■明治維新を読みなおす | |||||
同時代の視点から | |||||
青山忠正著 | |||||
明治維新の本質を、幕末(結果としての幕府の瓦解があったからこその表現であり、この当時の人間がそう認識していたわけではない)の政治課題がどのような内容と歴史的意味をもって立ち現れてきたのか、後世のフィルターではなく当時の当事者の認識に立ち戻って、それを全国統一政府の成立と東アジア世界との訣別のなかで新たな政治体制として作り上げていく動きとして、長期の時系列のなかに捉える。 ■本書の構成 序章 近世から近代へ―何がどう変わるのか― T 政争のなかの戦い 第一章 通商条約の勅許と天皇 第二章 功山寺決起と高杉晋作 第三章 佐幕か、倒幕か、幕末各藩の動向 第四章 国際社会のなかの戊辰戦争 U 造型される人物 第五章 将軍継嗣問題の実情 第六章 江戸無血開城の真相―天璋院篤姫― 第七章 龍馬と薩長盟約 第八章 「竜馬」を史料学の視点から見てみよう 第九章 志士を突き動かした時代のエネルギー 第十章 天皇が見える V 暗殺の構図 第十一章 井伊直弼 第十二章 横井小楠 第十三章 大村益次郎 W 明治国家を作り出す 第十四章 全国統一政府の成立 第十五章 東アジアとの確執と訣別 コラム 太陽暦の採用 第十六章 自由民権運動と大日本帝国憲法 あとがき ◎青山忠正(あおやま・ただまさ) 1950年 東京都生まれ 佛教大学歴史学部教授 電子書籍はこちらから 著者の関連書籍 青山忠正著 明治維新の言語と史料 ◎毎日新聞 全国版 今週の本棚・新刊に本書の紹介が掲載されました(2017年3月5日) |
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ISBN978-4-7924-1066-7 C0021 (2017.2) 四六判 並製本 228頁 本体1,700円 | |||||
維新史を描き直す ―青山忠正著『明治維新を読みなおす―同時代の視点から―』― |
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筑波大学人文社会系教授 浪川健治 |
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歴史は、時間と空間のなかに創り出される。歴史は人間の生活と社会とを主たる考察対象とするが、それに関わる自然環境なども含めて、それらがどのように時間的に変遷したかを明らかにする。それだけに、歴史そのものも、またその歴史を認識・考察する手がかり(それらは史料と呼ばれる)も、対象や時代、さらには地域=空間などが影響して多様である。 青山忠正氏は、言説化している維新研究につねに批判的な学問姿勢をもって、その歴史的な本質を説き起こしてきた。この度、清文堂から刊行された『明治維新を読みなおす―同時代の視点から―』は、そうした青山氏が、二〇一〇年以降に折に触れ発表した成果を再構成して世に問うものである。青山氏は「あとがき」のなかで、「十九世紀半ばの事象をみるのに、近現代の言語的あるいは文化的な前提を踏まえてはいけない」と述べている。このことは、別の言葉を借りれば、維新史理解の方法としての「言葉」と「史料学」ということであろう。「近世から近代ヘ―何かどう変わるのか―」と題された序章は、「四字熟語の世界から脱出しよう」という、いわば呼びかけから始まり、第一章では「近代の言葉で考えてはいけない」と展開していく。つまり、歴史事象が言説化されると、逆にその言説化された尺度で歴史を意味づけてしまうことへの鋭い警句から、維新史が説き起こされる。 この本では、一八五八年(安政五)の通商条約の勅許の問題から一八八九年(明治二二)の憲法制定、そして一八九〇年(明治二三)の帝国議会開設にまで考察がなされている。一八世紀中期からの社会変動としての「内憂」は、「外圧」「外患」と一体化した危機となることによって領主支配の根底、近世国家の原則は大きく揺らぐことになる。明治維新が明確に、いつからいつまでなのか、ではなく、その本質を、幕末(結果としての幕府の瓦解があったからこその表現であり、この当時の人間がそう認識していたわけではない)の政治課題がどのような内容と歴史的意味をもって立ち現れてきたのか、それを全国統一政府の成立と東アジア世界との決別のなかで新たな政治体制として作り上げていく動きとして、長期の時系列のなかに捉えようとするのが青山氏の維新史研究の目指すものであろう。 本書のなかに青山忠正氏の維新史研究の関心を端的に、そして的確に示すコンセプトをさがせば、「内憂」「外患」から「富国強兵」「脱亜入欧」へということであろう。それは、すでに使い古された言葉のように思われるが、その言葉が発せられたその時代においてもった意味と歴史性を掘り起こしていくことこそが重要であることをこの書から知ることができる。変動する東アジア世界との関わり、異民族接触―異文化理解、人・モノ・情報の流動化がもたらすシステムの変容という視点に軸足をおいてつぶさに見ていけば、“国”としての日本だけではなく、この長期の時系列のなかで、“列島弧”に生きた多様な人間と社会が内包した様々な可能性を、政治史を通じての歴史・文化として描きだすことができるだろう。新しい維新史の方法を、その時代のなかに探る青山氏の問いかけをどのように受け止めていくのか、本書を通じて多くの方々に感じてもらいたい。 |
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※所属・肩書き等は、本書刊行時のものです。 |