■デザインの諸相 | |||||
ポンティ・茶室・建築 | |||||
妻木宣嗣著 | |||||
デザインとはなにか? メルロ=ポンティの身体性を手掛かりに、明確な定義のない「デザイン」という言葉を概念化する試み。 ■本書の構成 第一部 デザインの概念 0.はじめのはじまり 1.はじめに 2「自己の身体の空間性、および運動性」など 3.知覚の主体とはどういうものか 4.感覚作用と振舞との関係、実存の様式の具象化としての性質、共存としての感覚作用 5.感覚的なものに捉えられた意識 6.諸「感官」の一般性と特殊性、感官は「領野」である 7.感官の多数性、いかにして主知主義はこの多数性を超出するか、またそれは経験主義に対していかなる正当性をもっているか、それにもかかわらず反省的分析は抽象性にとどまっておること、アプリオリなものと経験的なもの 8.各感官はその「世界」をもつ 9.諸感官の連絡、諸感官に「先だつ」感覚すること、共感覚 10.諸感官は両眼視における単眼視像のように相互に区別可能であると同時に区別不可能である。身体による諸感官の統一 11.世界の一般的象徴作用としての身体 12.人間とは共通感官である 13.知覚的総合は時間的である 14.反省とは非反省的なものの再発見である 15.ポンティとデザイン 16.経験と客観的思惟、身体の問題 17.ポンティとデザイン 18.デザインの定義 19.まとめと今後の課題 20.おわりに 第二部 身体感覚と空間 1.身体感覚と空間 2.外部でも内部でもない空間(気配の空間として) 3. 終章 第三部 プラクティカル・アートと建築 1.はじめに 2.歴史・系譜・継承 3.20世紀後半からの混沌 4.名声とエゴ(洒落)と正当性 5.岐路にたつ建築家 6.系譜・継承・歴史 7.建築教育のジレンマ 8.道具と建築 9.オリジナルはだめなのか? 10.おわりに ◎妻木宣嗣(つまき のりつぐ)1969年生まれ 大阪工業大学ロボティスク&デザイン工学部准教授 主要著書に『近世の建築・法令・社会』、『生態学的建築史試論』など 著者の関連書籍 妻木宣嗣著 ことば・ロジック・デザイン 藪田 貫編 近世の畿内と西国 妻木宣嗣・曽我友良・橋本孝成著 近世の法令と社会―萩藩の建築規制と武家屋敷― 妻木宣嗣著 地域のなかの建築と人々 妻木宣嗣著 近世の建築・法令・社会 妻木宣嗣著 生態学的建築史試論 |
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ISBN978-4-7924-1475-7 C0070 (2021.2) A5判 並製本 235頁 本体4,500円 | |||||
筆者がポンティを知ったのは、工学系デザイン学科に配属された時期である(元々は工学部建築学科であった)。「デザイン」という言葉は、魅力的な言葉であるが、誰でも認識しているようで、三者三様、これといった明確な定義がないのがわかってきた。デザイン入門書のようなものならいくらでもあるが、何か違うような気がしながら、それでも何かないかと探していたところに、「デザインとはなにか」と自分で問いかけるようになった。知りたくなったのである。あるとき、電車に乗っているときだったと思うが、感覚とか知覚とかを追えば、なにか手がかりになるものがあるような気がした。そう思っている時に、本屋でM.ポンティを知ったのである。したがって本書は、ポンティ哲学の概説書ではなく、ポンティを通してみたデザイン概念の一端を見いだすことを第一の目的としている。ポンティの専門家から言わせれば、「全くポンティをわかっていない」と叱責されるのは当然だが、どうしても、ポンティからみたデザイン概念を追ってみたかったのが正直なところである。皮肉なもので、概念的な「デザインとはなにか」についての議論には曖昧なデザイナーが大多数である。第二部では、ポンティのいう「共感覚的体験」から日本建築(特に数寄屋・茶室)の空間性について述べ、第三部で、第一部、第二部を踏まえて近代~現代建築を論じ、これからの建築の在り方について考察した。すなわち、本書はポンティからみたデザインの概念定義を志すものである。 |
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(妻木宣嗣) | |||||
※所属・肩書き等は、本書刊行時のものです。 |