抄物による室町時代語の研究
来田 隆著


表題にあるように本書は抄物資料によって室町時代語を解明しようとするものである。その内容は、第一部五山僧・博士家抄物のことば、第二部洞門抄物のことば、第三部語の諸相の三部構成となっている。従来、抄物研究といえば、京都五山・博士家系の抄物群を研究対象資料とするか、あるいは洞門禅籍抄物群を研究対象資料とするかいずれか一方に固定されてきた研究対象を著者は、同一の土俵上で捉えることに成功した。この広い視野からの研究は今後の室町時代語研究の新境地を拓く一書になるであろう。


■本書の構成
第1部 五山僧・博士家抄物のことば

第1章 抄物における「清(スム)」と「濁(ニゴル)」注記について
第2章 『湯山聯句抄』に於けるノ・ガの用法について
第3章 抄物に於けるシマウとシマスについて
第4章 一韓講『臨済録抄』のことば
第5章 ヰルとヲリ
    ヰルとヲリ/院政・鎌倉時代に於けるヰルとヲリ

第2部 洞門抄物のことば

第1章 資料と用語
    披雲閣文庫蔵『傑心祖菊和尚下語抄』について/洞門抄物『松平公益会蔵洞水逆流』について/広島大学蔵『竜州鈔暮』について/『真歇和尚拈古抄』の諸本とその言語

第2章 語法から見た洞門抄物
    文末表現から見た洞門抄物/条件句構成のウニハ続貂/洞門抄物に於けるホドニとニヨッテ

第3章 敬語法から見た洞門抄物
    敬語「おすなる」と洞門抄物/語頭濁音の「候」/洞門抄物に於けるゴザ(ア)ル・オリャルについて/禅籍抄物に於ける丁寧語ソロについて

第4章 禅籍抄物の語詞
    「情識」考/「ダルム」

第3部 語の諸相

第1章 ヒキイからヒクイへ
第2章 「ヤヲラ」と「ヤハリ」
第3章 「器量」と「器用」

付録 否定辞「無」を冠する漢語の音と意味

索引

来田 隆(きた たかし)……1942年香川県に生まれる。広島大学大学院文学研究科博士課程中途退学 現在、京都教育大学教授




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 来田 隆著 室町時代のことばと資料



ISBN4-7924-1372-9 (2001.11) A5 判 上製本 496頁 本体14,000円
※所属・肩書き等は、本書刊行時のものです。