わかやまを学ぶ 紀州地域学 初歩の初歩
和歌山大学フィールドミュージアム叢書4
東 悦子・藤田和史 編


多くの受講生が押し掛ける人気講義をもとに編集。「わかやま」をフィールドとして調査・研究をすすめている執筆陣の研究成果を届ける。


■本書の構成

序 ………… 上村雅洋

総論 わかやまの反逆者たち
――追憶のSAYAKA ………… 海津一朗
    沙也可/雑賀衆 頭領鈴木孫一(雑賀孫市)/日本国成立の秘密

01 不老不死伝説徐福
――和歌山に来たのか ………… 王 妙発
    徐福は実在した人物/「不老不死の仙薬」を求めて日本にやってきたか?/和歌山に来たのか?/実は神武天皇?――仮説にとどまる

02 「道成寺建立縁起」考 ………… 大橋直義
    道成寺の縁起/「道成寺建立縁起」の淵源について/『縁起絵巻』のある風景をめぐって

03 大阪湾の「咽喉」
――加太・友ヶ島 ………… 坂本亮太
    船舶の往来と港町加太/加太・友ヶ島と瀬戸内海航路/加太・友ヶ島と南海航路/幕末期の海防と加太・友ヶ島

04 カール・ケッペンと和歌山
――地域から見直す日独交流史 ………… 小原 淳
    ケッペンとドイツ統一/和歌山の国民皆兵制/プロイセンと日本

05 南方熊楠と徳川頼倫 ………… 橋本唯子
    熊楠と頼倫1――イギリスにおける交流(南方熊楠 徳川頼倫)/熊楠と頼倫2――帰国後の交流/頼倫と日本近代図書館史(南葵文庫の創設 日本図書館協会総裁就任 第16回図書館大会(奈良・和歌山大会))

06 移民母県わかやま
――グローバルに移動した先人たち ………… 東 悦子
    グローバルに移動した人々/世界各地へ(ハワイへ 米国本土へ カナダへ オーストラリアへ ブラジルへ)/日系人と第二次世界大戦

07 紀州の鉱山 ………… 長廣利崇
    鉱山の歴史を学ぶ/徳川時代の産銅業(産銅産業の展開 熊野の銅輸出と生産 熊野床 禰宜銅山)/近現代の産銅業(明治期の紀州の銅山 石原産業の紀州鉱山の発展 戦時下の労働)/石炭鉱業(紀州の石炭鉱業 岩崎弥太郎と熊野炭田 薬師炭鉱)

08 わかやまの風土産業 ………… 藤田和史
    風土産業とは何か?/地域資源としてのシュロとその栽培/シュロの利用と家庭用品(近世の海南産地 近代以降の海南産地 第二次世界大戦後の海南産地)/風土産業の未来

09 東照社祭礼の創始と芸能
――和歌祭唐船・唐人を中心として ………… 吉村旭輝
    和歌祭の創始/和歌祭の特徴(渡物――田楽法師・御旗鉾 面被 練物――雑賀踊(風流踊))/和歌祭の唐物様――唐船と唐人

コラム 和歌山の干潟と干潟の役割 ………… 古賀庸憲

総論附録 ワダイの日本史 反逆者の紀州――和歌山大学の日本史入試問題(前期入試)より



東 悦子(ひがし えつこ)…………和歌山大学観光学部教授・和歌山大学紀州経済史文化史研究所長 専門は英語教育・移民研究
藤田和史(ふじた かずふみ)…………和歌山大学経済学部准教授・和歌山大学岸和田サテライト長 専門は人文地理学



 和歌山大学フィールドミュージアム叢書1
 海津一朗編 中世終焉 秀吉の太田城水攻めを考える

 和歌山大学フィールドミュージアム叢書2
 和歌浦天満宮の世界

 和歌山大学フィールドミュージアム叢書3
 和歌の浦 その原像を求めて




ISBN978-4-7924-1070-4 C0321  (2017.3) 四六判 並製本 191頁 本体1,800円

     奥深い地域の魅力を市民へ

 本書のタイトルとなっている「わかやまを学ぶ」は、和歌山大学紀州経済史文化史研究所がコーディネイトしている教養科目「わかやまを学ぶ」が母体となっている。

 紀州経済史文化史研究所で、教養科目として開講することになったのは、本研究所の今後の発展の方向性をどこに求めるのかという議論が持ち上がったことに始まる。その際に、全学的な教育部門へどのような貢献ができるかが課題となった。それには、本研究所の特徴である紀州地域学の研究を生かした教養科目の開設が一つの方法ではないかと判断し、最終的に2013年度の教養科目として開講することが依頼された。こうした発案・構想には、本研究所の副所長であった故米田頼司先生の尽力によるところが大きかった。

 その趣旨は、次のようなものであった。和歌山大学の特性をアピールするために全学的な協力のもと、学内で「わかやま」をフィールドとして調査・研究を進めている諸先生の研究成果の一端を学生に提供する。本科目を受講することによって、和歌山大学の学生が、少しでも「わかやま」をよく知り、「わかやま」を発信できるようにする。そして、講義にあたっては、〔1時限(90分)完結のわかりやすい内容をもつものとする。概説・入門的なものではなく、それぞれが特論的なものとし、学問の深みを味わえるものとする。「わかやま」を素材にして、具体性を重視する。できるだけ、これまでの「わかやま」のイメージを一新する、「わかやま」の斬新さを探る内容とする。〕というものであった。

 幸いこれまで3年間の授業実施状況では、多くの受講生が押し寄せ、満足度も高く、本研究所の意図も達成されてきたようである。さらに、内容を受講生だけでなく、一般学生・市民にまで広く届けてほしいという強い意見も出た。

 そこで、こうした要望に応えるため、本書は、「わかやまを学ぶ」を講義して頂いた関係諸先生の内容だけでなく、今後の開講内容の充実・拡大を目指すものとして編集した。奥深い紀州地域の風土、文化、産業、歴史等々への遥かなる旅の出発点としていただけると幸いである。
※所属・肩書き等は、本書刊行時のものです。