文化遺産と都市文化政策
大阪市立大学文学研究科叢書第6巻
大阪市立大学都市文化研究センター編


歴史的文化遺産の保存と活用 魅力ある都市の創造に向けての提言


■本書の構成

大阪における歴史遺産と都市計画*栄原永遠男
(大阪市立大学大学院教授)
「群衆文化」と現代中国人の公共文化生活*陳 映芳
(中国・華東師範大学教授)/中岡深雪訳
植民都市遺産とアジア都市の伝統*布野修司
(滋賀県立大学教授)
伝統都市と社会=文化構造*吉田伸之
(東京大学大学院教授)
創造都市の連携と発展に向けて*佐々木雅幸
(大阪市立大学大学院教授)
GLOBALBASEを応用したデータベース*森 洋久
(国際日本文化研究センター准教授)
文化遺産と都市政策:ラッタナコーシン島の再生*バナソピット・メクウィチャイ
(バンコク都副知事) チャールズ・B・メール/諏訪晃一訳
災害余波のなかでのアート:アートがどのようにコミュニティを復興させているのか*スプラプト・スジョノ
(インドネシア芸術大学学長)/岡戸香里訳


ISBN978-4-7924-0676-9 C3020 (2009.12) A5 判 上製本 262頁 本体5,800円

刊行にあたって

 COEプログラムの最終年度である2006年には、5ヵ年間の研究・教育成果の総仕上げとして、「COEウィークス」と銘打って、国際シンポジウムをはじめ、インターナショナルスクール、アートフェスティバルや一般市民のための講座を含む、一連の催しを行った。本書は、中心的行事であった国際シンポジウム全体会「文化遺産と都市文化政策」報告者の発表原稿に基づく論文と、分科会における報告に基づく関連論文2篇を収録したものである。

 各論文の著者のいずれもが、東南アジア・東アジアという西欧とは異なった文化的伝統のコンテクストや文化遺産の活用を念頭において議論を展開している点に、大きな特色と意義が認められよう。文化遺産の活用には、当該遺産を取り巻く人々が、遺産の意義と重要性を十分に理解して、新たな文化実践の源泉にすることが不可欠であること、またアジアとは均質的なまとまりではなく、社会、宗教、慣習など多種多様な文化的伝統や歴史が存在するゆえ、グローバルな都市文化の席巻する中で、文化の異質性と混淆性を意識し、差異を真摯に認め、国際的な相互理解の中で、新たな(アジア的)都市文化の創造が希求されるべきこと、などが明らかになってきた。

 わが国ではこれまで文化遺産というと、保存すべき建物、遺物、伝統行事など、静的なモノのみが思い浮かべられることが多かったが、最近の都市ツーリズムでは、文化資源の継承と創造とか、もっと動的な訪問者と地元民の交流とかの意義が、クローズアップされている。パック旅行に代表される典型的なマスツーリズムが、文化遺産のツーリズムを推進した時代を通過して、別な選択肢を考慮する時代に入ったというべきである。本書が、都市文化成熟の一つの礎となることを期待している。
編集委員を代表して
                        山野正彦 


大阪市立大学文学研究科叢書
第1巻 橋爪紳也責任編集・アジア都市文化学の可能性

第2巻 都市の異文化交流

第3巻 井上徹 塚田孝編・東アジア近世都市における社会的結合


第4巻 近代大阪と都市文化

第5巻 都市文化理論の構築に向けて

第7巻 都市の歴史的形成と文化創造力

第8巻 塚田 孝・佐賀 朝・八木 滋編 近世身分社会の比較史


第9巻 井上 徹・仁木 宏・松浦恆雄編 東アジアの都市構造と集団性

※所属・肩書き等は、本書刊行時のものです。