吉崎御坊願慶寺文書
清文堂史料叢書第113刊
北西 弘 編著

◆本書の構成

吉崎御坊願慶寺略史

吉崎御坊願慶寺文書
延寳五巳年 山上一件公訴江戸御坊日記之写
関東江書上之御由緒書写 全
粟津家蔵記写之 延寳年中山上一件記
文化六年諸散物請拂勘定帳
願慶寺蔵一紙文書
天保四年八月順正坊 速成坊宛口上覚/松井外記伝書/本願寺家老廻状写/蓮如上人消息/寳暦十年三月沙汰書/十一月沙汰書/享保六年八月家老添状/公儀上金に関する家老沙汰書/福井御坊輪番長覚寺口演/寛保元年三月発給 吉崎御坊再建ニ付本願寺家老沙汰書/下間治部卿沙汰書/蓮如上人三百五十回忌沙汰書/享保二十年本願寺坊官沙汰書/東本願寺坊官沙汰書/明和五年九月坊官覚書/願慶寺同行口上書写/文政八年八月十六日 願慶寺十五日講中宛 達如消息/願慶寺惣同行口上書/惣代金津米屋口上書 他 計27点

願慶寺第六代祐成筆 諸文書写
覚/寛保元年坊官達書(御坊建立講取立)/坊官達書/福井輪番長覚寺書状/願慶寺同行惣代願書/文化四年十一月 坊官達書/道中手形/表具届覚書/天和二年七月 願慶寺寺号御印書/正保四年 木仏本尊下附添状/三十人衆惣中宛 前波与七郎吉明達書@A/卅人中宛 下間按察法橋頼龍達書/天正八年五月十六日 下間頼龍書状/越前卅人衆中宛 横田修理進重恒返書/蓮如上人御書/願慶寺門徒連署一札/願慶寺宛 福井御坊輪番常徳寺折紙/天保八年二月願慶寺歎願覚/吉崎御坊再建坊官達書/明治四十五年彰如上人消息/大聖寺領分同行宛 坊官達書/文政七年十月願慶寺願書(宝物弘通之儀)/宝物爲拜口上之覚/太政官触副紙/吉崎山上本尊三名號略縁記/見玉尼公御似影略縁記/聖徳太子真作阿弥陀如来尊像縁記 他 計37点

願慶寺蔵日記記録目録

諸散物請拂勘定帳目録



著者の関連書籍
北西 弘編・木谷藤右衛門家文書


北西 弘編著・能登阿岸本誓寺文書


ISBN4-7924-0600-5 C3021 (2005.10) A5 判 上製本 244頁 本体7000円
北西 弘 編著 『吉崎御坊願慶寺文書』への期待
大谷大学教授 草野顕之
 北西弘先生の編著になる『吉崎御坊願慶寺文書』が発刊される運びとなった。
 願慶寺は「吉崎御坊」との呼称から知られるように、福井県あわら市吉崎に所在し、本願寺第八代蓮如上人による北陸教化の拠点「吉崎坊」の伝統を継承する寺院である。本書は同寺に伝えられた数多くの古文書・古記録類を整理し、そのうち重要な文書・記録を精選して刊行されるものであるという。
 編著者である北西先生は一向一揆研究者として知られているが、同時に日本古文書学会の役員を長く努められたことからもわかるように、古文書学の泰斗であり、ことに真宗古文書についての造詣が深い。これまでも、『能登阿岸本誓寺文書』を始め、『本願寺文書』『真宗史料集成 第三巻』『金沢別院史 下』『金沢専光寺文書』『東本願寺近代史料』など良質な真宗史料集を数多く手がけられ、斯学の進展に大いに寄与してこられた。今回、そのなかに新たな史料集が加わることになったことは、真宗史研究の末席につらなる者として大きな喜びであり、大きな期待を喚起させられるものである。
 本書に選び出された願慶寺文書・記録の性格は、大別して四つに分かれている。まず、願慶寺の寺史・伝承に関するもの、次に吉崎坊旧跡である吉崎山上確保問題に関するもの、さらに東本願寺掛所問題に関するもの、最後に願慶寺の経済に関するものである。これらの文書・記録を形態別に冊子と一紙文書に分け、まず『延寳五巳年 山上一件公訴江戸御坊日記之写』など四点の冊子、次いで『天保四年八月順正坊 速成坊宛口上覚』など六四点の一紙文書が収載される。本書が刊行されることで、蓮如上人退出以後の吉崎の動向が詳しく知られるとともに、近世における真宗史跡がもった意味や、真宗教団における「御坊」の形成過程、あるいは近世寺院経済の諸問題など、さまざまな新しい視点からの研究が生まれることになろう。
 願慶寺は、蓮如上人に帰依し吉崎参詣を繰り返す嫁を威すために、姑がかぶったという「嫁威肉附面」を所蔵していることでも著名である。北西先生は、この伝承を歴史心理学的に分析した研究書を、本書の別冊として準備されているとも聞く。『吉崎御坊願慶寺文書』とともに、一刻も早く手にすることができるよう願っている。
※所属・肩書き等は、本書刊行時のものです。