■近世大坂の法と社会 | |||||
塚田 孝編 | |||||
近世巨大都市の実態に迫る新たな方法と視点 本書の構成 近世大坂の法と社会 塚田 孝 第1部 法の形式と伝達 近世前期京都の都市法と都市社会――町触正文の分析を中心に 杉森哲也 町触とは何か――大坂町触を素材として 野高宏之 延享期の大坂町奉行所改革 安竹貴彦 大坂町奉行所における明和期の仕法改正について 熊谷光子 尼崎藩における大坂町触通達 岩城卓二 萩藩に伝わる大坂町触 森下 徹 明清時代における法の伝達 井上 徹 ビザンツ帝国における法と社会 井上浩一 第2部 法の内容と社会構造 都市大坂の医療文化と町触規制 海原 亮 近世大坂におけるべか車の展開と上荷茶船 羽田真也 近世初期三津寺町における借屋の展開 安部圭助 陣屋元村と伯太陣屋 齊藤紘子 十七世紀の大坂 古金買・古手買 齊藤紘子 家屋敷売買と慶安元年町触 松本和明 慶安触以降の家屋敷売買の手続きについて 八木 滋 牢人統制について 河野未央 博 奕 松田暁子 火 事 中西威晴 江戸町触と「承知」システム 吉田伸之 編者の関連書籍 塚田 孝著 都市社会史の視点と構想 井上徹 塚田孝編・東アジア近世都市における社会的結合 塚田 孝編・身分的周縁の比較史 塚田 孝・佐賀 朝・八木 滋編 近世身分社会の比較史 塚田 孝・佐賀 朝・渡辺健哉・上野雅由樹編 周縁的社会集団と近代 本書の関連書籍 熊谷光子著 畿内・近国の旗本知行と在地代官 齊藤紘子著 畿内譜代藩の陣屋と藩領社会 |
|||||
ISBN978-4-7924-0624-0 C3021 (2007.9) A5 判 上製本 472頁 本体9600円 | |||||
近世巨大都市の実態に迫る新たな方法と視点 | |||||
塚田 孝 |
|||||
本書は、昨年四月に行なわれたシンポジウムの成果をもとに、さらに何本かの論文とコラムをあわせて編集したものである。このシンポジウムは、かねてより継続してきた大坂町触を読む会の共同研究を基礎にしている。 この大坂町触を読む会は、筆者と岩城卓二氏が発起して、17世紀の大坂町触を豊富に収載した「大坂御仕置御書出之写」全七冊(杉山家文書、京都大学総合博物館所蔵)を読み進めることを目的に始めたものである。この会の活動をベースとして、広く近世大坂研究会を組織し、大坂町触を読む会とセットで進めてきた。 近世大坂研究会では、法という事象を通じて社会のあり方に接近する、つまり法と社会を切りはなさない形で問題を考えていく姿勢を保持してきた。法という事象を通じてという場合、【法の形式】と【法の内容】の両側面を考慮する必要があろう。【法の形式】とは、その法が誰から誰に対して向けられた指示・命令なのか、誰と誰の間の取決めであるのか、それがいかなる経路でいかにして伝達されるかというようなことである。これには、社会的な関係や社会組織のあり方が色濃く反映されており、社会のあり方に迫る手がかかりを与えてくれると考えられる。 【法の内容】には複雑に展開している社会の実態、多様な仲間集団や社会生活のあり様などが反映しており、それ故、法史料は社会の実態に迫る可能性を豊かに秘めているのである。この二つの視角からの分析は相対的に区別して進めなければならないが、社会の実態に迫っていくことにおいて両者は同じ方向性を有しており、統一的に研究を進めることが必要である。 本書は、大坂町触を中心として、【法の形式】と【法の内容】の分析から都市社会の実態に迫ろうとする新たな方法と視点を提起することを目論んだものである。本書が、今後の〔法と社会という視角〕からの研究の進展につながれば幸いである。 |
|||||
※所属・肩書き等は、本書刊行時のものです。 |