうか、と考え、まず浮かんだのはオンデマンドでの出版。そこで、出版元の校倉書房に打診したが、「その予定はないが、別の出版社で新版を出すことは了解する」、という返事であった。ならば―と日頃、お世話になっている清文堂出版に相談したところ、快諾され、一気に、新版の出版へと事が運んだ。

 しかし、旧版とまったく同じものを、出版社が代わっただけで、新版として出すのも気が引ける。どこに新味を出すか?何か書き下ろしを付けるか、それとも国訴の史料編を付け足すか、などアイデアは浮かんだが、その準備はまったくできていない。万策尽きたところで思い浮かんだのは、旧版に寄せられた書評を掲載するという苦肉の策である。幸いなことに、青木美智男・平川新・久留島浩・渡辺尚志といった錚々たる研究者が、批評を書いてくれている。読んでみると、どれもこれも真剣な批評を加えており、しかも共通した部分に批判が及んでいる。自分の思い描いた画像に、大きく修正が加えられているという印象を強く持った。しかも、そのひとつひとつの批判は、のちに旧版に与えられた、やや定式化された評価とは異なって臨場感がたいへん強い。旧版がまだ「生きていた」二〇年前の雰囲気を、書評は伝えている。

 こうして新版『国訴と百姓一揆の研究』は、わたしの構想し、解明した本編部分に、刊行前後に寄せられた批評からなる補遺が付くという形になった。わたしの研究がどういうものであるかはもちろん、当時、どう理解されたか、あるいはどこが評価され、どこが批判されたのか、を読み取ると共に、それが、その後、定式化される研究史上の位置づけとどう異なるのか、について理解されるなら、二〇年余ぶりに新版を出す意味があるといえるだろう。


※所属・肩書き等は、本書刊行時のものです。