大山祇神社連歌の国語学的研究
今野真二著


個性豊かで具体性を備えた連歌懐紙である「大山祇神社連歌」の観察を通して、室町期の日本語のさまざまな面に関わる言語情報を、豊富な例示とともに考察する。


本書の構成


序章 国語史資料としての大山祇神社連歌
  第一節 文献資料の具体性と一般性と
  第二節 連歌作品の特殊性と一般性と
  第三節 「連歌の文法」について

第一章 大山祇神社連歌の概観
  第一節 大山祇神社の概要
  第二節 大山祇神社連歌の概要

第二章 大山祇神社連歌を音韻資料としてみる
  第一節 母音について
  第二節 音韻に関わるその他のことがら
  第三節 「四つがな」について
  第四節 「開合」について

第三章 大山祇神社連歌の語彙
  第一節 漢語/字音語の使用
  第二節 百韻に使用される語
  第三節 本連歌で使用された『日葡辞書』の詩歌語
  第四節 連歌語彙と賦物と

第四章 大山祇神社連歌の表記
  第一節 重点の使用
  第二節 仮名文字遣
  第三節 かなづかい
  第四節 漢字と仮名とによる表記
  第五節 漢  字

終章 連歌世界のひろがり
  第一節 連歌と『万葉集』と
  第二節 連歌と『源氏物語』
(註釈)
  第三節 連歌と『仮名文字遣』と
  第四節 連歌と『節用集』と




  著者の関連書籍
  今野真二著 仮名表記論攷

  今野真二著 日本語学講座全10巻



ISBN978-4-7924-0681-3 C3081 (2009.8) A5判 上製本 604頁 本体13,500円
 稿者が大山祇神社連歌のことを知ったのは、一九八四年一月に修士論文「連歌書のかなづかい」を提出した直後ぐらいのことであったと記憶する。大山祇神社連歌について知るに到った経緯については、本書中ですでに述べているので繰り返さないが、一年ほどの間に『愛媛大学古典叢刊3・4』(八四〇〇句分相当)に基づく初度の翻字を終えた。この連歌を翻字するために、翻字しやすい形式の原稿用紙を手刷りで印刷した。今もその折の翻字原稿は手元にあるが、表紙は劣化し、ぼろぼろになっている。原稿は、本書で述べたように、論文をまとめようとする度に、影印と対照して見直し、訂正を施し続けたので、山田忠雄の手による朱の訂正の他にも、少なくない修正の跡を残している。
 言語分析のために「わるい文献」というものはないと考えるが、(ほれぼれするような)「いい文献」というものはある。そうしたものに出会えるというのもやはり何かの縁で、幸せなことであると思うが、大山祇神社連歌はそのような文献であることが分析を重ねれば重ねるほど実感される。それが本書によって少しでも伝えられていれば、と思う。
 さまざまな方のご尽力によって、一九八九年八月二日に大山祇神社連歌の原懐紙の披見がかなった。夏の暑い日で、大山祇神社の境内には蝉の声が鳴り響き、地面には蝉がいたるところに落ちていた。その夏の日からほぼ二十年が経ったことになる。この二十年には、稿者個人にとってもさまざまなことがあったが、今は、大山祇神社連歌を紹介する本書を書き終えることができてよかったという安堵感のようなものを感じながら、静かな気持ちでいる。                       (本書あとがきより抜粋)

※所属・肩書き等は、本書刊行時のものです。