■尾張藩社会の総合研究 《第四篇》 | |||||
岸野俊彦編 | |||||
豊かな社会と文化の交流を復元するシリーズ第四弾 ■本書の構成 序 章 「尾張藩社会」研究の成果と課題…名古屋芸術大学 岸野俊彦 《第三篇序章》 「尾張藩社会」研究からみた近世社会…名古屋芸術大学 岸野俊彦 第一部 幕藩社会と尾張藩社会 第一章 尾張家における「両敬」の形成と将軍権威…徳川林政史研究所 白根孝胤 第二章 江戸城西丸再建と尾張藩社会…東濃振興局 杉村啓治 第三章 尾張藩財政と尾張藩社会 安永五年から天保十四年までの財政と調達金を中心に…愛知県史調査委員 杉本精宏 第四章 尾張藩京都御用所の設立とその運営について…鈴鹿国際大学 山中雅子 第五章 天保二年千村仲泰の参府と信州伊那預所の巡村について…正眼短期大学 鈴木重喜 第二部 尾張藩社会の文化・宗教 第六章 名古屋商人内田蘭渚と京都書肆竹苞楼 富商的国学の文化世界…名古屋芸術大学 岸野俊彦 第七章 近世後期尾西国学者の蔵書にみる教養とネットワーク 尾張国中島郡上祖父江村小塚家の事例より…静岡大学 松尾由希子 第八章 熱田仏閣再興問題と如法院…愛知県史編さん室 清水禎子 第三部 尾張藩社会の都市と農山村 第九章 近世岐阜町の成立と岐阜奉行…岐阜市歴史博物館 筧 真理子 第十章 名古屋の宇治製挽茶販売をめぐる新興茶商人と宇治茶師 名古屋商人升屋半三郎と宇治茶師尾崎坊有庵の動向から…一宮市博物館 坪内淳仁 第十一章 張訴からみた尾張藩における地域支配…愛西市教育委員会 石田泰弘 第十二章 陸奥国伊達郡梁川村郷士堀江与五右衛門の尾張藩出入…名古屋芸術大学 松田憲治 第十三章 近世前期木曽檜物細工生産の展開と特質…名古屋市立向陽高等学校 林 淳一 編者の関連書籍 岸野俊彦著・尾張藩社会の文化・情報・学問 岸野俊彦編・尾張藩社会の総合研究 《第一篇》 岸野俊彦編・尾張藩社会の総合研究 《第二篇》 岸野俊彦編・尾張藩社会の総合研究 《第三篇》 岸野俊彦編・尾張藩社会の総合研究 《第五篇》 岸野俊彦編・尾張藩社会の総合研究 《第六篇》 岸野俊彦編・尾張藩社会の総合研究 《第七篇》 岸野俊彦編・尾張藩社会の総合研究 《第八篇》 岸野俊彦編・『膝栗毛』文芸と尾張藩社会 |
|||||
ISBN978-4-7924-0684-4 C3021 (2009.9) A5 判 上製本 434頁 本体9200円 | |||||
ますます鮮明になる尾張藩社会の世界 | |||||
専修大学史編集主幹 青木美智男 |
|||||
岸野俊彦さんが編集する『尾張藩社会の総合研究』も、今回で第四篇になった。第一篇が刊行されたのが、二〇〇一年だから、わずか八年で四冊目を刊行することとなる。しかも毎巻が四〇〇ページを越す内容の濃い研究書である。この驚異的なお仕事が、多くの研究者の注目の的になるのは当然で、次はどんな観点から尾張藩社会論が示されるのかと期待をもたれるようになった。そんな中で本書が刊行された。まさに待望の書である。 岸野さんたちは、なぜいま尾張藩社会の研究が重要な意味を持っているのかということを、実証を通して問い続けてきた。その観点は、第一篇から第三篇の「序説」に詳細に論じられている。第四篇でも新たな観点と尾張藩社会論的な立場から論証された実証的研究成果を紹介されているが、なによりもこの間、現在の日本近世史研究をリードする渡辺尚志さんや深谷克己さんたちが進めてきた地域論をベースにした藩政史研究の成果と比較して、尾張藩社会論がいかに積極性を持っているかを論じ、収録された個々の論文がその内実を豊かにしている点が、本書の大きな特色である。 とにかく第一篇から第四篇までに五七本の論文が収録されている。しかも尾張藩の政治・経済・社会・文化のあらゆる分野について、藩内だけでなく藩外とのかかわりを意識して論じられて、興味が尽きない。こんな藩政史研究はいままでにない。それはさまざまな分野に関心を持つ研究集団が、長年にわたって共通の関心で分析し討論しあってはじめて生まれるもので、その持続性もあまり例がない。第四篇のそれぞれの論文がすごく説得力を持って迫ってくるのは当然である。その点で藩政史研究に関心を持つ方はもとより、思想や文化に関心を持つ方々にもお薦めしたい論集である。 これまでこうした論集の成果は、得てして編集者が集約して世に出すのが普通である。それに対してこの共同研究の場合は、この間、グループの一員である吉田俊英さんが『尾張の絵画史研究』(清文堂出版)を刊行し、杉本精宏さんが『尾張藩社会と木曽川』(同)を刊行したように、魅力ある研究者が成果をまとめあげ、尾張藩社会論を深化させている点がすばらしい。共同研究と個人の関係はいかにあるべきか、これからのモデルのようなお仕事である。次にどんな研究成果が結実するのか。こんな期待がふくらむ共同研究でもある。その点からも一読を期待する次第である。 |
|||||
※所属・肩書き等は、本書刊行時のものです。 |