近世身分社会の比較史
法と社会の視点から
塚田 孝・佐賀 朝・八木 滋・大阪市立大学都市文化研究センター 編
大阪市立大学文学研究科叢書第8巻


多様な社会集団を「法と社会」「身分的周縁」「比較類型史」の視点から解明する。



■本書の構成

刊行にあたって……塚田 孝

  第1部 商人と職人、生産と流通
 
萩城下における御手職人と町職人……森下 徹
  
はじめに  一 御木屋の職人編成  二 城下町での居住地  三 職人編成の確立過程  おわりに

一九世紀前半の椎茸生産と流通 
〈徳島藩領那賀川上流域を事例として〉 ……町田 哲
  
はじめに  一 椎茸作の展開と取締  二 椎茸流通をめぐる諸相  むすびにかえて

池田下村における水車絞油株の所有と経営……島ア未央
  
はじめに  一 予備的考察――門林一統と水車絞油株  二 絞油株免許をめぐる泉州在方の動向と一橋領知支配  三 一橋領知水車絞油株の所有と経営  四 門林一統と水車株  おわりに

シード論文・文化期大坂における和製砂糖の流通統制……北野智也
  
はじめに  一 和製砂糖の流通統制のはじまり  二 文化六年の流通統制  三 文化六年の流通統制とその実態  おわりに

シード論文・清末江西省経済と地域間関係について……辻 高広
  
はじめに  一 江西の交通路と人口分布  二 江西における作物生産、流通状況  三 江西省における商人の活動  四 市鎮の増加  おわりに

  第2部 大坂の周縁、開発と地域

一七世紀大坂道頓堀の開発と芝居地……八木 滋
  
はじめに  一 明暦までの芝居地の動向  二 明暦以降の道頓堀と芝居地  おわりに

近世大坂の堀江地域の特質と名田屋清兵衛……屋久健二
  
はじめに  一 堀江地域と惣年寄  二 北堀江五丁目と名田屋清兵衛  おわりに

一七世紀後期・大坂における非人の〈家〉……塚田 孝
  
はじめに  一 天王寺垣外仲間の形成と転びキリシタン――前提  二 宗旨人別帳と類族改め  三 天王寺垣外の転びキリシタンの家系  四 宗旨人別帳の記載とその内容  おわりに

シード論文・天保改革における大坂の売女統制策の検討……吉元加奈美
  
はじめに  一 天保一三年八月一七日段階の施策  二 正月案の検討  三 江戸町奉行による勘案  四 七月案と天保一四年一〇月四日の町触  おわりに

  第3部 貧困と救済の比較史

中世末のイタリアにおける貧困への対処……マリア・ジュゼッピーナ・ムッザレッリ
/大黒俊二・中谷 惣 訳
  
訳者解説……大黒俊二/フランス近世史からのコメント・近世パリの貧困と救済……高澤紀恵

都市大坂における商家奉公人の貧困と救済 
〈住友家の事例から〉 ……海原 亮
  
はじめに  一 追福を名目とした施行の事例  二 天保四年の米価高騰と施銭  三 奉公人の貧困と救済  おわりに

近世和泉の村落社会における「困窮人」救済 
〈泉郡池上村を中心に〉 ……齊藤紘子
  
はじめに  一 池上村「本郷」における救済の諸類型  二 天明期の凶作と「飢人」救済  三 村における「困窮人」の生活維持――天明・寛政期の飢人帳をめぐって  おわりに

明治初期大阪における貧民の救済と統制……ジョン・ポーター
  
はじめに  一 維新期大阪における乞食統制と垣外仲間の解体過程  二 明治初期大阪救貧体制の展開過程  おわりに

身分社会と仁政 
〈幕末大野藩の備荒貯蓄〉 ……マーレン・エーラス
  
はじめに  一 御救助方・御救助蔵の創設過程  二 御救助方・御救助蔵の運営  おわりに

  第4部 比較・方法・研究史

近世日本都市社会の再発見 
〈吉田伸之・塚田孝の歴史学を中心に〉 ……ダニエル・ボツマン
  
はじめに  一 吉田氏の研究展開  二 塚田氏の研究展開  三 英語圏の研究との関連で

比較都市史のための覚え書き……井上 徹
  
一 海域世界  二 都市の三分法  三 中国都市との若干の比較

近世〜近代大阪の貧困と救済に関する覚え書き……佐賀 朝
  
はじめに  一 移行期大阪の都市下層社会――ポーター論文が投げかける問題  二 村と救済――齊藤論文について  三 比較史の問題――ムッザレッリ講演をうけて  四 二〇世紀の貧困と救済――展望  おわりに

今後の近世大坂研究の課題を考える……八木 滋


ISBN978-4-7924-1013-1 C3021 (2014.3) A5 判 上製本 446頁 本体9,800円
刊行にあたって
 本書は、近世大坂研究会の共同研究の成果を取りまとめたものである。科学研究費による研究プロジェクト「近世大坂の「法と社会」―身分的周縁の比較類型論にむけて―」の一環として開催した国際円座と総括円座の報告に基づいて成稿した論考、および関連するテーマで新たに執筆を依頼した論考を加えて再編成して編集した。
 科研の研究計画書に記した研究目的は、総括的に以下のように記している。

 日本列島社会の近世は巨大都市の展開によって特質づけられるが、それは一方で都市の社会的周縁に多様な社会諸集団を展開させることをも意味した。本研究は、〈法と社会〉という分析視角から、近世大坂を主な対象として、こうした周縁的な社会諸集団の存立構造〈身分的周縁〉を解明することを第一の目的とする。これを通して近世都市の身分的周縁を把握する分析方法を開発し、日本国内はもちろん、大規模な都市を発展させたアジア・ヨーロッパの近世身分社会の〈比較類型史〉へとつなげていくことをもう一つの目的とする。

 ここから、本研究のキーワードが〈法と社会〉〈身分的周縁〉〈比較類型史〉の三つであることを容易に理解していただけるかと思う。このうち本書では〈法と社会〉の視角を全体に貫くことを意図した。〈法と社会〉という場合、二つの側面がある。一つは、法史料そのものの[法の形式]と[法の内容]の両面から社会の実態を解明していくという側面である。もう一つは、法的枠組みと社会的実態の関連(ズレと照応の両面を含む)を解明するという側面である。これら二つの側面は、深く関連しあっているが、いずれも社会の実態を明らかにしていく方向に収斂していくものである。

 本書は四部構成とした。第一部「商人と職人、生産と流通」・第二部「大坂の周縁、開発と地域」は、大坂をはじめとする都市に展開する多様な社会集団の実態に迫ろうとした総括円座「近世身分社会の比較史―法と社会の視点から―」を軸に再編集している。第三部「貧困と救済の比較史」は、貧困と救済という視点から都市社会の比較史を試みた国際円座「都市における貧困と救済」を基に再編集した。さらに、それらを研究動向や比較史のなかで位置づけた第四部「比較・方法・研究史」をおいた。
 なお、編集にあたっては、本科研プロジェクトの共同研究(史料の調査・分析)に参加した若手の問題発見的なシード論考をできるだけ収録する方針を採った。
 本書は、大阪市立大学の文学研究科叢書の一冊(二〇一三年度)として刊行いていただくこととなった。これまで、文学研究科叢書として多彩な研究成果が公表されてきたが、本書がそれらに恥じない内容であることを願っている。
                        (編者) 


 本書の関連書籍
 塚田 孝編 近世大坂の法と社会

 塚田 孝編 身分的周縁の比較史

 塚田 孝著 都市社会史の視点と構想



大阪市立大学文学研究科叢書
第1巻 橋爪紳也責任編集・アジア都市文化学の可能性

第2巻 都市の異文化交流

第3巻 井上徹 塚田孝編・東アジア近世都市における社会的結合


第4巻 近代大阪と都市文化

第5巻 都市文化理論の構築に向けて

第6巻 文化遺産と都市文化政策

第7巻 都市の歴史的形成と文化創造力

第9巻 井上 徹・仁木 宏・松浦恆雄編 東アジアの都市構造と集団性

※所属・肩書き等は、本書刊行時のものです。