■中世の人物 京・鎌倉の時代編 全三巻 | |||||
元木泰雄・野口 実・平 雅行 編 | |||||
第一巻 保元・平治の乱と平氏の栄華 元木泰雄編 京都大学大学院人間・環境学研究科教授 諸行無常の響あり。清盛の栄華を軸に、諸勢力の興亡を描く。 T鳥羽院政と保元の乱 鳥羽院・崇徳院 〜崇徳院政の夢〜 … 佐藤健治 藤原忠実 〜辛酸を嘗めて中世を切り開いた摂関家家長〜 … 佐古愛己 藤原頼長 〜苦闘する大学者〜 … 横内裕人 平 忠盛 〜都鄙で広がる京武者の舞台〜 … 守田逸人 源 為義 〜保元の乱における実像〜 … 須藤 聡 覚仁と信実 〜悪僧論〜 … 久野修義 阿多忠景と源為朝 〜その伝説と実像〜 … 栗林文夫 コラム 王家の乳母 … 野々村ゆかり U平治の乱と後白河院政の成立 後白河院 〜暗主の波乱万丈の生涯〜 … 高橋典幸 藤原忠通と基実 〜院政期摂関家のアンカー〜 … 樋口健太郎 信 西 〜中世を拓いた稀有の天才〜 … 木村真美子 藤原信頼・成親 〜平治の乱と鹿ケ谷事件〜 … 元木泰雄 藤原経宗 〜拷問を受けた有識の公卿〜 … 元木泰雄 源 義朝 〜最初の武士の棟梁〜 … 近藤好和 コラム 院と芸能者たち … 辻 浩和 V平氏の栄華 平 清盛 〜「おごれる」権力者の実像〜 … 川合 康 池禅尼と二位尼 〜平家の後家たち〜 … 栗山圭子 平時忠と信範 〜「日記の家」と武門平氏〜 … 松薗 斉 藤原邦綱とその娘たち 〜平清盛の盟友/近衛家の忠臣〜 … 佐伯智広 平 重盛 〜一門栄耀の反照〜 … 平藤 幸 西 行 〜秀郷流故実の継承者〜 … 近藤好和 コラム 京武者たち … 元木泰雄 編者の関連書籍 元木泰雄編 王朝の変容と武者〈古代の人物 第6巻〉 |
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ISBN978-4-7924-0994-4 C3321 (2014.3) A5判 上製本 422頁 本体4,500円 | |||||
書店様向け販売促進用パンフレット(PDFファイル) |
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第二巻 治承〜文治の内乱と鎌倉幕府の成立(第2回配本) 野口 実編 京都女子大学宗教・文化研究所教授 軍中は将軍の令を聞いて、天子の詔を聞かず。「天下草創」の激浪に翻弄された貴賤男女の群像を活写する。 T列島を覆う戦雲 源頼政と以仁王 〜摂津源氏一門の宿命〜 … 生駒孝臣 甲斐源氏 〜東国に成立したもう一つの「政権」〜 … 西川広平 木曾義仲 〜反乱軍としての成長と官軍への転換〜 … 長村祥知 源義経と範頼 〜平氏追討の戦い〜 … 宮田敬三 平 宗盛 〜悲運の武家の棟梁〜 … 田中大喜 平氏の新旧家人たち 〜相伝家人と門客〜 … 西村 隆 藤原秀衡 〜奥の御館と幕府構想〜 … 三好俊文 コラム 乳母と乳母子――頼朝と義仲 … 糟谷優美子 U鎌倉幕府の成立と東国武士 源 頼朝 〜天下草創の光と影〜 … 元木泰雄 大庭景親 〜石橋山合戦の平家方大将〜 … 森 幸夫 城助永と助職(長茂) 〜北越の「御館」武士〜 … 高橋一樹 千葉常胤 〜列島を転戦した清盛・西行と同い年の東国武士〜 … 野口 実 和田義盛と梶原景時 〜鎌倉幕府侍所成立の立役者たち〜 … 滑川敦子 北条時政と牧の方 〜豆駿の豪傑、源頼朝からの自立〜 … 落合義明 源 頼家 〜「暗君」像の打破〜 … 藤本頼人 コラム 九州の武士たち――原田種直・菊池隆直・緒方惟栄 … 清水 亮 V内乱期の女院・貴族と僧たち 八条院 〜〈鍾愛の女子〉の系譜〜 … 高松百香 藤原兼実 〜右大臣から内覧へ〜 … 高橋秀樹 源 通親 〜権力者に仕え続けた男の虚像〜 … 佐伯智広 法然と貞慶・明恵 〜仏教改革の群像〜 … 平 雅行 重 源 〜王法仏法の興隆をめざして〜 … 久野修義 栄 西 〜日本禅宗の原型〜 … 中尾良信 コラム 流人頼朝の側近たち――挙兵に加わった文官・神官 …下村周太郎 |
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ISBN978-4-7924-0995-1 C3321 (2014.6) A5判 上製本 436頁 本体4,500円 | |||||
第三巻 公武権力の変容と仏教界(第3回配本) 平 雅行編 大阪大学大学院文学研究科教授 T承久の乱と朝廷 後鳥羽院 〜万能の君の陥穽〜 … 美川 圭 九条道家 〜院政を布いた大殿〜 … 井上幸治 西園寺公経 〜当世の重臣、比肩すべき人無し、諸事思うがごときの人なり〜 … 山岡 瞳 藤原秀康 〜鎌倉前期の京武者と承久の乱〜 … 長村祥知 藤原定家 〜歌の切り棄て「かた腹いたや」〜 … 谷 昇 コラム 動揺する仁和寺御室 … 金 正文 U執権政治をめぐる群像 源 実朝 〜青年将軍の光と影〜 … 坂井孝一 北条政子 〜朦朧の御台所〜 … 黒嶋 敏 北条義時 〜義時朝臣天下を并呑す〜 … 田辺 旬 北条泰時 〜東西文化を融合させた宰相〜 … 菊池紳一 北条時房と重時 〜六波羅探題から連署へ〜 … 久保田和彦 九条頼経・頼嗣 〜棟梁にして棟梁にあらざる摂家将軍の蹉跌〜 … 岩田慎平 竹御所と石山尼 〜「家」をつないだ女性たち〜 … 小野 翠 三浦義村 〜八難六奇の謀略、不可思議の者〜 … 真鍋淳哉 大江広元と三善康信(善信) 〜京・鎌倉をむすぶ文士のつながり〜 … 佐藤雄基 宇都宮頼綱 〜京都で活動した東国武士〜 … 野口 実 コラム 鎌倉幕府と陰陽師 … 赤澤春彦 V顕密仏教と禅律僧 慈 円 〜法壇の猛将〜 … 菊地大樹 聖 覚 〜エリート学僧の挫折〜 … 平 雅行 定 豪 〜鎌倉幕府の政僧〜 … 海老名尚 円 爾 〜公武の帰依と南宋文化〜 … 原田正俊 叡 尊 〜宗教的「平和」運動と鎌倉下向〜 … 細川涼一 コラム 東大寺宗性――学僧多忙 … 横内裕人 |
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ISBN978-4-7924-0996-8 C3321 (2014.7) A5判 上製本 392頁 本体4,500円 | |||||
新鮮で魅力的な時代像を期待 | |||||
京都大学名誉教授 上横手雅敬 |
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清文堂出版では、刊行中の『古代の人物』全六巻に次いで、『中世の人物 京・鎌倉の時代編』全三巻の刊行を始めるという。保元の乱前後から鎌倉中期ごろまでを対象としている。「第一巻 保元・平治の乱と平氏の栄華」、「第二巻 治承〜文治の内乱と鎌倉幕府の成立」、「第三巻 公武権力の変容と仏教界」から成り、政治史が中心であるが、仏教史にも配慮が加えられている。編者は元木泰雄・野口実・平雅行氏であり、広い識見と展望を持ち、現在の中世史学界をリードしている人々である。 七〇ほどのテーマが立てられ、数十名で分担して執筆している。これらの執筆者は、比較的若いが、現在もっとも精力的に研究を進め、次々に成果を生み出している。従って日本中世史に関する最新の見解が、平易な語り口で読者に伝えられると思う。 平安後期から鎌倉中期まで、一〇〇年ほどの期間に七〇近いテーマとなれば、かなり詳密な内容となり、中世史を縦横に隈なくカバーすることができ、歴史好きな人々の満足も得られよう。平清盛、後白河院ら時代の中心的な役割を果たした人物を通じて、歴史の大きな流れがつかめるだろう。一方、藤原忠実、覚仁、阿多忠景、藤原経宗、池禅尼らには、多くの読者は初めて接することになるが、彼らを通じて大まかな叙述では捉えきれないが、しかも重要な問題に触れることができる。 歴史研究者ではなく、一般読者を対象としたシリーズではあるが、新進気鋭の人々の大胆な新説の開陳が期待されるだけに、専門史家も心を躍らせて読むのではなかろうか。高度の研究内容を平易に一般読者に披露することは重要であり、そのためには執筆者も編集者も、業界用語や業界的発想にとらわれないことが大切である。執筆者たちの協力によって、この時代について、新鮮で魅力的な全体像が描かれることを期待する。 |
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人の組み合わせの妙 | |||||
立正大学文学部教授 村井章介 |
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人物に即して歴史を描くという手法は、読者にとって過去に寄り添いやすいせいか、幾度も試みられてきた。そんななかで、今回の『中世の人物 京・鎌倉の時代編』全三巻には、ひと味ちがった工夫が見られる。 それぞれ斯界を代表する学者を編者とする三巻は、タイトルからもわかるとおり、一二世紀なかばからの約一世紀という比較的短い時期に絞りこまれ、しかも、各巻四〇〇ページを超えるボリュームに、二〇本ほどの本論と三本のコラムが配されている。その結果、時代相を論者たちがどのように切り取ったか、さまざまな角度から楽しむことができるようになっている。 たとえば、保元の乱について、鳥羽院と崇徳院、藤原忠実、同忠通、同頼長、源為義、阿多忠景と源為朝といった、多彩な人物の眼を通して、しかも各論者の独創的な見解に膝を打ちつつ、多面的に学ぶことができる。 テーマの立て方にも工夫がこらされている。個人に還元してそれぞれの人生を満遍なく叙述するのでなく、各人が歴史のなかで際だった役割を演じた時期に焦点を合わせ、しかもできる限り他者や人間集団との関係に即したかたちで(コラムでは人間集団そのものをテーマとする)、テーマが選ばれている。 たとえば、鎌倉幕府初期について見ると、源頼政と以仁王、源義経と範頼、和田義盛と梶原景時、北条時政と牧の方、大江広元と三善康信などといった組み合わせが挙げられており、個人単位の人物史とは異なるデュアルな歴史像が描き出されるであろう。 以上のような編集方針の成果として、従来の企画では取り上げられにくかった人物を掬いとることができた。信実、阿多忠景、藤原経宗、池禅尼、二位尼、源範頼、大庭景親、城助長、同助職、藤原秀康、九条頼嗣、三好康信、宇都宮頼綱、聖覚、定豪といった顔ぶれである。女性と僧侶を積極的に取り上げようという方針も窺える。 もちろん、後白河院、平清盛、源頼朝、後鳥羽院といった大物には、しかるべき論者と紙数が用意されている。 創見にみちた本シリーズが広く読まれ、続編の企画へとつながることを期待したい。 |
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一人一人の物語が浮かび上がる | |||||
青山学院大学文学部教授 佐伯真一 |
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歴史や古典文学の楽しさの原点は、その時代を生きていた一人一人の人物について考えるところにある。もちろん歴史学は、個人を越えたところで歴史を動かす大きな力について考えるのだろうし、文学研究は、実際の歴史事実とは異なる虚構の世界を考えるのではあるけれど、学問を志したきっかけは、英雄的な武将にあこがれたり、不思議な女性について調べたり、といったことだったという研究者も多いだろう。そして、あれこれ考えた末に、結局はある人物の人生をたどってみるという研究に至ることも少なくない。いわゆる源平合戦期の前後、平安末期から鎌倉時代が、そうした楽しさをかきたてる物語性に富んだ人々の宝庫であることはいうまでもないだろう。一人一人の人生をたどれば、そこには、一人一人を主人公とした物語がある。 歴史ドラマは、えてして現代のホームドラマや企業ドラマに翻案したお話になってしまいがちだが、ここでいう物語は少し違う。中世に生きた人々は、私たちとは習慣も考え方も感じ方も全く違っている。そんな人々が、宮廷で、戦場で、あるいは寺院の中で、他の人々とどんな人間模様を織りなしながら生きたのか。私たちは、自分たちの世界に彼らを呼んで来ようとするのではなく、彼らの世界に飛び込んでゆかねばならない。その世界では、今まで全く知らなかった奇怪な人物を見つけたり、知っているつもりだった人が実は全く違った風貌を持っていることに気づいたり、といった新鮮な驚きの数々が私たちを待っているはずである。 このシリーズは、この時代を生きた一人一人に即して、その人生を明らかにする。執筆陣には、現在の歴史学の最前線にいる方々が総動員で、また適材適所で配置されていて、実に壮観である。歴史学は日進月歩、一昔前の常識はすっかり通用しなくなっているが、そうした最新の成果を盛り込みながら、わかりやすい解説が展開されている。読めば読むほど、この時代を支えた個性的な人々の顔が新たに見えてきて、わくわくさせられる。そして、「この人の眼には、世界はこんな風に映っていたのか」という想像が次から次へと働いて、歴史の全体像が立体的に立ち上がってくるのである。是非、多くの読者が手にとって、魅力的な人物の物語を一つ一つ浮かび上がらせながら、この時代をたどる興奮を味わっていただきたい。 |
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※所属・肩書き等は、本書刊行時のものです。 |