■日本における市場と権力の社会経済史 | |||||
比較市場史試論 | |||||
原田政美著 | |||||
![]() ■本書の構成 第一章 日本中世市場における権力と商人 ―比較史試論― 課題設定/古代/中世/おわりに 第二章 中世における市場税と市場開設 はじめに/西欧中世における市場税と市場開設権/日本中世における市場税と市場開設/おわりに 第三章 近世江戸城下町における権力と魚問屋 ―徳川幕府と新肴場の開設― 課題設定/魚類の価格問題と幕府の政策/新肴場の開設/おわりに 第四章 近世江戸城下町における四組肴問屋仲間の成立 はじめに/魚問屋の成立と成長/古法式の成立年に関する先行研究/古法式の成立年に関する検討/古法式の歴史的意義/おわりに 第五章 徳川権力と魚問屋 ―御肴納入制度の展開― はじめに/御肴納入の請負制/御肴役所の設置と直買制/御肴納入に対する問屋の抵抗と負担の平等化の試み/おわりに 第六章 近世日本橋魚市場における肴問屋仲間の解散と再興 ―徳川権力と魚問屋― はじめに/肴問屋仲間の歴史的性格/肴問屋仲間の解散と「仮御仕法」/肴問屋仲間の再興/おわりに 第七章 日本における卸売市場制度成立史 ―仏・英・独を参照事例とする日本の卸売市場制度成立に関する比較史試論― はじめに/国法市場法と公設制/取引規制/おわりに 原田政美(はらだ まさみ)…………1954年愛知県生まれ 同志社大学商学研究科商学専攻博士後期課程修了 福井県立大学経済学部教授をへて、現在、敦賀市立看護大学教授 著者の関連書籍 原田政美編 日本とアジアの市場の歴史 ―市場と流通の社会史 第Ⅱ巻― |
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ISBN978-4-7924-1532-7 C3021 (2024.3) A5判 上製本 266頁 本体6,800円 | |||||
本書は、日本の市場の歴史に関して、これまで書きためてきたもののうち、権力と市場との関係に注目して比較史の視点から執筆したものを集めたものである。 著者は、市場の歴史に関して、主として近代日本を主要な研究フィールドとしてきた。ところが、日本近代のみを対象として研究を行っていると、その時代の歴史的事実に制約されて、近代日本の市場に対する認識が、果たしてどこまで妥当なものであるのか、疑念を抱くようになった。そのため二〇〇一年頃より、比較対象としてイギリス市場史を研究の対象に加えることにした。 その過程で、日本とイギリスあるいは日本と西欧の市場の歴史に関して、両者の間に大きな違いがあることに気が付いた。その一つが市場開設権の歴史上の存在の有無であった。イギリスは、西欧世界において中世に出現した市場開設権が、現在に至るまで存続する、ほぼ唯一の国である。その中でも歴史上あるいは実態上、ロンドンの市場開設権はロンドン市自治体にとって重要な役割を果たしてきた。 それに対して、日本の歴史において市場開設権は出現しなかった。日本では中世において権力が市場商人に対して税を賦課することにより、その営業を公認した。換言すれば、西欧中世では市場に関して特権つまり権利という法制度を生み出したのに対して、中世日本ではそのような権利を生み出すことなく、権力者が徴税を通じて市場商人の営業を公認したのである。 近世城下町では、市場商人は領主に対して取扱商品を優先的に納入することを義務付けられた。そのことにより、市場商人は営業が公認された。そのため、領主への納入を果たした後に、商人は初めて市中への販売が可能となった。このような納入制度は、近世日本に特有なものであった。本書では、日本最大の城下町である江戸を事例として、市場問屋による納入制度を具体的に検討する。それらの検討を経た上で、近代日本において生み出された中央卸売市場制度の歴史的特質を比較史的視点から明らかにする。 |
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(原田政美) |
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※所属・肩書き等は、本書刊行時のものです。 |