近世東海地域史研究
本多隆成著




本書の構成

序 章 東海地域史研究の成果と課題

第一部 戦国・織豊期
第一章 戦国期の浅羽地域と小笠原氏
第二章 遠州大福寺領の 「代」 と加地子得分―有光説への疑問―
付論一 延徳二年岡本昌光売券の再検討
第三章 中・近世移行期の東海地域
付論二 天下統一

第二部 幕藩体制期
第四章 幕藩制成立期の代官と奉行人―彦坂九兵衛光正を中心に―
第五章 幕藩制成立期遠州森地域の検地と貢租
第六章 幕藩制成立期駿河中・西部の検地と貢租
付論三 駿州益津郡大覚寺村の近世初期検地
第七章 「東海道分間延絵図」作成の基礎調査
第八章 近世の小瀬戸村

終 章 東海地域の歴史的位置
   あとがき/索引




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ISBN978-4-7924-0646-2 C3021 (2008.1) A5 判 上製本 414頁 本体8800円
東海地域史研究に携わって 
静岡大学人文学部教授 本多隆成  
 中・近世移行期の東海地域史研究に携わるようになって、早いものでもう三〇年余りになる。当初、この地域の研究に取り組みはじめた際の問題意識は、主として次の二点であった。
 第一に、東海地域は今川氏・武田氏、そして徳川氏と、中・近世の移行期において重要な役割を果たした地域であったにもかかわらず、それまで本格的な研究が皆無に近い状況であったため、その克服をめざすこと、第二に、中世史研究と近世史研究とのいわゆる「断絶」とよばれた研究状況に対して、東海地域における基礎構造の検討を通じて一貫して明らかにすること、であった。
 ところで、私にとって東海地域とは、三河・遠江・駿河の三国を指している。中・近世移行期にあっては、この三国は一体として研究対象とすべきであるということは私の年来の主張であるが、この点は、時期区分をみると明らかである。
 すなわち、第一期は戦国期の今川氏の時代、第二期は今川氏滅亡後の初期徳川氏の時期、第三期は徳川氏の関東転封後の豊臣系大名の支配、そして第四期が幕藩体制の成立期、ということである。このうち、第三期まででみれば、織田・豊臣両氏の支配下にあった尾張以西と、小田原北条氏の支配下にあった伊豆以東とでは、明確に政治体制を異にしていたからである。
 こうして、この間の研究成果として、一九八九年に『近世初期社会の基礎構造』、二〇〇六年に『初期徳川氏の農村支配』を刊行してきた。今回は、まさに『近世東海地域史研究』と題した論文集を刊行することになった。内容は、前者の著書以後に発表してきたもので、後者の著書にかかわるものを除いた東海地域史関係の諸論文を、第一部戦国・織豊期、第二部幕藩体制期とに分けて編集したものである。
 主題の大きさに比べてはなはだ不十分なものではあるが、序章と終章とで、これまで追究してきた東海地域史研究について、前二著での成果をも含めて、現時点での私なりのまとめを行っている。近年の諸研究を、東海地域史という立場からはどのように受けとめることになるのかという観点から検討しているので、あわせてご批判・ご教示をいただければさいわいである。


 
※所属・肩書き等は、本書刊行時のものです。